メガロドン本当の姿は不明
イラストに描かれたメガロドン(Megalodon)の姿は、正しくない可能性がある。360万年前に絶滅したメガロドンは、現代のホホジロザメと似ていると考えられてきた。しかし、新たな研究では、メガロドンはホホジロザメよりもスリムで細長い体形をしていたことが示唆されている。
メガロドンというと史上最大の魚類で、今から約2300万年前から358万年前の前期中新世から鮮新世にかけて生息していた絶滅種のサメである。
メガロドンの全長は最大個体の推定値で最大約24メートルと、シロナガスクジラに匹敵する体長に達すると推定されている。(イラストはホオジロザメに似せたメガロドン)

デポール大学による2025年3月発表の研究では、これまで考えられていたようなホオジロザメをそのまま巨大化させたような姿ではなく、より長く、ほっそりとしたレモンザメに近い体型だった可能性が高いとされる。
サメは軟骨魚類であり、化石は通常は歯しか残らない。そのため、化石のみで正確な生前の姿を復元することは困難で、現行の生態復元図はすべて想像によるものである。
いずれにしても、現生のホホジロザメ(最大個体の推定値約6.0メートル)より遥かに大きく、各仮説を統合すると現世魚類ではウバザメやジンベイザメに近い大きさである。
大きな顎は108,500〜182,200ニュートンもの噛み砕く力を発揮したと推定されている。 歯は厚く頑丈で、獲物を掴んで骨を壊すために作られていた。
ホオジロザメの巨大版とされた理由
「これまでの研究は、何の根拠もなしに、メガロドンは現代のホホジロザメの巨大版だったと決めつけていました」と、島田氏は言う。
ホホジロザメ(Carcharodon carcharias)もメガロドン(Otodus megalodon)も、歯の縁にまるでステーキナイフのような鋸歯状のギザギザがある。そのため当初は、ホホジロザメはメガロドンの直系の子孫であると考えられていた。
一方、最近の研究では、メガロドンはホホジロザメとは別の系統に属していることが示唆されている。にもかかわらず、ほかに適切な比較対象がないことから、依然としてホホジロザメが引き合いに出される状態が続いていたと、米デポール大学の島田氏は言う。
科学者らはまた、メガロドンの全長について新たな推定値を導き出しており、最も極端な推定では約24.3メートルに達するという。これまでは、メガロドンはせいぜい15メートル前後だと考えられていた。つまり、最大級のメガロドンは、シロナガスクジラに近い大きさだったことを意味する。
「われわれが提示した新たな推定値は、現在の化石記録とデータに基づいたメガロドンの最大推定全長として最も妥当なものです」と島田氏は述べている。
全長をどのように推定したのか
古生物の中には、全身の骨格が見つかっていて、それをもとに科学者が生前の姿を再現できるものもある。しかしメガロドンの場合、その作業はかなり難しい。
現存するメガロドンの化石は、脊椎、歯、鱗、軟骨の断片に限られている。サメは軟骨魚類であり全身骨格の化石が残らない。一部の古生物学者は、ホホジロザメの歯や脊柱を頼りに、メガロドンの大きさを推定してきた。しかし、頭部、尾、ひれを含むメガロドンの全体像は依然として謎のままだ。
この空白を埋めるために、島田氏らは新たな手法によってメガロドンの体長を推測することにした。彼らが用いたのは、ベルギーで発見されたほぼ完全な脊柱と、デンマークで発見された不完全な脊柱だ。
現存するものと絶滅したものとを含む165種のサメのボディプランと比較することにより、彼らはベルギーのメガロドンの頭部と尾の長さの比率から、それぞれ約1.8メートルと約3.6メートルと推定した。これをもとに考えると、このメガロドンの全長は約16.4メートルということになる。
しかし、デンマークの標本に属する椎骨のひとつが、ベルギーの個体における最も大きな椎骨よりもかなり大きかったため、科学者らは推定値をスケールアップして、新たな、驚くべき値を導き出すに至った。
