ナンシー・グレイス・ローマン宇宙望遠鏡打ち上げへ
NASA(アメリカ航空宇宙局)は、今月末に次世代の宇宙望遠鏡を打ち上げる。従来の宇宙望遠鏡よりも100倍余り視野が広く、宇宙の謎とされる暗黒物質=ダークマターの解明や太陽系以外でのさまざまな惑星の発見が期待されている。
NASAが打ち上げを予定しているのは、「ナンシー・グレイス・ローマン宇宙望遠鏡」で、搭載した直径2.4メートルの鏡と3億画素の赤外線カメラによって宇宙の広い範囲を高い解像度で観測できるのが特徴。この鏡の大きさはハッブル宇宙望遠鏡と同じ大きさだ。
一度に観測できる視野の広さは、1990年に打ち上げられ、銀河の観測などで数々の成果を上げてきたハッブル宇宙望遠鏡の100倍余りにものぼるということで、宇宙の謎とされる暗黒物質=ダークマターの解明や太陽系以外のさまざまな惑星を新たに発見することが期待されている。

ローマン宇宙望遠鏡には日本も関わっていて、太陽系以外の惑星の大気などを観測する装置の開発に参加したほか、宇宙望遠鏡からの観測データの一部の受信を長野県にあるJAXA・宇宙航空研究開発機構の施設が担う。
ローマン宇宙望遠鏡は8月30日、アメリカ南部フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられ、3か月ほどの試験のあと観測を開始する予定である。
NASAの科学者、ジュリー・マッケナリーさんは「ローマン宇宙望遠鏡は天文学のあらゆる分野に影響を与え、思いがけない発見をもたらし、それは刺激的なものになるでしょう。日本の貢献も得ながら、すばらしい科学研究をともに推進していきたい」と話している。
暗黒物質や系外惑星の観測に期待
宇宙を形づくる成分のうち、現在、人類が観測できているのは陽子や中性子など全体のおよそ5%にすぎず、残りは暗黒物質=ダークマターや宇宙の膨張を加速させている未知の力、ダークエネルギーが占めていると考えられている。
新たな宇宙望遠鏡は、遠い銀河や超新星を精密に観測することで、これらの宇宙の謎を解き明かすことが期待されている。
また、太陽系以外の惑星については、これまでに6300個余りが確認されているが、新たな宇宙望遠鏡では複数の観測手法を組み合わせることで10万個ほどが発見できると見込まれていて、大気の分析などを通じて、地球に似た惑星の発見につながる知見が得られることが期待されている。
ナンシー・グレース・ローマン
ナンシー・グレース・ローマンは、1960年代以降NASAの宇宙望遠鏡計画実現に重要な役割を果たし、特にハッブル宇宙望遠鏡の計画実現のためNASA内部や議会へ積極的な働きかけをしたことから「ハッブルの母 (Mother of Hubble) 」と呼ばれた女性科学者であった。
その名前に因むナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(Roman)は、2026年8月30日に打上げが予定されている、口径2.4mの大型宇宙望遠鏡である。
ハッブル宇宙望遠鏡が地球から500kmの地球周回軌道を回っていたのに対し、ローマン宇宙望遠鏡は打ち上げ後、地球から見て太陽と反対側に約150万km離れたL2(ラグランジュ点2)に到達する。そこで数千個のIa型超新星爆発を観測する計画だ。L2付近では、ほかにもジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などが運用されている。
ローマン宇宙望遠鏡の主力装置である広視野撮像装置WF(I Wide-Field Instrument)は、ハッブル宇宙望遠鏡と同等の測光精度・空間分解能を持ちながらその200倍の視野を備えたサーベイ特化型の観測装置だ。
これを用いて、大量の遠方銀河の形状・明るさを精密に測定し、Ia型超新星を大量に観測することでダークエネルギー宇宙論の高精度な検証を行う。また、重力マイクロレンズ探査観測から従来発見が困難であった「冷たい系外惑星」を大量に発見し、系外惑星の分布を包括的に解明する事が期待されている。
さらに、コロナグラフ直接撮像装置CG(I Coronagraph Instrument)が搭載されている。CGIは宇宙空間初の波面補償を行う本格コロナグラフ装置で、太陽系の木星のような系外惑星の反射光を初めて捉える事で、将来の超大型宇宙望遠鏡による地球型惑星の直接撮像に向けた技術実証を期待されている。
以上のように、各分野で絶大な観測成果を期待されている、ローマン宇宙望遠鏡計画に日本は国際パートナーとして参画しており、日本独自の研究成果や貢献の創出を目指し、ISAS Romanプロジェクトチームを中心に活動を行っている。
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