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ブドウ糖とオリーブオイルに豊富に含まれるオレイン酸を合成し、両親媒性分子にすると、あら不思議水中で自発的に集合して、中空繊維状の有機ナノチューブになる。

1984年ごろ、発見された有機ナノチューブはまるで生き物のようにひとりでに集まってできる。宇宙のどこかで誕生した最初の生命体も、こんなふうに自然に集まって細胞を形成したのであろうか?詳細な形成メカニズムは不明な点が多い。

両親媒性分子とは、水に溶けやすい部分(親水部)と水に溶けにくい部分(疎水部)を一つの分子中に同時に持っている分子を意味する。石けんがその例である。

石けん分子が油汚れに出会うと、その疎水部を油滴に突き刺さるようにし、親水部を外側に向けて球状の集合体を形成し、油滴全体を取り囲む。こうして、油滴を水中で溶かすことができるので、汚れを洗い流すことができる。

このたび、独立行政法人・産業技術総合研究所は有機ナノチューブに蛍光分子を加えて、赤、オレンジ、黄、青の蛍光有機ナノチューブをつくることに成功した。

抗がん剤を運ぶ素材として使えば、患部だけに必要な量の薬剤を送っているかを観察できるという。

今日は蛍光有機ナノチューブについて調べる。(参考HP 産業総研・アイラブサイエンス2006年7月31日) 


関連するニュース
有機ナノチューブ:4色に発光…産総研が作製


赤、オレンジ、黄、青の4色に光る有機ナノチューブ(ナノは10億分の1)を作製したと、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)が18日、発表した。抗がん剤を運ぶ素材として使えば、患部だけに必要な量の薬剤を送っているかを観察できると期待される。

抗がん剤は毒性が強く正常細胞にも影響し副作用が大きいため、がん細胞だけに薬剤を運ぶ研究が進められている。リポソームという球状のカプセルで研究が進んでいるが、発光させるには多額の費用や手間がかかった。

研究チームは、産総研が06年度に開発した有機ナノチューブの大量合成法の工程で蛍光を発する分子を加えた。その結果、蛍光分子がナノチューブを構成する分子の中に取り込まれ、薬剤などを入れる中空構造を保ったまま発光することが分かった。費用もリポソームの5万〜1万分の1程度と大幅削減できた。

界面ナノアーキテクトニクス研究センターの浅川真澄主任研究員は「安くて簡単な作製方法を見つけた。事業化を進めるための共同開発企業を求めていく」と話している。(毎日新聞 2007年9月19日)

有機ナノチューブとは?


産総研で2006年に開発された有機ナノチューブは、実用化を目標に「オーガニックナノチューブAIST」の名称で商標登録している。ブドウ糖とオリーブオイルに豊富に含まれるオレイン酸を原料に合成された両親媒性分子が、水中で自発的に集合して、チューブ状構造体を形成している材料である。

両親媒性分子はその親水部を外側に向けた円筒状の二分子膜構造を形成し、外壁・内壁ともに親水性であり、サイズは、平均内径が90 nm(ナノメートル: 10億分の1メートル)、平均外径300 nm、長さ10〜100 µm(マイクロメートル: 百万分の1メートル)である。

両親媒性分子とは?
両親媒性分子とは、水に溶けやすい部分(親水部)と水に溶けにくい部分(疎水部)を一つの分子中に同時に持っている分子を意味する。

高級脂肪酸の塩である石けん分子は典型的な両親媒性分子である。石けん水に油滴を入れよく振ると、石鹸分子がその疎水部を油滴に突き刺さるように、かつ親水部を外側に向けて球状の集合体を形成し、油滴全体を取り囲む。こうして、油滴を水中で溶かすことができるので、汚れを洗い流すことができる。

カーボンナノチューブとの違いは?


カーボンナノチューブは炭素だけでできている。有機ナノチューブは、リン脂質、糖脂質、ペプチド脂質など両親媒性物質を材料としてできている。

カーボンナノチューブの大きさは1nm。有機ナノチューブは40〜1000nmで大きい。これはカーボンナノチューブは炭素原子の集まりであるのに対し、有機ナノチューブは分子の集まりであるから。

また有機ナノチューブは、水中へよく分散する。化粧品分野、抗菌消臭分野などで非常に多くの実用化例がある。シクロデキストリンでは実施不可能な巨大分子やナノスケール物質の包接、徐放等が期待できる。

有機ナノチューブは何に使われるか?


・ウイルス捕捉用オーガニックナノチューブ
・プリオンなどの有害タンパク質除去用オーガニックナノチューブ
・体内の脂肪成分排出などの健康食品添加材料
・医薬、塗料などの安定化、無害化、徐放用オーガニックナノチューブ
・水中や空気中で不安定なタンパク質や生体物質の安定保存用オーガニックナノチューブ
・核酸や遺伝子などの包接とキャリアー用オーガニックナノチューブ   ・ゲル電気泳動用ナノキャピラリ充填材料としてのオーガニックナノチューブ  
・シリカナノチューブや他の金属酸化物ナノチューブ製造のための有機ナノ鋳型材料
・肥料などの遅効性安定化材料

 

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