よりスリムだったと考える根拠
次に、科学者らはメガロドンの「体高比(体長/体高)」を求めることにした。「簡単に言えば、体高比とは、体や物体がどれだけ細長いかを示す尺度です」と島田氏は言う。
今回も、研究チームは現存するサメと絶滅したサメの測定値を参考にした。ジンベエザメやウバザメのような現存する最大級のサメのボディプランはほっそりとしており、海を泳ぐうえで流体力学的に効率のよい体形をしている。しかし、ホホジロザメのボディプランをメガロドンの長さにまでスケールアップした場合、その体は水中を泳ぐのにさほど適しているとは言えないものになってしまう。
「まだ直接的な化石の証拠は必要ですが、今回の研究は、流体力学的観点から見て、メガロドンは現代のホホジロザメよりも細長い体形をしていた可能性が高いことを示唆しています」と島田氏は述べている。
英ウェールズにあるスウォンジー大学の古生物学者ジャック・クーパー氏は、今回の研究には関与していないが、ベルギーの化石に基づいた体長の推定や、ホホジロザメのような単一の類似種に依存しない手法について、著者らを称賛している。
「とはいえ、細長い体形をしていたという説の裏付けは、せいぜい暫定的なものに過ぎません」とクーパー氏は言う。
「メガロドンの体がこれまでの復元像よりも細長かったという可能性は、もちろんあるでしょう。しかし、今回の研究は、どれだけ細長かったのかを明確に示しているわけではなく、また、従来の解釈を完全に否定するものでもありません」
絶滅した理由は、ホホジロザメより速く泳げなかったから?
島田氏らは、メガロドンは実際には巨大なレモンザメに近い姿をしていたのではないかと考えている。
北米、南米、西アフリカ沿岸に生息するレモンザメは、「標準的なサメのボディプランを有しています」と島田氏は言う。「彼らはいわば、サメ界における『ごく平凡なサメ』なのです」
島田氏らはまた、確固とした証拠に基づき、いくつかの新たな主張も行っている。たとえば、新たな体形に基づいて流体力学的に分析すると、メガロドンは成体になっても現代のホホジロザメよりも速く泳げなかったと考えられるという。
また、成長の指標である脊柱の輪紋から、生まれたばかりのメガロドンの体長は約3.6~3.9メートルだったと推定している。もしそうならば、メガロドンは魚類史上最も大きな赤ちゃんを産む種だったことになる。
メガロドンの子どもは、最初の7年間で、ホホジロザメに捕食される危険がなくなる程度の大きさにまで急速な成長を遂げていたとも考えられる。その可能性についての研究は、非常に重要な意味を持つ。なぜなら、多くの科学者が、ホホジロザメとの競争がメガロドン絶滅の一因となったと考えているからだ。
いずれにしても現段階では空想の世界
近年、一般の人々の間でも、メガロドンの研究に対する関心が高まっている。しかし、クーパー氏も島田氏も、「史上最大」にこだわったり、メガロドンが絶滅したクジラの仲間リビアタンと戦って勝てるのかといった仮説的な疑問に答えたりすることは、本質的でないと考えている。
そうした行為は、「われわれがこの実在した種について学んできた驚くべき生物学的事実を軽視し、彼らを単なるゲームのキャラクターのようなものとして扱うことにほかなりません」とクーパー氏は言う。
島田氏が共著者として参加した別の研究では、メガロドンが少なくとも部分的に恒温性であったことを示唆する地球化学的証拠が見つかっている。この利点によって、メガロドンはより遠くの寒冷な海域にまでクジラを追跡できた可能性がある。それが巨大な体になる素地となったのかもしれない。
証拠となる化石が非常に少ないため、メガロドンがこうした推定とはまったく異なる姿をしていた可能性もある。
「保存状態のよい完全な、または完全に近い骨格が見つかるまでは、その可能性は否定できません」と島田氏は言う。それまでは、「われわれは現在のデータから推し量るしかないのです」

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