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冬眠:制御ホルモンを発見 三菱化生研がシマリスから

ほ乳動物の冬眠を制御するたんぱく質(ホルモン)を、三菱化学生命科学研究所の近藤宣昭・主任研究員らがシマリスから発見した。冬眠中の動物は免疫力が高まり、血流が減っても脳や心臓が損傷しにくくなることが知られている。こうした仕組みの解明が進めば、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞の予防や治療、体温を下げて患者のダメージを防ぐ低体温療法、長期間の宇宙旅行などへの応用が期待できる。7日付の米科学誌「セル」に発表した。

近藤さんらは92年、冬眠動物のシマリスの血液から、冬眠時は濃度が低下するたんぱく質を見つけた。「冬眠特異的たんぱく質(HP)」と名付け、研究を続けてきた。

その結果、シマリスが冬眠に入る前に血液中のHP濃度が低下する一方で、脳内の濃度は上昇することが分かった。HPが脳内に入ると、その構造が変わり、活性化することも突き止めた。

HPを働かなくしたシマリスは、冬眠しなかったり、冬眠期間が短くなることも確認した。近藤さんらはこれらから、HPが脳内で冬眠を制御していると結論付けた。

シマリスは、大きさはほぼ同じだが、冬眠をしないラットよりも4〜5倍長寿なことが知られている。近藤さんは「HPが冬眠動物の長寿にかかわっている可能性が高い。HPを利用すれば、冬眠をしないほ乳類でも、冬眠中と同じ生体保護状態を作ることができるのではないか」と話している。【須田桃子】(毎日新聞 2006年4月7日) 

 
 
冬眠する動物とは?

 
恒温動物のうち、リスヤマネコウモリなどは、寒冷期になると体温が維持できずに低下してしまい、土中の穴や木の洞(うろ)の中などにはいり、ほとんど動きをとめて春をまつ。

陸生の変温動物(節足動物・陸生貝類・両生類爬虫類など)では、体温が気温とともに低下し、体内の代謝も低下して活動に必要なエネルギーがえられなくなることによっておこる。魚類ではウナギやドジョウなどが、生活活動を停止して泥にもぐって冬眠するほか、深みに移動してじっとしてすごすものが多い。

鳥類の多くは長い冬眠にははいれない。そのため温暖な土地へと移動する(渡り)。

 
冬眠の種類は?
 
カエル型冬眠

カエルやヘビといった両生類や爬虫類は、変温動物なので、まわりの気温の低下とともに体温がさがり、体をうごかすことができなくなる。そのため、冬の間は土中や岩陰などの温度があまり低下しない場所に移動する。これは体温調節をともなう真の冬眠というよりも、一種の麻痺状態にはいるといってもいい

昆虫も冬の間を、卵や幼虫、、ときには成虫の状態で活動を休止する越冬状態となる。中には一種の不凍剤として、グリセリンなどの有機化合物を細胞内に蓄積して、氷点以下の気温に耐えられるようにしているものもいる。

これらの動物は、まわりの温度の上昇とともに体温もあがり、ふたたび活動を開始する。こうした冬眠をカエル型冬眠という。


コウモリ型冬眠

コウモリやリス、ヤマネなどは恒温動物だが、まわりの気温の低下により、体温調節機能がおとろえるために冬眠する。寒さがきびしかったり排泄のために覚醒することがあるが、冬眠中は体にたくわえた脂肪を消費しながら、体温や呼吸数、心拍数をさげてエネルギーを節約するので、食物をとることはない。

これらの動物は冬眠からさめるのも急速で、刺激をあたえると体温が上昇し、活動を開始する。こうした冬眠をコウモリ型冬眠といい、哺乳類の冬眠の中ではもっとも多数派である。

 
クマ型冬眠

哺乳類の中にはヒグマツキノワグマのように、冬の間は深い眠りにはいり、いくらか低めの代謝率をたもちながらすごすものがいる。ヒグマは体にたくわえた脂肪を消費し、冬眠中は食物をとらないし、排泄(はいせつ)もしない。この間のヒグマは腸がふさがり、尿は体内へ再吸収される。またメスは冬の間に1〜3頭の子をうむことさえある。

ただしクマ型冬眠は、睡眠しながらの冬ごもりであって、休眠現象ではない。

 
シマリス型冬眠

シマリスの冬眠は変型で、体温や呼吸数を低下させる冬眠をするが、体に脂肪をたくわえていない。そのかわり冬眠にはいる前に地下の巣穴に食物をたくわえ、ときどき目ざめては、それを食べてすごす。糞(ふん)や尿などの排泄もその際におこなう。

 
 
冬眠の仕組みは?
 
シマリス型冬眠の場合、冬眠に入る前に血液中の冬眠特異的タンパク質である「HP」濃度が低下する一方で、脳内の濃度は上昇することが分かった。HPが脳内に入ると、その構造が変わり、活性化することも突き止めた。
 

 

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