太陽系初期の物語

 小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った試料の分析が進み、太陽系の初期の状態が明らかになっている。太陽系の始まりはどんなものだったのだろうか。

 原始太陽は約46億年前に巨大な分子雲の重力収縮によって誕生した。

 約45億6700万年前、原始太陽の周りの高温領域で、カルシウムやアルミニウムに富むCAI(白色包有物)が形成され、これが太陽系最古の固体の物質とされている。

 約45億6500万年前には、微惑星が誕生する。太陽系形成開始からわずか200万年以内には、小惑星「リュウグウ」の母体となるような初期世代の炭素質微惑星がすでに誕生した。(写真は、太陽系初期に形成されたリュウグウのイメージ)

スクリーンショット 0008-09-16 11.10.56


 最初の数百万〜1000万年間、宇宙の塵やガスが衝突と合体を繰り返し、球粒(コンドリュール)や小さな天体(微惑星)が次々とつくられた。その後、数千万〜1億年間かけて、微惑星同士の衝突合体を経て原始惑星が形成され、現在の地球や木星などの惑星へと進化した。

 微惑星の多くは、衝突と集積を繰り返すだけで、現在も太陽系空間を漂い続けている。JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」によって、観測された「イトカワ」もその一つで、このような小惑星をラブルパイル天体(Rubble pile、破砕集積体(はさいしゅうせきたい))とよんでいる。

 小惑星リュウグウは、太陽系初期から存在していた

 今回、日本の探査機「はやぶさ2」が探査した小惑星「リュウグウ」は、およそ45億6530万年前の太陽系初期の天体の残骸とみられることがわかった。北海道大学などの研究グループが発表しました。太陽系の天体が作られた過程を解明する手がかりになるとしています。

 はやぶさ2が探査した小惑星リュウグウは、もととなった天体が壊れたあと、その破片が集まってできた小惑星であることがこれまでの研究でわかっていますが、もとの天体がいつできたのか、詳しい時期は明らかになっていませんでした。

 北海道大学などの研究グループは、はやぶさ2が採取したリュウグウのサンプルに含まれる鉱物を分析し、鉱物ができた年代などを詳しく調べました。

 その結果、リュウグウのもととなった天体は、およそ45億6530万年よりも前に誕生していたことが今回新たにわかりました。

 研究グループによりますと、これは太陽系の形成が始まってからおよそ200万年以内のごく初期の時期にあたるということで、研究グループはリュウグウは太陽系初期にできた天体の残骸とみられることが明らかになったとしています。

 北海道大学の川崎教行准教授は、「今後はNASA=アメリカ航空宇宙局の探査機が持ち帰った別の小惑星のサンプルについても年代を調べて比較し、太陽系の初期にこうした天体がどのように作られていったのかを明らかにしたい」と話しています。

 リュウグウの石「ドロマイト」から「45億6530万年前」を特定

 リュウグウは、水を含む鉱物や有機物に富んだ炭素質の小惑星である。現在のリュウグウは、かつて存在したより大きな天体が破壊され、その破片が再び集まって形成されたと考えられている。

 今回、北海道大学などの研究グループは、はやぶさ2が回収した試料に含まれる炭酸塩鉱物「ドロマイト」に注目した。

 北海道大学の同位体顕微鏡を使ってマンガンとクロムの同位体組成を分析したところ、ドロマイトが形成された時期は約45億6530万年前だったことが判明した。

 さらに、ドロマイトと磁鉄鉱の酸素同位体を調べた結果、この鉱物は約90度の水溶液から形成されたことも分かった。

 一見すると小さな鉱物の年代測定だが、この結果がリュウグウの「誕生日」を推定する重要な手掛かりになった。

 母天体は太陽系誕生からわずか200万年以内に形成

 リュウグウの母天体は、生まれた直後にはマイナス200度以下という極めて低温だったと考えられている。

 そこから放射性同位体の崩壊による熱などによって内部が温まり、ドロマイトが形成できる約90度に達するまでには、少なくとも数十万年が必要だったと数値シミュレーションから推定された。

 つまり、約45億6530万年前にドロマイトができていたのであれば、母天体そのものはそれよりさらに前に存在していなければならない。

 研究チームはこの結果から、リュウグウの母天体が太陽系の形成開始から約200万年以内に誕生していたと結論づけた。

 さらに興味深いのが、他の多くの炭素質隕石との比較。多くの炭素質コンドライトに含まれる「コンドリュール」と呼ばれる直径1mmほどの粒子は、太陽系形成開始から約220万年後以降に作られたものが多いことが分かっている。

 ところがリュウグウの母天体は、それより前に誕生していた。研究チームは、これを「初期世代の炭素質微惑星」だったと考えている。

 現在のリュウグウは「太陽系初期世代」の残骸

 現在宇宙を漂っているリュウグウそのものが45.65億年間ずっと同じ形を保ってきたわけではない。

 研究によると、まず太陽系最初期に比較的大きな炭素質微惑星が形成され、その内部で氷が溶け、水と岩石が反応してさまざまな鉱物が作られた。その後、この天体は衝突などによって破砕され、破片が再び集まることで現在のリュウグウが形成されたと考えられている。

 今回の成果は、太陽系形成直後の数百万年間に、炭素質微惑星が一度に形成されたのではなく、複数の世代に分かれて次々と誕生していた可能性も示している。

 今後は、NASAの探査機「OSIRIS-REx」が小惑星ベヌーから持ち帰った試料との比較も重要になる。リュウグウとベヌー、それぞれの母天体がいつ誕生し、どのような進化をたどったのかを調べることで、水や有機物に富む天体が太陽系初期にどのように形成されたのか、さらに理解が進むと期待されている。

 太陽系が誕生した直後から存在していた天体の痕跡を、日本の探査機が持ち帰ったわずかな試料から読み解けるという今回の研究。リュウグウの試料分析から、太陽系誕生時の姿が明らかになっている。



これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。