SNSが子どもの健康を害する
SNSの使用で心の健康を害したとしてユーザーの女性が大手の米メタとYouTube(ユーチューブ)を訴えた裁判の公判が始まった。9日の冒頭陳述で原告側は、中毒性の高い機能が女性の心の健康を傷つけたと主張した。
SNSを相手取って起こされている1500件あまりの訴訟の中で、公判が始まったのは今回が初めてで、今後の訴訟の先例として影響を及ぼす可能性がある。
原告のケイリーさん(20)と母親は、メタやユーチューブが意図的に中毒性の高いプラットフォームを作り出し、そのためにケイリーさんが不安症や自分を醜いと思い込む「醜形恐怖症」を発症して自殺願望を抱くようになったと主張している。

これに対してメタとユーチューブ側は、ケイリーさんの心の問題の原因はSNSではなく、家庭環境にあると反論する意向だ。
ケイリーさん側のマーク・レニア弁護士は9日、ロサンゼルスの州裁判所で陪審を前に、ユーチューブやインスタグラムのようなSNSアプリを「デジタルカジノ」と呼び、そうしたアプリの「無限スクロール機能」が中毒症状を引き起こすドーパミンを分泌させると訴えた。
「本件は、子どもたちの脳内の中毒を設計した超金持ち企業2社が相手だ」。レニア弁護士は冒頭陳述でそう力説した。「ケイリーのような子どもにとって、スワイプはスロットマシンのハンドルに等しい。だが彼女のスワイプは金目的ではなく、精神的な刺激が目的だった」
専門家らはこの裁判を、SNS側の結果責任を問う重要な機会と位置付ける。メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)やインスタグラムのアダム・モッセーリCEO、ユーチューブのニール・モーハンCEOもいずれ証言に立つ見通し。
もしもSNS側が敗訴した場合、数十億ドルの損害賠償を命じられ、プラットフォームの変更を強いられる可能性もある。
スナップとティックトックは和解
ケイリーさんはスナップとティックトックも提訴していたが、この2社は公判前に和解に応じた。ただ、両社とも別の裁判では依然として被告となっている。
巨大テック企業は以前から、自分たちのプラットフォームが子どもに害を及ぼしているという見方を否定。ペアレンタルコントロールや「休憩」を促す機能、コンテンツ制限といった安全対策を導入してきた。
9日にはメタのポール・シュミット弁護士も冒頭陳述を行い、ケイリーさんの心の健康問題は家族関係に原因があると主張。ケイリーさんが家で苦しんでいた時にはSNSが健全なはけ口になっていた可能性があると述べた。
抜け出せない「無限ループ」
原告側のレニア弁護士は、メタとユーチューブの社内文書を根拠として、SNSの狙いは子どもや10代のユーザーの獲得にあると訴えた。
メタの10年前の社内文書には、「ティーンで大成功」したければ「トゥイーン(10歳前後)の時に取り込む」必要があると記されていた。ユーチューブの別の社内文書では、親が料理や掃除、洗濯をしている間、ユーチューブを短時間のデジタルベビーシッターとして使わせることを提案していた。
レニア弁護士によると、こうしたアプリは若者を夢中にさせる目的で「無限スクロールと自動再生」機能や「いいね」ボタン、自分の顔を加工できる、いわゆるビューティーフィルターなどの機能を利用。「いいね」は仲間内での承認欲求が強い10代にとって、化学反応を引き起こすに等しい作用があると同弁護士は論じている。
ケイリーさんは6歳の時にユーチューブを、9歳の時にインスタグラムを使い始めたといい、一時期は1日に6~7時間もユーチューブを使っていたことがあるとされる。小学校を卒業するまでには284本の動画をユーチューブに投稿していた。
インスタグラムは「1日数時間」使っていたとされ、スマートフォンの記録によれば、16歳だった2022年3月には1日16時間以上使用していた。
母親はペアレンタルコントロールを試したものの、ケイリーさんの中毒状態を解消することはできなかったという。
レニア弁護士によると、メタ社内の「プロジェクト・ミスト」と呼ばれる調査では、「副作用」を経験した子どもがインスタグラム中毒になる可能性が最も高いことが実証されていた。親に中毒を食い止める力がないことも、この調査で分かったとされる。
「ケイリーがマシンに閉じ込められた瞬間、母親は締め出された」とレニア弁護士は言う。 訴状によると、母親は別のソフトウェアを使ってケイリーさんのインスタグラム使用を阻止しようとしたが、締め出された状態は解消できなかった。
ケイリーさんはインスタグラム上でいじめに遭い、わいせつ写真をさらすと脅して金銭の支払いや写真の提供を迫る性的脅迫を受けたと訴えている。
ユーチューブとメタの反論
ユーチューブのルイス・リー弁護士は10日の冒頭陳述で、ケイリーさんはユーチューブ中毒ではなかったと反論した。
メタのシュミット弁護士はケイリーさんの診療記録を引き合いに出し、ケイリーさんは幼少期から親の言葉による虐待や体のイメージ問題、学校およびネットでのいじめに苦しみ、セラピストに相談していたと強調。心の問題はインスタグラムが主な原因ではないと主張している。
確かに原因をあげれば、一つではないだろう。しかし、SNSが子供たちを本来の問題に向かわせず、逆に悪い影響を及ぼす面があるのも事実ではないか。
世界に広がるSMS利用規制の動き
子供のSNS利用を規制する動きは、世界に広まりつつある。欧州連合(EU)のフォンデアライエン委員長は今月、年齢に応じて利用制限する方針を示し、今秋にも具体的な方法を公表すると指摘。イギリスも6月、16歳未満を対象にSNSの利用を禁止する方針を発表しており、ドイツも13歳未満のSNS利用を制限する考えを示している。
フランスでは、学校内の生徒による教師や他の生徒への暴力事件やいじめが相次いでおり、SNSを通じて生徒が自殺に追い込まれる事例も後を絶たない。
さらには、10代の生徒による衝撃的な殺人事件も起きている。西部の高校では2025年4月に、昼休みの教室で、16歳の男子生徒が刃物で15歳の女子生徒を襲い、女子生徒が死亡、他の生徒3人が負傷。また東部の中学校では25年6月、持ち物検査中に14歳の男子生徒が31歳の教員助手の女性を刺殺した。
マクロン氏は、これらの事件の一因にSNSがあると指摘しているい。実際に、SNSには暴力や自傷行為、薬物使用、自殺などの危険行為を誘発しかねない有害なコンテンツが転がっている。それだけでなく、SNSを見続けることで子供の集中力や自尊心が低下するなど、心身の健康に悪い影響が及ぶことも分かっている。
フランスの保健監視機関によると、10代の若者の2人に1人が1日に2~5時間をスマートフォンに費やしており、12歳~17歳までの約9割が毎日スマホを使ってインターネットにアクセス。そのうち58%がSNSを利用しているという。その分、学生の本分である勉強や心を耕す読書の時間は削られている。
宗教的に見ても心の成長を阻害
大川隆法・幸福の科学総裁は著書『心に目覚める』の中で、スマホの利用ばかりしている人が増え、「『今、機械に接続できるような人間になってきていて、自動的に心の分野が薄くなってきているのではないか』という危惧、心配」があると警鐘を鳴らしている。これが若者の暴力事件の増加にもつながっている。
一律でSNSを規制することの是非はあるにせよ、SNSが子供に与える悪影響を鑑みると、一定の年齢以下の子供にSNS利用の制限をかけることは妥当と言える。
これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。

��潟�<�潟��