
メニエール病という耳の病気がある。「難聴」や「めまい」をともなう症状で、1800年代「めまい」というと脳の病気と考えられていた時代に、フランス人医師 プロスパー メニエールが初めて「内耳」の病気であることを提唱した。これにちなんで、内耳性のめまいのある種の病気をメニエール病という。
何らかの原因で内耳の中に水腫ができ聴神経を圧迫し、めまい、耳鳴り、難聴などを引き起こす。そのうち神経細胞のうち繊維細胞や有毛細胞が死ぬと聴覚を失う。今まで有効な治療法もなく難病といわれた。
ところが今回、厚生労働省研究班がラットの幹細胞を内耳に移植すると死んだ繊維細胞が再生、聴力が回復したという。ただし有毛細胞が死んだ場合は回復しなかった。
幹細胞というといくつかの細胞に分化する能力のある細胞のことをいう。ES細胞はもっとも多くの細胞に分化できる幹細胞で胚性幹細胞とよばれている。最近注目を浴びている再生医療の中心にある細胞だ。
今日は「メニエール病」「幹細胞」、「耳のしくみ」について調べる。(参考HP Wikipedia)
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聴力回復実験に成功、メニエール病治療に道…厚労省チーム
様々な細胞に分化する幹細胞を難聴のラットの内耳に移植し、聴力を回復することに、厚生労働省研究班(主任研究者=松永達雄・国立病院機構東京医療センター室長)が成功した。
難聴や激しいめまいがおこるメニエール病の治療法の開発に道を開くもので、米病理学誌最新号で報告した。
音を脳神経に伝える内耳には、音を電気信号に変えるのに必要な細胞(線維細胞)と信号をセンサーのように感知する細胞(有毛細胞)がある。
難聴は、こうした細胞が何らかの原因で死んでしまって起こる。しかし、センサー役の有毛細胞に幹細胞を移植しても、聴力は回復しなかった。
松永室長らは、有毛細胞が生きていて、線維細胞だけが死んでいる難聴に着目。線維細胞を人工的に死滅させたラットの内耳に、骨髄から採取した幹細胞を移植し、聴力が回復するか試した。
その結果、半数のラットで幹細胞が生着し、線維細胞と同じたんぱく質を作ることを確認。2週間後、聴力を比較したところ、何もしない7匹のラットの聴力の自然回復は平均37%だったのに対し、幹細胞が生着したラット6匹は平均60%まで向上した。
線維細胞の障害や異常は、健康な人の聴力が突然落ちる「突発性難聴」や、メニエール病に関係していると指摘される。松永室長は「慢性化した難聴でも、音を感じる細胞や神経が生きていれば、幹細胞の移植で聴力が回復するかもしれない」と話している。(2007年6月28日3時9分 読売新聞)
メニエール病とは?
メニエール病(メニエールびょう)は、一般的にめまいと相まって、耳の聞こえにくい状態と耳鳴りが重なる症状のものを言う。
フランスの医師、プロスパー メニエールが、それまでめまいの原因といえば脳卒中といわれていた時代に、めまいが内耳からおきることを初めて提唱しました。それにちなんで、内耳性めまいのある種のものをメニエール病といっています。
フランス人の医者でプロスペル・メニエールが初めて提唱したのでこの名前がついている。「メニエル病」「メヌエル病」「メニエル氏病」とも。
原因
耳の内耳は、骨と膜の二重構造になっていて、膜の内側はリンパ液(内リンパ液)で満たされています。ところが、この内リンパ液の調整がなんらかの原因でうまくいかなくなって過剰になると、内リンパ水腫をつくり、これが神経を圧迫し、めまい、耳鳴り、難聴などのさまざまな症状が現れます。これがメニエール病です。
症状
内耳の中には、音を感じる蝸牛や回転運動を感知する三半規管、直線加速度や位置感を感じる耳石など、さまざまな器官があり、それぞれがリンパ液でつながってい
るため、多様な症状が現れます。
突然、周囲がぐるぐると回転するような激しいめまいに襲われ、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。初期は、めまいの発作時に耳の閉塞感や圧迫感など、耳が詰まったような感じを受けますが、めまいを繰り返すうちに耳鳴りや難聴を伴うようになり、しだいに発作時以外にも症状が残るようになります。
耳 (みみ) のしくみは?
動物の器官の一つで、聴覚を司る主要な感覚器。
音波を受容し、それを神経に伝える構造をもつのが耳である。脊椎動物 は全て耳をもっており、耳介や外耳道で音を拾い集め、振動する鼓膜の信号を神経パルスに変換して、蝸牛神経を通して大脳の聴覚中枢へと送る。
蝸牛には無数の蝸牛神経節(らせん神経節)がらせん状に並んでいる。これらはコルチ器が音を感知して発した信号を集める部分であって、それぞれが内耳神経の蝸牛根と呼ばれる線維束を出している。
蝸牛根は内耳道の中で一本にまとまって蝸牛神経となる。蝸牛神経は橋と延髄の境目あたりにある蝸牛神経核で中継される。節後線維は交叉して対側の外側毛帯となり、中脳の下丘を通って大脳皮質に向かう。
半規管の膨大部と卵形嚢斑、球形嚢斑は体の傾きや回転を感知する。これらの場所から出た線維は前庭神経節に集まり、前庭神経となって蝸牛神経とともに内耳道を通り、脳幹に入る。
内耳神経という名前は前庭神経と蝸牛神経が合流して内耳道を通る部分を指す。
幹細胞とは何か?
幹細胞(かんさいぼう)は細胞分裂を経ても、同じ分化能を維持する細胞のこと。発生における細胞系譜の幹 (stem) になることから名付けられた。
通常は幹細胞から生じた二つの娘細胞のうち、一方は別の種類の細胞に分化するが、他方は再び同じ分化能を維持する。この点で他の細胞と異なっており、発生の過程や、組織・器官の維持において細胞を供給する役割をになっている。
幹細胞では分化を誘導する遺伝子の発現を抑制する機構が働いており、これは外部からのシグナルやクロマチンの構造変換などによって行われる。
普通の体細胞はテロメラーゼを欠いているため、細胞分裂の度にテロメアが短くなるが、幹細胞ではテロメラーゼが発現しているため、テロメアの長さが維持される。
これは分裂を繰り返す幹細胞に必要な機能である。幹細胞の性質が維持できなくなると、新たな細胞が供給されなくなり、早老症や不妊などの原因となる。
幹細胞の例
受精卵からつくられる胚性幹細胞(ES細胞)は全ての種類の細胞に分化する事ができる(全能性)。
また、生体内の各組織にも成体幹細胞(組織幹細胞、体性幹細胞)と呼ばれる種々の幹細胞があり、通常は分化することができる細胞の種類が限定されている。
例えば、骨髄中の造血幹細胞は血球のもととなり、神経幹細胞は神経細胞へと分化する。このほかにも、肝臓をつくる肝幹細胞、皮膚組織になる皮膚幹細胞、また生殖細胞をつくり出す生殖幹細胞などさまざまな種類があり、医療分野への応用を目指して再生医学で盛んに研究が行われている。
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