「一生に一度」の天文現象

 「一生に一度」の天文現象というと、どんなものがあるだろうか。

 1986年に地球へ接近したハレー彗星を思い出す。ハレー彗星は、約76年の周期で太陽の周りを公転する最も有名な周期彗星。次は2061年7月28日頃に太陽へ最も近づくと予測されている。

 また、日本では珍しい日食があった。2009年の奄美大島などでの皆既日食や、2012年の金環日食は関東でも見ることができた。次は4年後、北海道で見られる2030年6月1日の金環食、9年後、関東北部で見られる2035年9月2日の皆既日食がある。

 そして現在、およそ80年ぶりに見られる天体現象が期待されている。「一生に一度」の天体現象を、今年こそ拝めるか…世界中の天文学者が今、心待ちにしている。

 それが「かんむり座T」の超新星爆発だ。ハレー彗星や日食とは違って正確な日時は特定できない。(写真は「かんむり座T」の場所を示している)

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「かんむり座T」は新星で、ふだんは10等級の明るさしかない。ところが増光すると2等級まで明るさが増す。これは北極星の明るさだから十分肉眼で観察できる。ただ、この明るさは2・3日しかもたないので、見逃したら次は80年後ということになる。

 昨年から増光が期待されていた。規則的な天文現象が多い中で、それがいつかがわからないというのも面白い。もし爆発すれば、「かんむり」の宝石として輝いて見えるだろう。

 反復新星「かんむり座T」は「かんむりの宝石」

 かんむり座Tは、その名の通りかんむり座に位置する星で、繰り返し爆発するので、反復新星や再帰新星、回帰新星などと呼ばれる。普段の明るさは、およそ10等級だが、増光現象が起こると、およそ2等まで明るくなり、肉眼でも見える状況となることが予想される。

 かんむり座Tの増光は、これまで少なくとも2回観測されていて、1度目が1866年5月、2度目が1946年2月。およそ80年の間隔(周期)で増光していることから、2024年から2026年頃に増光現象が起こることが期待されている。2025年5月までには、この増光現象はまだ起こっていない。

 新星は、星(恒星)が突然明るくなり、その後はゆっくりと暗くなっていく現象。増光する幅が7等以上、場合によっては15等以上にもなることから、今まで見えない明るさだった星が、あたかも新しく現れたかのように明るく輝いて見える。このため「新星」と呼ばれる(新しく星が誕生したわけではない)。

 ふつう新星は数日増光して、しだいに暗くなるものであるが、「かんむり座T」は繰り返して増光する。その理由は近い距離で回り合う連星の一方が白色矮星(わいせい)であり、白色矮星ではない星からのガスが白色矮星の表面に降りつもり、核爆発が起こることによって生じると考えられている(新星爆発)。繰り返し起こる現象だが、それでもふつうは、1000年から数百万年程度での間隔で起こると考えられている。

 一方で、数十年の短い間隔で繰り返し起こすものもあり、増光が2回以上観測されたものを反復新星と呼んでいる。天の川銀河内では、これまでに10例ほどが知られているが、最も明るくなったときに肉眼で見えるものは、かんむり座Tと、へびつかい座RSの2つだけ。大変珍しい現象だといえる。

 新星は変光星の一種

 変光星とは、地球から見た明るさ(等級)が変化する星の総称。これまでに3万個以上が発見されており、星自身の状態変化や、他の星との相互作用など、いくつかの原因によって明るさが変わる。

 変光星の主な種類変光星は大きく「物理変光星」と「食変光星」の2つに分かれ、さらに以下のように細かく分類される。

 脈動変光星(物理変光星):星自身が膨張と収縮を繰り返すことで明るさが変化する。年老いた星に多く、代表例としてくじら座のミラ(ミラ型変光星)が有名。

 食変光星:2つの星がペア(連星)になってお互いの周りを回っており、地球から見たときに一方がもう一方の星を隠す(食を起こす)ことで、周期的に暗くなる現象。ペルセウス座のアルゴルなどが代表。

 爆発型・激変星:星の表面や内部で爆発的な現象が起き、突発的に明るくなる変光星。新星や超新星がこれにあたる。「かんむり座T」はこれである。

 回転変光星:星の表面に黒点のような模様があり、星自身が自転することで明るさが変わって見えるタイプ。

 かんむり座T星の見つけ方

 かんむり座T星を戴くかんむり座は、北半球の春から夏にかけて、うしかい座とヘルクレス座の間に見える。

 まず北斗七星を見つけ、「ひしゃくの柄」のカーブをそのまま伸ばしていくと、うしかい座の1等星アルクトゥルス(アークトゥルス)に出会う。次に「夏の大三角」の一角、こと座の1等星ベガを探そう。この2つの明るい星の中間、ややアルクトゥルス寄りに、7つの星が半円形の弧を描く星座がある。これがかんむり座だ。

 かんむり座T星は今年、新星爆発を起こすのだろうか。そうなることを願おう。また、それが春から夏を経て初秋までの間に起こると期待したい。そうすれば、かんむり座が夜空に見えているうちに、新星の輝きをこの目で確かめることができる。



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