ネパール・中国の国境地帯で土石流 ネパール側の死者359人

 2026年8月27日。恐れていたことがネパールで起きた。地球温暖化の影響で氷河が溶けできていた氷河湖の一つが決壊して大規模な土石流が発生し、下流の街は崩壊359人の死者を出した。

 日本では今夏、線状降水帯が各地で発生し多くの被害を出している。石川県や富山県で8月27日未明から降り続いた大雨は、日本海から東北に停滞する前線に向かって南から暖かく湿った空気が継続的に流れ込み、「線状降水帯」が発生した。

 今月中旬にも千葉豪雨など極端な大雨が発生している。千葉では大雨によって川があふれ、道路が冠水し、自動車に人が閉じ込められて何人もの死傷者を出した。この時も日常とは違う風景に驚かされたが、このネパールの洪水は比較にならないほど凄まじい。(写真は国境の建物を呑み込む土石流)

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 ネパールと中国の国境地帯で発生した大規模な土石流は、ネパールの警察当局はこれまでに359人が死亡したと明らかにした。中国側とあわせると死者の数は362人となっている。日本人5人とも依然、連絡がとれていない。

 ロイター通信が配信した監視カメラの映像には、中国・チベット自治区とネパールとの国境付近の検問所の建物に土石流が押し寄せる様子が捉えられている。

 映像は、検問所の建物が中国側から撮影されている。建物から離れようと人々が走って逃げる姿が写っているほか、建物の後ろで土煙があがってから10秒もたたないうちに土砂が押し寄せて画面が灰色になり、土や石がしぶきを上げるように飛び散っている様子が確認できる。

 また、検問所の中国側に設置された別の監視カメラの映像では、川沿いの立体駐車場にバスが10台以上止められているのが確認できますが、バス数台が土砂に押されたように見えたあと、立体駐車場ごと濁流に飲み込まれてしまった。

 大規模な土石流 “氷河の崩落”発端か

 ネパールと中国の国境地帯で8月26日、大規模な土石流が発生した。このうちネパール側では、中部のラスワ郡で大量の土砂や水が押し寄せ、警察当局は、これまでに359人が死亡したと明らかにした。

 首都カトマンズにある日本大使館は、観光ツアーに参加していたとみられる日本人5人と依然として連絡が取れておらず、「ネパール政府に対して捜索と救助を要請している。邦人保護の観点から安否について引き続き情報収集を進めている」としている。

 ヒマラヤ山脈をのぞむネパールには登山家やトレッキングの愛好家が訪れているほか、ヒンドゥー教や仏教の信者も巡礼に来ている。

 一方、中国側では、ネパールとの国境沿いにあるチベット自治区のシガツェ市で土石流が発生して、これまでに3人が死亡し、558人が行方不明になっていると国営メディアが伝えている。

 両国では、ヘリコプターなども投入し、捜索や救助活動が続けられていますが道路や橋が寸断されているほか、通信状況も悪いため作業は難航しており、被害がさらに広がることが懸念されている。

 現地で活動のNGO代表「濁流に飲まれすべてが根こそぎ流された」

 大規模な土石流が発生したネパール中部のラスワ郡などで10年以上、子どもたちの教育支援などの活動に取り組んでいる国際協力NGO「シャンティ国際ボランティア会」ネパール事務所の萩原宏子所長が首都カトマンズからNHKのオンライン取材に応じた。

 このなかで萩原さんは、「現地の協力団体などからは、被災した地域は濁流に飲まれ、すべてが根こそぎ流されてまっ平らになっている状況だと聞いている。支援してきた学校も流され、多くの子どもや先生が行方不明だと報告を受けた」と明かした。

 また、現地では27日午前地元政府による会議が開かれ、その中でこれまでにあわせて15の学校が流され、なかには子どもの半数の行方がわかっていない学校もあるという報告があったという。

