発展するフィジカルAI
フィジカルAI(Physical AI)とは、高度な知能と物理的な「身体」を組み合わせ、現実世界(フィジカル空間)で自律的に認識・判断して行動できる人工知能である。画面の中でテキストや画像を生成する従来の生成AIとは異なり、重力や摩擦などの物理法則を理解しながら、ロボットや自動車などのハードウェアを人間のように柔軟に動かすことができる。
生成AIは画面内完結である。インターネット上のテキストや画像からデジタル情報を出力する。一方、フィジカルAIは現実世界と連動している。カメラやセンサーで3D空間を認識し、実際の「動き」として実行。搭載されたカメラやLiDARなどのセンサーを用い、リアルタイムに周囲の空間や物体を捉える。
フィジカルAIは、世界モデル(物理法則の理解)やVLA(Vision-Language-Action)モデルを基に、次の最適な行動を計算する。計算された指示をモーターやアクチュエーターへ送り、物体を掴む、移動するなどの物理行動を起こす。

主な活用分野は、ハードウェア産業・製造: 工場での複雑なピッキング作業や、不規則な形状の部品の組み立て。物流では倉庫内を自律走行する搬送ロボット(AGV/AMR)や自動仕分けシステム。自動運転車(ロボタクシーなど)やドローンによる配送。次世代ロボットとして、人型(ヒューマノイド)や四足歩行ロボットによる、災害救助や家庭内サポートなどが考えられている。
実装に向けたトレンドと課題現実世界だけで学習を行うのは時間がかかり危険を伴うため、NVIDIAなどが提供する高度な仮想空間(デジタルツイン)でシミュレーションを重ねてから実機に適用する手法が主流。市場規模は急拡大しており、2040年には世界で180兆円を超える巨大市場になると予測されている。
北京で2回目の人型ロボット運動会
中国政府が人型ロボットの開発に力を入れる中、北京で人型ロボットの運動会が開かれた。2回目となる今年は、陸上の100メートルでウサイン・ボルトさんが持つ男子100メートルの世界記録9秒58を上回るなど、技術の向上が見られる。
北京市などが開いた人型ロボットの運動会はことしが2回目で、22日から5日間の日程で開かれた。運動会には、日本を含む16か国の企業など666のチームが開発した2000台余りの人型ロボットが出場した。
出場するロボットの数は去年の4倍に増えていて、陸上やサッカーなどに加えて、飲食サービスなど実用的な動きを競うものなど51種目が行われる。
8月22日に行われた開幕式では、デモンストレーションでサッカーの試合が行われ、ロボットがシュートを決めたり、ゴールパフォーマンスをしたりしていた。また、テニスや卓球では人間と一緒に息のあったプレーを見せた。
そして、陸上の100メートルの予選では転倒するロボットがあった一方で、速いものでは、9秒32を記録。去年の優勝タイム21秒50を大幅に短縮し、ウサイン・ボルトさんが持つ男子100メートルの世界記録9秒58をも上回って会場を沸かせていた。
会場を訪れた20代の女性は「中国はロボットの分野で世界のトップクラスにあると思います」と話していた。中国政府が人型ロボットを新たな成長産業と位置づけるなか、参入企業が相次ぎ開発競争が加速していて、技術の向上が進んでいる。
さらに、2日目の8月23日は、陸上の400メートル決勝の優勝タイムが38秒15と、こちらも人間の世界記録の43秒03を上回り、会場から歓声が上がっていた。
人型ロボットの社会実装が進む中国
中国では人型ロボットが実際に現場で使われる社会実装も一部で進んでいて、運動会の会場に設けられた売店ではロボットが接客をしている。
このうち、3年前に設立された北京の新興企業が開発したロボットの店では、タッチパネルで商品を注文すると、ロボットが飲み物などを手に挟んで客に提供する。
中国メディアによると、この企業が開発したロボットが導入された店舗は、北京のほかに上海や内陸部の四川省成都など20あまりの都市で150以上展開されているという。
また、北京の別の新興企業が開発した調理用のロボットのブースでは、ロボットが包丁を使ってきゅうりを均等に切る様子が披露された。
この企業では、今後、できるだけ早い時期に市場に投入したいとしている。
企業の創業者は、「もし1日3回の食事の調理にかける時間を節約できれば、私たちはほかのやりたいことにより多くの時間をかけることができるだろう」と話していた。
8歳の女の子は、「ロボットはとてもすごくて面白いです。小さくてかわいいものもありました。道に迷ったら助けてくれるようなロボットがほしいです」と話していた。
女の子の祖父の60代男性は、「夏休みなので子どもに国家の発展を体感し、視野を広げてもらいたいと思って来ました」と話していた。
中国の人型ロボット 戦略と課題は
中国政府はことしからの「5か年計画」で、人型ロボットなどを新たな成長産業と位置づけて、開発を支援している。
中国の工業情報化省によりますと去年の時点で人型ロボットの中国メーカーは140社を超え、330以上の機種が発表されたということで、去年を「人型ロボット量産元年」としている。
このうち、浙江省杭州の「ユニツリー」は、中国武術のカンフーの動きを再現できる人型ロボットの開発などで知られている。
今月19日には、上海証券取引所で新興企業向けの株式市場に上場し、時価総額は初日の終値でおよそ3400億人民元、日本円にして8兆円相当となり、創業10年にして代表的な企業の1つに成長した。
アメリカの調査会社IDCは、世界で去年出荷された人型ロボットは1万8000台を超え、中国企業が9割以上を占めたと推計し、存在感が高まっている。
一方、中国とアメリカの間では、人型ロボットの開発競争が新たな火種になっている。
中国製品はサイバーセキュリティーで不安
アメリカのFCC(連邦通信委員会)は、先月、今後製造される人型ロボットについて、サプライチェーンやサイバーセキュリティーの面でぜい弱性をもたらし、外国の情報機関のためのデータ収集に使われるおそれがあるとして、外国からの輸入を禁止すると発表した。
この措置は中国を念頭にしたとみられ、中国商務省は「中国企業と製品を差別して抑圧するものだ」などとして、アメリカ側に撤回を求めている。
日常生活から産業まで幅広い分野で人型ロボットの導入を目指した開発競争が激しくなるなか、どのようにルールづくりをすすめ、実用化を図っていくかが課題となっている。

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