レアアースの種類や割合
ことし2月、南鳥島沖の海底からレアアースを含んだ泥を引き上げることに成功した内閣府のプロジェクトは、7月24日会見を開き、泥の成分を分析した結果、ハイテク製品に不可欠な希少なレアアースが含まれていたと発表した。
日本の排他的経済水域である南鳥島沖の海底の泥には、レアアースが高い濃度で含まれることがわかっていて、内閣府のプロジェクトはことし2月、採掘試験で水深およそ5600メートルの海底から泥を引き上げることに成功した。
プロジェクトは7月24日、都内で会見を開き、泥に含まれるレアアースの種類や割合などを分析した結果を発表した。

それによると、半導体製造装置などに使われる「イットリウム」が29.9%と最も多く、電気自動車のモーター用の磁石に使われる「ジスプロシウム」が4.6%など、17種類あるレアアースの中でもより希少とされる「中・重レアアース」が全体の53.9%を占めていた。
一方、引き上げたおよそ50トンの泥に、総量としてどれだけのレアアースが含まれていたかについては非公表とした。
プロジェクトによりますと、「中・重レアアース」はハイテク製品に不可欠となっているが、これまで国内需要の大部分を中国からの輸入に頼っている。
プロジェクトは海底のレアアースを産業化できれば大きな価値があるとしていて、石井正一プログラムディレクターは「来年の2月に本格的な試験を行い大量の泥をとってくる。その段階で経済性を評価したい」と話している。
今後の試験計画と経済性
南鳥島沖の海底のレアアースを産業として開発していくには、今後、採算性などを評価する必要がある。
このため、内閣府のプロジェクトは来年2月、ことし試験を行ったのと同じ海域で、およそ1か月間にわたる本格的な採掘試験を行う計画である。
試験では、JAMSTEC=海洋研究開発機構の探査船「ちきゅう」を使い、1日あたり350トンの泥を継続的に引き上げるとともに、引き上げた泥を一度、南鳥島に運び、島内で脱水などの処理を行ってから本土へ運搬する一連のプロセスを実証するとしている。
プロジェクトはこの試験などを通じて、採掘や運搬、精製などにかかる全体的なコストを計算し、再来年3月までに報告書をまとめることにしていて、事業化した際に採算がとれるのか、経済性などが検討されることになる。
木原官房長官「将来にかけて期待が持てる成果」 木原官房長官は午後の記者会見で「回収された泥に半導体や自動車産業などに用いられる希少なレアアースが多く含まれているという結果で、将来にかけて期待が持てる成果だ。わが国の排他的経済水域内に質の高いレアアースが存在することは、特定国に重要物資を過度に依存せず、自律性を高めるものであり、今後、産業規模での開発・実証を速やかに進めていきたい」と述べた。
レアアースとは何か?
レアアースとは、スカンジウム、イットリウム、およびランタノイド系の15元素(ランタンからルテチウムまで)の合計17元素の総称であり、特定の1つの物質を指す言葉ではない。
これらの元素は、さまざまな鉱石の中に薄く広く分散して含まれることが多く、特定の元素だけを分離して取り出すのが非常に難しいという特徴がある。採算がとれる形で効率よく回収するのが難しい、という意味で「レア(希少)」と呼ばれている。精製されたレアアースは、ごく少量を加えるだけで製品の性能を大きく向上させることから、現代のハイテク産業を底支えする存在として、「産業のビタミン」とも呼ばれている。
レアアースの代表的な用途として挙げられるのが、ネオジム(レアアースの一種)を用いたネオジム磁石です。これは現在実用化されている永久磁石の中でも最強クラスの磁力を持ち、日本のハイテク製品を陰で支える基盤部材といえる。
たとえばEV(電気自動車)の心臓部であるモーターは、ネオジム磁石を使うことで小型・軽量でありながら高出力を実現しやすくなり、燃費(電費)や航続距離の向上に貢献する。さらに、スマートフォンの繊細なバイブレーション機能や、イヤホンの小型・高音質スピーカーにもネオジム磁石が使われている。
また、自動車のモーターのような高温環境で使用される場合、磁力の低下を抑えるために、ジスプロシウム(重希土類の一種)といった別のレアアースを添加して、耐熱性を高める工夫も行われている。
レアアースの主な産出国
レアアースは「産業のビタミン」と呼ばれる一方で、その供給源が特定の国に大きく偏っており、リスクが顕在化しやすいという構造的な課題を抱えている。とくに中国は長年にわたり、採掘から精製までを含めたレアアース供給の中心的な存在として、世界市場に大きな影響力を持ってきた。
こうした依存リスクを考えるうえで重要なのは、「生産量」だけが問題ではないという点。レアアースは採掘しただけでは使えず、不純物を取り除き、17種類の元素をそれぞれ分ける「分離・精製(リファイニング)」工程が不可欠。この工程には高度な技術力と厳格な環境対策が求められるため、参入できる国や企業は限られる。その結果、分離・精製能力が中国に大きく集中し、ここがレアアース供給全体のボトルネックになりやすい構造が続いている。
供給源の分散と国家備蓄の整備
中国への過度な依存リスクを避けるために、日本はまず調達先の分散に取り組んでいます。具体的には、豪州や米国などの資源国との連携を強め、中国以外からも安定的に調達できる供給ルートの確保を図っている。
あわせて、緊急時の備えとして国家備蓄も整えています。政府が主導してレアアースをあらかじめ一定量確保・保管しておくことで、供給が急減した場合でも国内の自動車や電機メーカーが一定期間は生産を続けられるようにする仕組み。
使用済み電子機器を資源化する「都市鉱山」
日本がレアアースの輸入依存を下げるうえで、鍵のひとつになるのが、使用済み製品の中から金属を取り出す「都市鉱山」の活用。
都市鉱山から回収できるのは金や銀だけではなく、ハイブリッド車のモーターや、エアコンの高効率コンプレッサーなどに使われる磁石にはレアアースも含まれている。これらを焼却や埋立てで処分するのではなく、資源として回収・再利用できれば、海外からの調達への依存度を下げることができる。
もちろん、製品中に含まれるレアアースは微量であり、回収・分離は容易ではない。しかし日本には、複雑な基板や部材から有価金属を効率的に分離・精製するレアアースリサイクル技術を含む高度な技術基盤がある。これにより、回収物を新たな製品の材料として再生させる循環が可能になる。
南鳥島沖に眠るレアアース泥
国内資源の探索は陸上にとどまらない。日本最東端の南鳥島沖、深度約6,000mの海底には、レアアースを含む堆積物(いわゆるレアアース泥)の存在が確認されている。
このレアアース泥が注目される最大の理由は、その潜在的な量の多さ。調査では、条件が整えば国内需要を数百年規模で賄える可能性も指摘されており、「海底の宝庫」と呼ばれることもある。
しかし、実用化には高いハードルがある。水深6,000m級という超深海で安定的に採取するには、泥を連続的にくみ上げて選鉱する高度な技術が必要で、コストも膨らみかねない。さらに、ほとんど解明されていない深海生態系への影響評価や、国際的なルールづくりといった環境・社会面の課題も避けて通れない。
こうしたことから、商業ベースでの本格利用に向けた取り組みは、まだスタートラインに立った段階だと言える。
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