世界結核デー

 3月24日は何の日か?

 正解は「世界結核デー」である。この日は、『近代細菌学の開祖』と称されるロベルトコッホが結核菌を発見した日である。

 彼はドイツの医者であった。1874年頃、ヨーロッパの農民たちを悩ませていた病気に炭疽(たんそ)病があった。彼は妻からプレゼントされた顕微鏡で病気のヒツジやウシの血液を調べると、健康なヒツジやウシの血液中には無い小さい棒状をした炭疽菌を発見した。

 彼はこの微生物の純粋培養を試み、増やすことに成功した。そして、炭疽病が細菌によることを証明した 「炭疽病の原因」 という論文を著し、一躍世界の注目を浴びることになる。炭疽菌は、世界で初めて病気の原因が確認された細菌となったのである。

 1882年、さらに目に見えない病原菌の研究を続けていた彼は、当時世界で最もおそれられていた結核の病原菌を発見した。それは、当時のヨーロッパで病死する人の7分の1をしめるという、恐ろしい病気である。世界結核デーは、彼が結核菌の発見を発表した3月24日を記念している。

 1883年にインドで発生したコレラが、南ヨーロッパを襲ったときに、彼はインドへ向かい、コレラ菌を発見した。

 1905年、これらの業績に対して、ノーベル生理学医学賞を受けた。

 結核菌とは何か?

 天然痘はソマリアで発生した1人の患者を最後として、1977年に地球から根絶された。天然痘には、種痘という強力な予防ワクチンがあり、生命に関係する恐ろしい病気だったため、住民の協力的な意識も根絶に向かった大きな要因であった。

 結核も細菌による感染症で、ストレプトマイシンなど良く効く薬もたくさんある。天然痘と同様に、結核もそのうち根絶するだろうと考えている人も多いだろう。

 しかし、平成11年(1999年)、厚生省は結核に対し、「結核緊急事態宣言」を出した。平成9年には、これまで減少を続けてきた新規発生結核患者数が38年ぶりに、増加に転じたからであった。

 実は結核は過去の病気ではない。現在も国内最大の感染症である。なぜ結核は未だに根絶できないのだろう?
 次の3つの違いがその主な理由である。第1に,結核の予防ワクチンBCGは、発病をほぼ完全に防ぐ天然痘のワクチン(種痘)と違い、それほど強力ではない。

 第2に,天然痘は発病すれば誰にでもすぐに分かるので隔離など感染防止策をとることができるが、結核は発病しても、医者が診てもすぐに結核だとはわからない。周りの人を感染させることが多い。

 そして第3に、結核は一度感染すると1、2年無事だった人でも5年後、10年後、時にはもっとずっと後になって発病することもある。

 このような違いのために、結核は天然痘と同じ方法では根絶できない。

 結核の恐ろしい症状とは?

 主な症状は、微熱、疲労感、せき、たん、寝汗、食欲不振など風邪様症状。

 結核菌は人の細胞内寄生を行い、免疫システムはこれを宿主細胞もろともに攻撃するため、広範に組織が破壊される。具体的には、感染するとはじめは炎症がおこり、やがて化膿して組織が死んで腐ったような状態になる。その死んだところがドロドロにとけて、穴があいたような状態ができる。ひどくなると組織全体が破壊されて、呼吸困難など肺機能不全により命の危険にさらされる。

 空気感染が多く肺などの呼吸器官においての発症が目立つが、中枢神経(髄膜炎)、リンパ組織、血流(粟粒結核)、泌尿生殖器、骨、関節などにも感染し、発症する器官も全身に及ぶ。

 風邪がいつまでたっても治らない、咳が2週間以上続く、身体がだるくってなかなか疲れがとれない、食欲がなくなってきたなどの症状がでてきたら、早めに医師の診察を受けよう。

 結核の予防は?

 予防策として日本ではBCGが行われている。まずツベルクリン反応検査を行い、陰性反応が出た者のみにBCG接種を行う形だったが、2005年4月1日より結核予防法の改定により、ツベルクリン反応検査を行わずに全員にBCG接種を行う形になった。

 ストレプトマイシンなどの結核菌に効果のある抗生物質が発見されている。化学式はC21H29O12 N7である。放線菌の一種 Streptomyces griseus に由来する。ストレプトマイシンはタンパク質合成を阻害することによりバクテリアの成長や代謝を停止させる。具体的には、バクテリアのリボソーム上の 23S rRNA に結合し、代謝を担うあらゆるタンパク質の合成、つまりリボソーム上でのポリペプチド鎖の合成の開始を阻害する。

 ロベルト・コッホとは?

 ロベルト・コッホ(Heinrich Hermann Robert Koch、1843年12月11日 - 1910年5月27日)は、ドイツ クラウシュタール生まれの医師、細菌学者。 ゲッティンゲン大学を卒業。

 炭疽菌、結核菌、コレラ菌の発見者であり、ルイ・パスツールとならんで『近代細菌学の開祖』と称される。

 純粋培養や染色の方法を改善し、細菌培養法の基礎を確立した。寒天培地やペトリ皿(シャーレ)は彼の研究室で発明され、その後今日に至るまで使い続けられている。

 また感染症の病原体を証明するための基本指針となるコッホの4原則を提唱し、感染症研究の開祖として医学の発展に貢献した。

 1876年、炭疽菌の純粋培養に成功し、炭疽の病原体であることを証明した。このことによって細菌が動物の病原体であることを証明し、その証明指針であるコッホの原則を提唱した。
 1882年3月24日、結核菌を発見した。ヒトにおいて炭疽菌と同様に病原性の証明を行って、論文『結核の病因論』を著わし、ヒトにおいても細菌が病原体であることを証明した。(後にこれを記念して、3月24日は世界結核デーと制定された。)
 1883年、インドにおいて、コレラ菌を発見。
 1890年、結核菌の培養上清からツベルクリン(結核菌ワクチン)を創製。当初は治療用に使用することが目的だったが、効果がなかったため、現在では診断用のみに用いられている。
 1905年、「結核に関する研究」の業績によりノーベル生理学・医学賞を受賞。
 ベルリン大学で教鞭をとり、彼の弟子として、腸チフス菌を発見したG・ガフキー、ジフテリア菌の分離に成功したフリードリッヒ・レフラー、血清療法の研究により1901年ノーベル生理学・医学賞を受賞したエミール・ベーリング、 化学療法の研究により1908年ノーベル生理学・医学賞を受賞したP・エールリヒ、 破傷風菌を純粋培養し、ペスト菌を発見した北里柴三郎などを輩出した。(出典:Wikipedia)
 

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