DNAを調べれば犯人がわかるというDNA鑑定、DNAを調べれば生き別れていた身内を捜すこともできる。血縁関係があれば、DNAも似た構造を持っているからだ。

 しかし、DNAは指紋のようなもので、まったく同じ人は存在しない。人のクローンは認められていないので、一人一人のDNAは違った個性を持っている。

 ところで、私たち人間の細胞には、自分の個性とはまったく関係ないもう一つのDNAが存在する...というと驚くだろうか。

 私たち人間だけでなく、すべての動物や植物に、その生物のDNA以外にまったく別のDNAがあるという。それは何だろう?

 正解はミトコンドリアや葉緑体にあるDNAである。これを細胞内共生という。

 生物は自分のDNAを含む染色体のほかに独立した小さなDNAを持っている。その例が呼吸をする生物が持っているミトコンドリアと呼ばれる器官である。

 ミトコンドリアは、呼吸からエネルギーを得る器官だ。このミトコンドリアの働きを担う機能の遺伝子は染色体ではなく、なんとミトコンドリア自身の持っているDNAにしまわれている。

 また、植物は太陽の光から自分の体を作る「光合成」という反応をする。これは葉緑体と呼ばれる器官をもつからである。葉緑体の機能の遺伝子もまた、葉緑体の中のDNAの中にしまわれている。

 このミトコンドリアと葉緑体が染色体以外のDNA分子の主なものだが、この他にもいろいろな生物が(染色体に比べれば)とても小さなDNA分子を細胞内に持っている。

 それがプラスミドと呼ばれる存在である。ミトコンドリアや葉緑体はその中にDNAを持つ、またウイルスやファージも殻の中にDNAを持つ。ところがプラスミドは細胞の中をDNAだけで生活する。どうしてそんなことができるのだろうか?

 今日は細胞の中にひっそり生活するもう一つのDNA「プラスミド」について調べる。(参考HP: 培養.jp・協和発酵BioWorld)


 プラスミドとは何か?

 大腸菌などの細菌のなかには染色体とは独立して複製される小型の環状DNAをもつものがあり、これが染色体外遺伝子、あるいはプラスミドと呼ばれるもの。

 生物は、細胞に明確な核を持つもの(真核生物)と持たないもの(原核生物)とに分けられ、細菌(bacteria)は後者に属す。遺伝子の本体であるDNAは真核生物では複数の染色体として存在しているのに対し、原核生物では一個の環状の染色体となっている。大腸菌などの細菌のなかには染色体とは独立して複製される小型の環状DNAをもつものがあり、これが染色体外遺伝子、あるいはプラスミドと呼ばれるものである。

 プラスミドのいくつかは細菌から細菌へと伝達され、染色体とは独立して特定の遺伝形質(薬剤抵抗性など)を伝達する。

 細菌は有性生殖を行わず単なる複製によって増幅するため、ある細胞の子孫はすべて親と全く同じ遺伝子を持つことになり、これをクローンと呼ぶ。

 しかしながら細菌は他の細菌よりプラスミドを伝達されることによって、親にはない遺伝子を得て周囲の環境の変化に対応することができる。プラスミドによって伝達される遺伝子としては、稔性(性別のようなもの)を担う遺伝子、薬物に対する耐性遺伝子などがある。

 このような役割をもつプラスミドは染色体よりも小型であり、しかも細菌が分裂増殖するとともに安定に増幅、分配されるため実験で扱いやすく、遺伝子組換え実験において菌体内(このときの菌を宿主菌と呼びます)で別の生物種に由来する遺伝子を増幅したり発現させたりするための担体(ベクター)として用いられている。(培養.jpより記事引用)


 プラスミドによる遺伝子組換え技術の誕生

 スタンフォード大学のスタンレー・N・コーエン教授は、「プラスミド」の専門家。プラスミドとは、遺伝を担うDNAだが、染色体の外に存在する。このプラスミドDNAは、環状、つまり輪の形をしており、通常の細胞が生存するには、必ずしも必要のない遺伝子がのっている。そして、ひとつのプラスミドは、細胞の増殖とともに一緒に増えていくという性質を持っている。

 コーエンは、このプラスミドを細菌から取り出したり、元へ戻したりする技術をそのときすでに確立していた。「EcoRI」という制限酵素の存在を知ったコーエンは、この酵素で、細菌から取り出したプラスミドを切り、付着末端をつくり、さらに複製したいDNA断片もEcoRIで切り、付着末端をつくれば、この両者を連結することができると考え。これを細菌の内部に戻せば、細菌の増殖とともに、DNA断片は無尽蔵につくれる。

 コーエンが協力を依頼すると、「EcoRI」制限酵素の発見者である、ボイヤーは快諾し、プラスミドとEcoRIの連係プレーが実現した。そして、コーエンの見込みは見事に的中し、増やしたいDNA断片は、プラスミドとともにどんどん増殖していった。ポール・バーグが、遺伝子組換え技術を確立した翌年の1973年のこと。(協和発酵BioWorldより記事引用)


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