日本で「異種移植」

「異種移植」とは、生きている細胞、組織、または臓器を、ある種の個体から別の種の個体へ移植することである。特にブタの臓器をヒトに移植する手術が実際に行われている。

 その背景には、先進国において深刻な慢性的な臓器提供者(ドナー)不足が問題になっていることがあげられる。これを解消する画期的な切り札として、世界中で大きな期待を集めている。

 これまでは拒絶反応や感染症のリスクが厚い壁となっていたが、近年のゲノム編集技術の劇的な進歩により、医療現場への実用化が現実味を帯びている。(写真は移植用に遺伝子改変されたブタ)

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 これまでは2025年1月に米国などで行われたことが話題になっている。今回、ブタの腎臓を重い腎不全のヒトに移植する「異種移植」の実用化を目指した治験を、北海道大学病院などで再来年にも始めると明治大学発のベンチャー企業が発表した。

 これまで「異種移植」は免疫反応があるため、実用化は難しいだろうと言われてきた。ところが、ゲノム編集により、免疫反応を抑えられる、動物への遺伝子操作の技術革新がなされ、異種移植はより注目されつつある。異種移植の成功例もいくつか発表されている。

 遺伝子改変したブタの腎臓移植に成功

 2025年1月、66歳のティム・アンドリュースさんにとって、それは生死に関わる問題だった。アンドリュースさんは、末期の腎疾患のため、約2年にわたり透析を受けた。腎移植の待機リストに登録されていたが、アンドリュースさんの血液型が原因でドナー(臓器提供者)探しは困難を極めた。

 腎移植の平均待機期間は、大半の医療センターで3~5年だが、血液型がO型の人の場合は、移植までの待機期間が10年に及ぶこともあることが複数の研究で明らかになっている。

 アンドリュースさんが長期透析により、向こう5年間生きられる確率はわずか35%だ。医師たちは、アンドリュースさんが今後5年以内に腎移植を受けられる可能性は約9%と予測していた。

 そのため、マサチューセッツ総合病院の医師たちから、ブタの腎臓を使った実験的な移植を検討したらどうかと提案された時、アンドリュースさんに迷いはなかった。

 1月25日に行われたこの移植手術は、米食品医薬品局(FDA)の拡大アクセス制度を通じて実施された。この拡大アクセスは、死が切迫している病状の患者に、試験研究中の医療製品の使用を認める制度だ。

 アンドリュースさんは、3人の患者を対象に行われる研究の最初の患者となった。また、現在世界でブタの腎臓の移植手術を受けて生存している2人目の人物だ。

 そして2月7日、マサチューセッツ総合病院の医師たちは、アンドリュースさんへのブタの腎臓移植が成功したと発表した。ティム・アンドリュースさんは手術からわずか1週間で退院した。

 ブタの腎臓ヒトに「異種移植」 北大などで実施へ

 明治大学発のベンチャー企業やアメリカのバイオ企業などの研究グループは、拒絶反応が起こりにくいよう遺伝子操作したブタの腎臓を腎不全の患者に移植する「異種移植」の実用化に向けた研究を進めている。

 ベンチャー企業は安全性を確認するための治験を北海道大学病院と、神奈川県の徳洲会 湘南鎌倉総合病院の2か所で、重い腎不全の患者を対象に早ければ再来年にも始めると発表した。

 研究グループに参加するアメリカのバイオ企業は、先行してアメリカで試験的に移植を行っていて、透析が必要ない状態を半年以上維持している患者もいる。

 手術を執刀する予定の北海道大学の堀田記世彦 准教授は「国内では腎臓移植を受けるまで15年ほど待つ必要があり、将来的に課題の解決につながる治療になればと思う。今回の治験は安全性を確認するのが目的で、慎重に準備したい」と話した。

 異種移植をめぐっては、国内ではほかに東京慈恵会医科大学などのグループが腎臓に障害のある胎児にブタの腎臓を移植する研究の計画を明らかにしている。



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