甲状腺とは何か?
「甲状腺」と聞いても、一般の人は聞いたことはあっても、どんな働きをするのかわからないし、それほど興味もわかないだろう。日々の生活の中では、ほとんどの人は他の事で忙しいからである。
しかし、ひとたび甲状腺が正常に働かないと大変なことになる。甲状腺が正常に働かないために起きる、バセドウ病やクレチン症の患者やそれを治そうとする医者の間では最大の関心事となる。
甲状腺の研究で1909年ノーベル生理学・医学賞を受賞した、スイスの外科医コッハーもそうした医者の一人であった。

甲状腺は首の前方、のどぼとけの骨よりやや下の方にある重さ20-30グラムぐらいの小さな臓器で、大きく右と左に分かれるが、真ん中でくっついており、イメージとしては蝶が羽根を広げて首にとまっているような感じである。
正常な甲状腺は柔らかく、さわってどこにあるかわからない。働きとしては甲状腺ホルモンを分泌すること、および、カルシトニンという別のホルモンを分泌することである。これらの分泌は甲状腺の中の異なる細胞で行われている。
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンの働きを一言でいうと全身の代謝を活発にすることである。もし甲状腺ホルモンが分泌され過ぎると、体を動かさないのに脈が速くなる、熱が上がる、体重が減る。(これはバセドウ病の時の症状)逆に甲状腺ホルモンが足りなくなると、体が動かなる、脈が遅くなる、体温が低下気味になる、精神的に鬱の様な状態になる。(これはクレチン症の症状)
全身のほとんどの細胞が甲状腺ホルモンに反応することが知られている。つまり甲状腺ホルモンは生きていくために必要不可欠なホルモンである。幸いなことに甲状腺ホルモンはかなり長い間血液中に保たれる仕組みがあり、1日単位でホルモンの値が急激に変わるようなことはない。
エーミール・テオドール・コッハー
エーミール・テオドール・コッハー(1841年8月25日-1917年7月27日)はスイスの外科学者。1909年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
スイスのベルンで生まれる。父親は技術者であった。ベルン大学で医学を学び、1863年に卒業。1865年に博士号取得。ベルリン、パリ、ウィーンで外科学を修める。ウィーン大学では内臓外科学の世界第一人者ビルロートに付く。1872年から1911年までベルン大学外科学教授を務める。
コッハーの業績は1870年に発表した肩甲関節の治療に関する論文発表に始まる。同時期に内分泌器官である甲状腺におこる腫瘍について研究を開始。まず解剖から入り、ついで生理、病理にテーマを広げていき、治療法の開発に進んだ。
1876年に最初の全切除に成功、1883年には全切除によってクレチン病の発症に至ることを報告した。
甲状腺は周囲に血管や気管が密集し、これまでは手術が困難とされてきた。甲状腺は右葉と左葉からなる。高さ4〜8cm、幅2〜4cm、厚さ1.5〜2.5cmに広がる。問題なのは、甲状腺が気管をくるみ込むように広がり、食道にも接していることだ。両脇には頸動脈が走り、甲状腺を覆うように胸骨甲状筋や胸骨下骨筋、肩甲下骨筋が縦横に伸びる。
1880年には「閉鎖創傷について」と題した著書を出版した。1882年には「外科手術学」を著す。その後、内反足の原因を究明し、治療法を研究する。急性骨髄炎、銃創の防腐処理、胆道疾患の治療、脳脊髄生理についても探った。舌切除、腰部関節と手首の関節について術式を開発した。
最初のテーマだった肩甲関節の整復術についても研究を続けた。彼の手法は現在でもコッヘル法と呼ばれ、肩関節脱臼の基本的な整復術として多用されている。さらに最初期の人工肛門手術に成功。ここでノーベル生理学・医学賞を受ける。
その後、ジョセフ・リスターの無菌手術法をスイスに導入した。コッハーは甲状腺手術の術式改良を推し進める。1912年には甲状腺だけで5000例に達し、安全な術式の確立に成功する。従来は甲状腺手術の死亡率が18%もあったが、これを0.5%まで下げた。
コッハーは天才肌の外科医ではなかった。手術に要する時間が特に短いということもなく、手先の動きも遅かったという。その代わり、非常に慎重に手術を進めるという評判が高かった。術式の研究とあわせ、外科医が用いる器具の改良にもいそしんだ。鋸歯状になったコッヘル鉗子(単にコッヘルとも呼ばれる)はまさに現代の手術でも多用されている。さらに、ゾンデも開発した。
1967年にはスイスの郵便切手に肖像画が採用されている。(出典:Wikipedia)
甲状腺・甲状腺ホルモンとは?
甲状腺 (thyroid gland) とは、頚部前面に位置する内分泌器官で、甲状腺ホルモン(T3・T4)、カルシトニンなどのホルモンを分泌する。
甲状腺ホルモン (thyroid hormone) には、トリヨードサイロニン(トリヨードチロニン、triiodothyronin、略称T3)とサイロキシン(チロキシン、thyroxin、略称T4)の2種類の化合物が知られており、それらの違いは、ホルモン1分子中のヨードの数である。
生理活性は、T3の方が強いが、血中を循環する甲状腺ホルモンのほとんどはT4である。甲状腺からはT3、T4の他に、カルシトニンと呼ばれる別の生理作用を持つホルモンも分泌されるが、これは甲状腺ホルモンとは呼ばない。
甲状腺ホルモン(T3・T4)は、体の新陳代謝を促すはたらきがあり、他の哺乳類や両生類などの動物も持っている。例えばオタマジャクシの甲状腺ホルモンが不足するとカエルになる事ができない。
人間の新生児では、甲状腺ホルモンが不足すると脳の発育や成長が遅くなり、知能障害や身長が伸びないクレチン症という先天性甲状腺機能低下症の病気を引き起こす原因となる。この時は、速やかに不足している甲状腺ホルモンを補う治療を開始しなければならない。
このように、甲状腺ホルモンは発育や成長に欠かすことができず、また全身(脳、心臓、消化官、骨、筋肉、皮膚、その他)の新陳代謝を活発にする働きがあり、精神神経や身体の活動の調整にも働く。生存に非常に重要なホルモンであるといえる。(出典:Wikipedia)
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