 萩原さんによると、現地は川が流れる山深い地域で、過去にもたびたび洪水や土砂崩れに見舞われ、2015年の大地震でも深刻な被害を受けた。

 萩原さんは、「食料や衛生設備が必要になってくると思うので、正確な情報を把握しながら必要な支援をしていきたい」と話した。

 土石流発生のネパール ラスワ郡とは

 大規模な土石流が発生したネパール中部のラスワ郡は人口4万6000余りで、中国のチベット自治区に隣接する山岳地帯に位置している。

 ネパールの観光局によりますと、国内でも人気の観光地の1つだということで、チベット民族の文化のほか、ヒマラヤ山脈の雄大な景色などが主な見どころだとしている。

 登山家の野口健さんはNHKとのインタビューで、大規模な土石流が起きた地域について「地形は谷底のような形で、夏場にはものすごい雨が繰り返し降り、過去にも至るところで土砂崩れが起きていた」と述べ、過去にもたびたび土砂崩れが起きていたと指摘した。

 野口さんは1996年から2007年までの間に、あわせて6回、エベレスト登山などのためこの地域を訪れたことがあるという。

 付近には寺院も多く、巡礼のためにインドなどから訪れる人も多いと言う。

 今回の土石流について、野口さんは「ネパールは第2の故郷だと思っているので、非常に衝撃的だったが、気候変動によっていつかはおこると思っていた。今回の衝撃的な土石流は、遠くのことではなくて、日本の皆さんも災害はあすは我が身と思ってほしい」と話していた。

 大規模な土石流 “氷河の崩落”発端か

 雪や氷による災害に詳しい新潟大学災害・復興科学研究所の河島克久教授はNHKのインタビューに対し、今回の土石流について、標高7000メートルを超える山から氷河が崩落したことが発端になったとみられると指摘している。

 河島教授によると氷河が崩落したとみられるヒマラヤ山脈に位置する山、「ランタン・リルン」は山の急斜面に氷河が張り付いている。

 地球温暖化の影響で氷河は崩落しやすい傾向にあるうえ、ランタン・リルンなどで構成されるヒマラヤ山脈は現在、モンスーンと呼ばれる雨季に入っていて、多くの雨が降り、氷河を崩落しやすくさせていた可能性も推測されるとしている。(写真は地球温暖化でできた氷河湖)

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 氷河が崩落して土石流を発生させるメカニズムは複数考えられるといい、ひとつは氷河が崩落した際に谷底にあった氷河湖が決壊し土石流となったケース、そして、もうひとつは崩落した氷河や土砂が下にあった川を埋め、ダム湖のように水がたまり、決壊したケースだという。

 今回の土石流の発生源とみられる付近では、2015年にネパールで発生した地震の際にも氷河が土砂を巻き込んで雪崩のように崩落し、山のふもとの集落を襲った事例があった。

 河島教授は、専門家の調査がなければ今回の土石流の原因は特定できないと指摘している。

 そのうえで「まだ部分的に土砂で埋まっているような場所もあるかもしれない。雨が降ると、それが決壊して洪水になるということも起こり得ると思う。現地の状況をよく把握して、早めに危険なところを取り除くことが重要だ」と話している。

 当初発生した地震の揺れは、氷河崩落と土石流の振動だった

 大規模な土石流が発生したネパールと中国の国境地帯では、当初、USGS=アメリカの地質調査所がマグニチュード4.4の地震を観測したとしていた。

 しかし、その後地震観測所のデータや衛星画像などを分析した結果、当時観測していた揺れは、地震によるものではなく、氷河の崩壊と土石流によって引き起こされたものだったと明らかにした。

 衛星画像などの分析を行っている東京大学大学院の渡邉英徳教授によると、ネパール中部のラスワ郡で、日本時間の26日午後2時前に撮影された衛星画像からは、山岳地帯で土壌がむき出しになっている箇所が確認できるという。

 渡邉教授によりますと、幅は数百メートルにわたっているとみられ、山の斜面が大規模に崩れた跡ではないかと分析している。



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