日本の洋上風力から英大手が撤退を検討
昨年、洋上風力「促進地域」での公募第一弾が行われた3海域の事業から、三菱商事が全て撤退したことに驚いた。そんな中、公募第三弾で選出された山形県遊佐町沖の事業を担う企業連合から、英石油大手BP社が離脱を検討している。
英エネルギー大手BPは2026年7月、丸紅などが主導する山形県遊佐町沖の洋上風力発電事業からの離脱を検討していることが明らかになった。世界的な物価高や金利上昇による資材・建設コストの増大が背景にあり、欧州企業の日本市場での撤退ドミノが懸念されている。
再エネ政策の切り札とされる洋上風力発電に暗雲が漂っている。やはり想定以上のコスト高で、採算の目途が立たないことが影響しているという。また、BP社そのものが、脱炭素事業に投資を振り向け過ぎたことを反省し、化石燃料に回帰していることも、背景にあると報じられている。

欧州の洋上風力大手としては、2025年末にはコペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズが、今年6月末にはエクイノールが、日本市場からの撤退を決めている。それに続く3件目となる大手の離脱は波紋を呼び、他の海域でも撤退ドミノの動きが広がらないか、業界では不安が広がっているという。
政府が洋上風力の導入を推進してきた最大の根拠の一つは、「洋上風力はいずれコストが下がっていく」という見通しだった。大量導入や技術革新が進めば、資材価格や建設費用も下がるという目算であった。
しかし現実には、低コスト化の効果はほとんどない。むしろ、イラン戦争による物価高、世界的なインフレや円安などによる変動で、採算確保が難しくなる脆弱さが、浮き彫りになっただけである。
洋上風力発電は日本には不向き
洋上風力からコスト高で撤退する、あるいは、そもそも入札の応募がないケースは欧州などでも数多く見られていた。そうした中でも、日本は特に事業条件が悪いと言える。海底地盤が均質ではないため、風車建設の基礎工事に、想定以上の時間がかかることも指摘されている。
さらに台風が頻発する気候条件も、設計のハードルを上げて、事業費を膨らませているという。そもそも偏西風などが常時吹かない地理的条件も、風況としては発電効率を下げる要因になる。
こうした中、政府は何とか事業者を洋上風力に引き留めようと、資金支援を強化している。経済産業省は14日、公募した洋上風力発電について、1キロワットあたり最大70万円の収入を20年間保証する方針を発表している。
これは従来の最大3.5倍となる保証額。三菱の撤退等を受け、案の定、国民負担が上乗せされたと言える。それにもかかわらず、各企業にとって事業の見通しが立つ状況ではなく、三菱が撤退した穴を埋めるための再公募も、手を挙げる企業がいないのでは、という観測さえある。
エネルギー基本計画
政府は石破政権時に閣議決定した「エネルギー基本計画」で、電源構成に占める風力発電の割合を2040年度に4~8%程度にまで高める方針を示している。そのためには風力導入量を2.5~5倍にしなければいけないが、陸上風力新設の余地はほとんどないため、多くを洋上で確保するはずだった。
この実現は限りなく難しく、もし無理に推進しようとすれば、多大な負担を国民に課すことになる。政権はメガソーラーの乱開発問題には踏み込みつつも、「再エネの主力電源化」については、GX(グリーントランスフォーメーション)をめぐる利権や政治的慣性の大きさもあり、踏襲しているように見える。しかし、洋上風力の限界が明らかになった今、潔く、エネルギー政策の大転換を表明するべきではないだろうか。

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