
アメリカで米食品医薬品局(FDA)がクローンでつくられた牛の肉を食肉用として安全性を認めている。90日間の調整期間をおいて販売を許可するようだ。
しかし、表示の義務づけがなく消費者団体などが反発している。以前Yahooで、「クローン牛は食べるか?」というアンケートを行ったところ、8000人中83%が食べないと答えている。(2006.10.25実施)
消費者としては不安があるのが当然だ。実際クローンの染色体はテロメアという部分が短く、そのため短命になるという問題がある。FDAによると肉質に以上はないということだが、肉の細胞にも染色体はある。他に異常が見つかる可能性もある。
今日はクローン牛と、クローンをめぐる問題について調べる。
(参考HP Wikipedia)
和歌山県畜産試験場 クローン牛 生まれたばかりのクローン牛
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世界初、クローン動物食品認可へ…米が安全報告書案
米食品医薬品局(FDA)は28日、体細胞クローン技術で生み出した牛、豚、ヤギの肉とミルクについて、「通常の肉などと違いはなく、食品として安全だ」とする報告書案を発表した。
一般の意見を90日間受け付けた後、報告書を正式にまとめ、食品としての販売を世界で初めて認可する。
しかし、表示の義務づけなどをめぐって消費者団体などが反発しており、今後、曲折が予想される。
クローン動物の食品化について、FDAは2003年に「ほとんど危険はない」との報告書を出したが、さらに安全性を確認するまでの措置として、業界には食品化の自粛を要請した。クローンやその子孫に関するデータを集め、分析を続けてきた。
今回、「通常の肉などと違いはない」と結論を出したことで、FDAは製品に「クローン」との表示も義務づけない意向。ただ、「クローン不使用」と言った表示は、条件付きで認められる可能性があるものの、消費者からの反発に加え、食品業界にも消費者の肉・乳製品離れを懸念する声がある。
認可されれば、日本など海外へも輸出される可能性があるという。
農林水産省によると、今年3月末までに体細胞クローン技術で495頭の牛が日本国内で誕生しているが、安全性に対する消費者の懸念が強く、出荷は自粛している。
農水省系の研究機関が、肉質や乳についてはほぼ安全との結論を出しており、現在、子孫への影響がないか調べている。安全性が確認できれば、農水省と厚生労働省が、食品安全委員会に諮問し、出荷の承認を求める。(2006年12月29日 読売新聞)
クローンとは何か?
クローンは、同一の遺伝情報を持つ個体または細胞の集団をいう。
動物については、動物の体細胞(普通の細胞)の核を受精卵の核と交換する方法などで行われる。1996年にキャンベルらによって体細胞クローンから、ヒツジのクローン(ドリー、2003年 2月14日死亡)が作られ注目を集めた。
クローンの利点
希少動物を他の動物に生ませて繁殖させることへの応用が期待される。また、最高品質の家畜をつくりだす画期的な育種法として、あるいは人間の病気の治療薬を低コストで製造する方法としても考えられている。動物の遺伝子を変化させることで、移植用の臓器をえることもできる。
クローンの問題点
2006年現在、ほぼすべての動物のクローン体には何らかの欠陥(エラー)が報告されており、この技術を人間に適用するのは、倫理的な問題以前に技術的な問題があるとされている。たとえば、細胞の分裂に必要なテロメアの長さが短いことがわかってきている。そのため、クローン体は通常より寿命が短い可能性がある。
ヒト・クローンをめぐる問題
クローン技術が人類の進歩に役だつことは確かだが、同時に「生命を意図的に操作する」側面があることも多くの研究者が指摘している。1998年1月にはアメリカ合衆国大統領クリントンは、連邦議会にクローン技術によるヒトづくりの実験を今後5年間禁止する法案を成立させるようよびかけた。
また欧州議会は、同年1月に初のヒト・クローンに関する国際条約「人権と生物医学に関する協定」に調印した。現在、アメリカ合衆国、フランス、ドイツ、イギリス、中国など、各国ともヒト・クローンの作製を法律などで禁じている。
しかし、イギリスはヒト・クローン胚をつくり、そこからES細胞をつくることをみとめている。ヒト・クローン胚は核をのぞいた卵に体細胞の核を移植してつくられ、子宮にもどせばヒト・クローン誕生につながることから、その作製は倫理的に危険視されている。
2001年11月、アメリカ合衆国のバイオ企業がヒト・クローン胚の作製に成功したと発表した。ヒト・クローン胚をつくったのは、さまざまな組織になりうるES細胞をつくり、拒絶反応のない移植用の臓器をつくるためだという。
この発表について、ブッシュ大統領は「胚はすでに人の生命」という立場からきびしく批判し、ヒトの胚の研究や操作に反対している。しかし、アメリカ合衆国は大統領令でヒト・クローン作製を禁じているが、ヒト・クローン胚の作製禁止についての法案はいまだ成立していない。
日本でヒト・クローンはどうなっているか?
日本では、2001年6月に施行された「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」(通称、クローン技術規制法)でヒト・クローンの作製を禁じている。違反者は10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または両方の刑に処せられる。
さらに、同年12月、クローン技術規制法にもとづく「特定胚の取扱いに関する指針」が施行され、ヒト・クローン胚などの作製は当面禁止されることになった。禁止にしたのは、いまだ倫理面での議論がつくされていないためであるという。
もうすでにヒト・クローンは誕生?
しかし、2002年末から03年初めにかけて、新興宗教団体ラエリアンの関連会社がクローン人間を誕生させたと発表した。科学的な根拠は一切しめされておらず、真偽はわからないままだが、世界各国が批判している。今後ますますバイオエシックス(生命倫理)の重要性が討議されることになるだろう。
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