天体分光学
天体を対象にした分光学を天体分光学という。分光学では物体が発する光(電磁波)を波長または周波数成分に分解して測定することにより、対象の成分や温度、密度などを調べることをいう。
夜空の星をよく見ると赤い星、青い星、白く見える星など色々な星があることがわかる。この色の違いは主に表面温度によるものであるが、分光して光の成分を調べると、天体の成分や天体の動きなど様々なことがわかる。
その分光の方法としてスペクトル線を調べる方法が使われる。星の光を分光器でスペクトル線にして分析。光の放射領域に存在する原子や分子がわかる。1814年にフラウンフォーファー(J. von Fraunhofer)が太陽光に暗線(吸収スペクトル)を見つけたことにより、恒星大気の構造・組成の研究や、大気吸収線の波長変動の精密測定による太陽系外惑星の探査などが行われている。(写真はおとめ座の系外惑星GJ 504 b の想像図)

今回米ノースウェスタン大学の研究者らは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の分光器を使ってある系外惑星のスペクトル取得を試み、これに成功した。
ある系外惑星とは、おとめ座の方向に57光年離れた位置で、太陽に似た恒星GJ 504の周りを公転している。「ピンクの惑星」として知られるガス惑星GJ 504 bを覆う雲が、塩分を多く含む大気によって形作られていることを発見した。
約57光年離れた「ピンクの惑星」に塩辛い雲
2013年に日本の研究チームが発見したGJ 504 bは、地球からおとめ座の方向に57光年離れた位置で、太陽に似た恒星GJ 504の周りを公転している。ただ、天文学者らはGJ 504 bを発見して以来ずっと、それが本当に惑星なのかどうか確信を持てずにいた。このピンクプラネットは、その質量的に巨大ガス惑星と褐色矮星の中間にあり、いずれの形態にもなることが考えられたからだ。
GJ 504 bが惑星か否かを調べるために、これまで何度も地上の望遠鏡から観測が試みられてきた。しかし、GJ 504 bの表面温度が華氏550度(約288度)と、だいたいパン焼き窯ぐらいの温度しかないため、低温すぎて(暗すぎて)十分な情報を得ることはできていなかった。
そこで、今回の研究を行ったチームはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を使ってスペクトル取得を試み、これに成功した。ノースウェスタン大学の博士研究員アニーシュ・バブラージ氏は、取得した「データをさらに深く掘り下げていくうちに、これまで分析してきたものとは全く異なることに気づいた」と述べている。
研究チームは取得したデータに対し主星であるGJ 504の反射光を除去する特殊な処理を行ったところ、GJ 504 bの大気の化学組成までを特定できたという。ただ、このデータセットを従来の天体物理モデルに当てはめたところ、数値は完全には一致しなかった。
大気がある惑星を予想するとピッタリ一致
その理由は、GJ 504 bには雲がないと考えられていたせいだった。そして、もしこのピンクがかった惑星が雲に覆われていたら?という仮説を立て、雲を考慮に入れてシミュレーションをしたところ、その結果が冷たい惑星(cold planets)に関する既知の事実と見事に一致したと説明した。
また、いくつかの雲の種類に応じた数値パラメーターを加えて試したところ、それが塩雲であると想定した場合に、物理的に妥当な結果が得られるようになったと述べた。研究チームは、さらにスペクトル分析を行い、GJ 504 bに重元素が非常に多く含まれる可能性を発見し「褐色矮星的な性質」がある可能性も依然として残っていると論文で述べている。
ただ、この天体の形成過程にはまだ不明な点が残されており、現在のデータでは惑星として形成された可能性と、小型の恒星として発達した可能性の両方があるとされている。
バブラージ氏は、今回の研究で用いた手法が、低温で暗すぎる惑星に関する謎を解明するのに役立つ可能性があると述べている。例えば、木星にはアンモニア氷でできた雲が存在するが、こうした類いの雲は現在の観測手法では捉えきることができない。ところが、今回の手法ならそれが可能になるかもしれないとバブラージ氏は述べた。そして、GJ 504 bは「モデルに雲を考慮に入れることの重要性を改めて認識させてくれる良い例だ」と付け加えた。

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