世界の石炭使用は25年に過去最大に

 日本での再生可能エネルギーは、線状降水帯の発生などで安定した供給が得られない問題があって、洋上風力発電や太陽光発電が岐路に立たされている。

 イギリスの「エネルギー研究所」がこのほど発行した統計で、2025年の世界の石炭使用量が過去最大となり、中国が5割以上を占めていることが分かった。「脱石炭」に逆行して、中国では石炭火力発電所の建設や大型炭鉱の開発が猛烈な勢いで進んでいる。

 石炭は、石炭火力発電の燃料になり、製鉄やセメント製造にも利用されるなど、工業生産において重要な資源の一つ。しかし、利用する際の二酸化炭素排出量が多いため、地球温暖化の原因となるとして、国際的な「脱炭素」の動きの中では、液化天然ガス(LNG)など二酸化炭素排出量が少ない他の燃料への置き換えが推進されている。

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 そうした中、世界における石炭使用の83.2%はアジアが占めており、中国だけで55.6%に達する。中国は再生可能エネルギーの導入を急速に進めているとはいえ、発電における再エネの割合は2割程度で、石炭火力がいまだに約5割を占めている。

 中国の火力発電

 石炭火力発電所の新設は世界一活発で、25年に稼働させた石炭火力発電所の合計出力は、2位のインドで、過去10年に新稼動した合計を上回るほど。

 中国は炭鉱開発に力を入れており、国家発展改革委員会と国家エネルギー局は8月10日、2030年までの間に、山東省や陝西省、内モンゴル、新疆ウイグル自治区などを石炭の供給保証拠点で石炭総生産の80%以上を賄うため、大型で近代化された炭鉱の整備を進める計画を発表。「エネルギー安全保障の源としての石炭の役割をさらに強化」するとしている。

 中国における石炭の生産量は25年、前年比1.7%増で世界全体の52.4%を占め、輸入量は前年比で10%以上減少。国内生産を増やして輸入を抑え、エネルギーの自給を薦めている。

 石炭は液化天然ガス(LNG)に比べてコストが安いうえに、備蓄がしやすいため、有事対応に適したエネルギー源だ。「脱炭素」の潮流の中、世界的に「石炭火力発電の廃止」を目指す動きが進んでいるが、電力供給の安定を考えれば、手放すわけにはいかない選択肢だ。

 日本政府は未だ反原発・反火力発電

 日本政府は、2050年に国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を達成するため、「非効率石炭火力」と呼ばれる、発電効率が4割以下の旧型の石炭火力発電所を段階的に削減する方針を立てている。そのため、「非効率石炭火力」については稼働率を5割以下にする規制があるが、中東情勢の悪化の影響から、今年4月から1年限定で制限を解除した。

「人為的に排出される二酸化炭素によって地球温暖化が進む」という説は仮説に過ぎず、石炭利用の制限は無意味な規制になるかもしれない。

 アメリカのトランプ大統領は就任後、脱炭素政策を撤回し、石炭火力の活用を推進。今年6月には、石炭産業への大規模な投資を支援する策を発表しており、炭鉱の操業維持や石炭火力発電所の改修、石炭輸出ターミナルの建設で、同盟国へのエネルギー輸出を強化するとしている。

 エネルギーを安定的に利用できるかどうかは、安全保障に影響する重大な問題だ。中国は、脱炭素を推し進めるポーズを取りながら、「2030年までに石炭使用をピークアウトさせる」という建前のもと、石炭の使用を爆発的に増やし続けているのは、有事の際にもエネルギーを確保し、国家として生き残るために「当然取るべき策」だからだ。

 アメリカ・中国は火力発電でエネルギーの確保

「CO2を出さないで工業生産はできるわけない」のであって、中国が脱炭素の公約を守らないのは「中国だけが生き残る」ためであり、脱炭素に進んで取り組んだ国から「滅びていきます」と警告を発していた。

 こうした状況の中、日本もできる限り、「石炭」をエネルギー供給の選択肢として持っておくべきだ。中東有事が現実のものとなり、燃料価格の乱高下が起きる中で、安定した石炭は、その利点が改めて見直されている。

 火力発電大手のJERAは、石炭火力で発電した電気について、近年、脱炭素の潮流を受けて、必要な時に買う「随時契約」が中心となっていたが、このほど「長期購入契約」を再開する方針を表明。6月の会見で奥田久栄社長は、LNGのみで有事対応をした場合、国内の火力発電の年間総発電コストは16兆円に達し、石炭と併用した場合より3兆円高くなるとの試算を発表し、石炭火力の活用は「社会の安定」につながると指摘していた。

「脱炭素」をよそに石炭を最大限に活用する中国の狙いを知り、そして「脱・脱炭素」の決断を下したアメリカにならって、日本としても「脱炭素」の方針は撤回すべきだ。

間違いだらけの電力問題
山本隆三
ウェッジ
2024-07-19