小惑星探査機「はやぶさ2」

「はやぶさ2」は、JAXAが2014年に打ち上げた小惑星探査機。C型小惑星「リュウグウ」で地下物質を含むサンプルの採取に成功し、2020年に地球へ帰還した。現在は新たな小惑星を目指す拡張ミッション(次の目標は2031年到着予定)を航行中である。

 小惑星リュウグウの探査 (2018年〜2019年)では、リュウグウに到着後、表面だけでなく衝突装置を用いて人工クレーターを生成し、地下の砂や石の採取(タッチダウン)に成功した。

 2020年12月には、採取した試料が入ったカプセルをオーストラリアの砂漠に着陸させることに成功した。持ち帰られたカプセルからは、水やアミノ酸を含む有機物が発見され、生命の起源の解明につながる重要な成果を挙げている。
(写真は小惑星「トリフネ」をフライバイする「はやぶさ2」想像図)

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 現在は拡張ミッションが進行中である。カプセル分離後の探査機本体は、新たな小惑星である小惑星「トリフネ」のフライバイ(接近観測)などを行いながら、2031年に到着予定の1998 KY26という小惑星に向けた長い宇宙の旅を続けている。

 小惑星「トリフネ」に接近

 6年前、小惑星「リュウグウ」のサンプルを地球に届けたあと、次の目的地への飛行を続けている日本の探査機「はやぶさ2」について、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、7月5日に別の小惑星のすぐそばを極めて速いスピードで通過する「フライバイ」を行う計画を発表した。

 探査機「はやぶさ2」は、小惑星「リュウグウ」で採取した砂などのサンプルを2020年に地球に届けたあと、2031年に到着予定の最終目的地の小惑星に向けて宇宙空間でいまも飛行を続けている。

 JAXAは7月5日、目的地へ向かう途中にある別の小惑星に探査機を接近させて観測しながら通り過ぎる「フライバイ」を行う計画で、24日、会見を開いて詳細を説明した。

 それによると、探査機は「トリフネ」と名付けられた小惑星の中心からおよそ800メートルの距離まで近づき、カメラで画像を撮りながら、相対速度で秒速5キロのスピードで通過するという。

「トリフネ」ははやぶさ2が着陸した「リュウグウ」とは別のタイプの小惑星で、直径数百メートルほどの大きさとみられ、JAXAは画像のほかにもさまざまな科学データを取得し、新たな知見を得たいとしている。

 JAXAの三桝裕也チーム長は「いよいよ小惑星が見えて本当にフライバイが近づいていると感じている。皆さんにもすてきな小惑星の姿を見せられたらと考えている」と話した。

 運用中小惑星探査機「はやぶさ2」

「はやぶさ」後継機として小惑星サンプルリターンを行う小惑星探査機。「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワ(S型)とは別の種類の小惑星(C型)を探査することで、惑星の起源だけでなく地球の水の起源や生命の原材料をも探求する。さらにミッションを延長して、新たに2つの小惑星の探査を目指す。

「はやぶさ2」は、基本的には「はやぶさ」の探査機や探査の手法を踏襲しましたが、より確実にミッションを行えるよう、信頼性を高める様々な改良が加えられました。また、小惑星表面に人工的なクレーターを作り、地下のサンプルを持ち帰るといった、新しい技術にも挑戦しました。

 2014年12月3日に打ち上げられた「はやぶさ2」は、目標天体であるC型小惑星リュウグウ から表面物質(サンプル)を地球に持ち帰ることに成功しました。サンプルは国内だけでなく世界中の研究者によって分析が進められ、元素や鉱物、そしてアミノ酸を含む多種類の有機物が確認されただけでなく、液体の水も発見されました。ただし、地球の水や生命とどのように関係するかは今後の研究課題です。

「はやぶさ2」は、2020年12月6日に地球にカプセルを届けた後、「拡張ミッション」として継続して運用されています。2026年7月5日には、小惑星トリフネの近くを通過して観測するフライバイ探査を行います。そして最終目的地の小惑星1998 KY26に2031年に到着(ランデブー)して、探査を行うことを目指しています。

 小惑星探査機「はやぶさ2」拡張ミッション

「はやぶさ2」は2020年12月に地球帰還後、カプセルを分離して、また新たな深宇宙の旅へと飛び立った。現在は、半分近く残ったイオンエンジンの燃料(キセノン)を活用し、拡張ミッションを開始している。次の目標は1998 KY26という小惑星で、到着は2031年。その間、2026年に小惑星トリフネ(2001 CC21)へのフライバイや、2027年、2028年には2回の地球スイングバイを予定している。

 この拡張ミッションの最終目標天体である1998 KY26は、直径数10mというとても小さな天体で、自転周期10分という非常に早い自転速度から、高速自転小惑星(Fast Rotator)と呼ばれます。「小さくて、回転が速い」という特性が、小惑星表面付近で非常に特殊な物理環境を生み出す。自転による遠心力が小惑星の重力に優っている。

 このような環境にターゲットマーカを落とした時、どのような振る舞いをするのか、既に科学的興味が尽きない。未だかつて人類が到達したことのない特徴の天体であり、リュウグウとの比較観測により、リュウグウで得られた科学的知見がより深められると期待されている。

 プラネタリーディフェンスへの貢献

 また、このようなサイズの小惑星は、宇宙空間に多数存在しており100~1000年に1度の頻度で地球に衝突し、大きな被害を与える可能性のある天体と考えられているが、地上からの観測では詳細なことまでは明らかになっていない。

「はやぶさ2」が探査し、その物理特性や近傍での運用方法を確立することによって、このような天体に対する知見を深め、地球衝突に対する対策を立てる上での有益な知識を獲得することができると考えている。

 さらに、2026年に予定している、小惑星トリフネ(2001 CC21)への近接フライバイでも、Planetary Defenseに資する技術実証を計画している。「はやぶさ2」に搭載されているカメラで意味のあるサイエンスデータを取得するため、衝突しないギリギリの距離まで小惑星に接近する必要があり、小惑星相対の高い軌道誘導精度が求められる。

 小惑星そのものの軌道に不確定性があるため、光学航法が不可欠であるにも関わらず、小惑星は地球や金星などの惑星に比べて暗いため、フライバイの数日前でなければ視えてこない。このように、相手が小惑星ならではの航法誘導の難しさがある中で、ギリギリの距離で小惑星を掠め飛んでいく運用は、探査機を小惑星に衝突させる軌道誘技術と同義であると考えられる。

 Planetary Defenseの中では、地球への衝突を回避させるため、探査機を小惑星に当てることで軌道を変更するような対策も検討されており、「はやぶさ2」の近接フライバイは、このような対策に直接的に貢献できる技術となっている。

 経験者が若手に技術承継

 以上のように、「はやぶさ2」の拡張ミッションでの活動は、Planetary Defenseにも大きく貢献することが期待される。ミッションの意義は非常に大きく、だからこそミッションを成功させるために求められる課題は多岐に渡る。

 例えば、2026年の小惑星のフライバイでどこまで小惑星に肉薄できるのか、2031年、ターゲットマーカが置けない小惑星の表面にどうやって近付くのか、そもそも10年間の運用計画をどうするのか、検討すべきことは山積み。

 上述のような非常に興味深い課題に、将来活躍が期待される若手技術者たちが、探査の経験者と共に取り組もうとしている。「はやぶさ2」の拡張ミッションは、経験者と若手が同じ問題に取り組みながら技術継承をしていくことができる貴重な環境にもなっており、探査ミッションに関わる人材を育成していく土壌としての重要な役割も担っている。