
この度マウスの「単為発生」に成功したという。「いよいよ哺乳類もメスだけでなかまを増やす可能性が出てきた。」と思ったが、他のセキツイ動物と違って自然発生的にメスが子を生んだ「単為生殖」ではなく、人為的に卵を操作して「単為発生」させたものである。
「単為生殖」という言葉と「単為発生」という言葉は意味はどう違うのだろう?
東京農業大の河野友宏教授(動物発生工学)らはマウスの卵だけを使って子マウスを誕生させることに成功した。
その方法は、マウス胎仔の発育に関連するH19遺伝子から13-kilobaseを削除する、という遺伝子改変を行った特別のマウスから未成熟な卵母細胞を採取して培養し、その核を取り出して別のマウスの卵子に移植し、化学物質で刺激を加え受精卵の様に分裂させて母胎に戻す、という操作を行って誕生させたものだそうだ。
今回の実験は、体細胞の核を卵細胞に移植する「クローン」とも似ているが、決定的に違うのは使ったのは同一のマウスではなく別のマウスの卵を使っていることで、「クローン」とは違う。
遺伝子工学と「単為発生」技術による、すばらしい成果であるが、哺乳類でも自然界で自然発生的に「単為発生」する可能性はある。
また、この技術で人に応用した場合、「単為発生」する可能性が出てきた。倫理的な問題があるので「人への応用は考えていない」と言っているが、あらゆる可能性を考えるのが科学者である。この方法で例えば不妊者に子が授かる可能性がある。
今日は「単為生殖」「単為発生」「クローン」の定義について確認する。(参考HP Wikipedia)
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卵子だけの子マウス誕生、成功率4割達成…東京農大教授ら
精子なしで卵子だけを使って、40%以上の高い確率で子マウスを誕生させることに、東京農業大の河野友宏教授(動物発生工学)らが世界で初めて成功し、20日の米科学誌「ネイチャーバイオテクノロジー」電子版に発表する。
生殖に雄が要らない「単為発生」と呼ばれる技術で、雌雄を決定する精子がかかわらないため、雌のマウスしか誕生しない。河野教授らは2004年に、哺乳(ほにゅう)類では世界初となる単為発生マウス「かぐや」を誕生させたと公表している。
遺伝子改変を伴うため、ただちに人間には応用できない。だが、マウスの体外受精に匹敵する高い確率で子マウスを誕生させたことで、男性なしでも人類が子孫を残していける可能性がより現実味を増し、生命倫理での議論を呼びそうだ。
河野教授らは、精子と卵子が作られる過程で発生の際に機能を果たすよう、それぞれの遺伝子に付けられる特有の目印に着目した。遺伝子の2か所について、精子特有の目印があるのと同じ状態に改変した雌マウスを作製。
さらに、卵子特有の目印が付かないよう、未熟な卵子(卵母細胞)の段階でこの雌マウスから取り出して、卵子になるまで体外で成熟させた。この卵子の核を精子の代わりに、別の雌マウスの普通の卵子に移植して分裂が始まった胚(はい)を、子宮に戻したところ、40%以上の確率でマウスが誕生。子宮に戻した胚の約30%は大人に育ち、出産し繁殖能力もあった。
河野教授は「今回の方法を使えば、ほぼ確実に単為発生マウスを誕生させることができるだろう。人間への応用は全く考えていない」と話している。
(2007年8月20日2時0分 読売新聞)
単為生殖とは何か?
単為生殖とは、一般にはメスが単独で子を作ることを指す。正確に言えば、本来は受精によって新しい個体を生ずるはずの生殖細胞が、受精を経ることなく新しい個体を形成することである。
卵は、精子が入って受精が行われることで発生が始まり、新たな個体へと成長する。ところが、卵が受精を経ずに発生を始める例があり、このようなものを単為生殖と呼ぶ。
この卵の例のように、新個体の形成に発生の過程が入ることに注目すると、単為発生という言葉も使われる。
植物でも受粉せずに種子が生じる場合があり、単為生殖と呼ぶ。他に、雌雄の分化が起こっていない生殖細胞の間に、接合胞子を形成するものの場合にも、単独で接合胞子(Zygospore)を形成する例があり、その場合には単為生殖と呼べる。
単為発生とは何か?
卵子が精子なしに、個体(一つの生物)を発生させる生殖法。単為生殖とほとんど同じ意味であるが、単為生殖で新個体の形成に発生の過程が入ることに注目した表現方法である。
単為生殖・単為発生する動物にはどんな生物がいるだろうか?
自然界では、魚類(ギンブナ、シュモクザメ)、ハ虫類(コモドドラゴン)、両生類、鳥類(七面鳥)、昆虫(アリ、ミツバチ)などでみられる。
アリやミツバチは、単為発生でオスを、受精でメスを産み分けている。一方、セキツイ動物のうち哺乳類には、自然に単為発生する種は見つかっていない。
クローンとは何か?
クローンは、同一の遺伝情報を持つ個体または細胞の集団をいう。 もとはギリシア語で植物の挿し木を意味する。1903年、ウェッバー (H. J. Webber) が、栄養生殖によって増殖した個体集団を指す生物学用語として定義した。
動物については、動物の体細胞(普通の細胞)の核を受精卵の核と交換する方法などで行われる。1996年にキャンベルらによって体細胞クローンから、ヒツジのクローン(ドリー、2003年 2月14日死亡)が作られた。現在、ウシやブタなど幅広くクローン動物がつくられている。
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生殖細胞の発生と性分化 岡田 益吉,中辻 憲夫,長浜 嘉孝 共立出版 このアイテムの詳細を見る |
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