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ノーベル賞の登竜門:ラスカー賞
ラスカー賞とは、正式にはアルバート・ラスカー医学研究賞といい、医学で主要な貢献をした人に与えられる、アメリカ医学会最高の賞である。

ラスカー賞はしばしば「アメリカのノーベル生理学・医学賞」とも呼ばれる。実際、ラスカー賞を受賞した人のうちの68人が、さらにノーベル生理学・医学賞を受賞しているという。

この栄えある賞をバイオファーム研究所所長、遠藤章博士が受賞した。次はノーベル医学・生理学賞かもしれない。日本人として誇りに思うし、次期ノーベル賞が大変楽しみである。

受賞の対象となったのは、コレステロール低下薬「スタチン」の発見である。会見した遠藤博士は「人への効果の道筋をつけるまで山あり谷ありで、途中で断念しようと思った。権威ある賞をいただき、最高の栄誉だ」と語っているように、この「スタチン」の効果が認められるまでには長い年月を要した。

「スタチン」の発見と開発の歴史
スタチン」は心筋梗塞と脳卒中の予防のために、世界で3000万人が使う、「ペニシリン」と並び奇跡の薬と言われている。「スタチン」も「ペニシリン」も青カビから発見された。

1973年、遠藤博士は2年間に6000株の菌類を調べ、青カビ(ペニシリウム・シトリヌム)の培養液からコレステロール合成阻害剤ML-236B(コンパクチン)を発見。コンバクチンは後に薬品名「スタチン」として使用される。
1974年、予想に反してコンパクチンがラットのコレステロールを下げないために、74年初めに開発が中止される。
1976年、遠藤博士はラットに効かない原因を突き止め、同僚の獣医師と共に、コンパクチンが産卵鶏とイヌのコレステロールを劇的に下げることを示す。
1977年春には、ラットに肝毒性があるとして、再度開発中止の危機に直面。
1978年、遠藤博士は、大阪大学医学部の山本章医師と協力して、78年2月、コンパクチン(スタチン1号)による重症患者の治療に踏み切る。同年夏までに最重症の家族性高コレステロール血症ホモ接合体を除く重症患者8名で安全性と劇的なコレステロール低下作用を認め、コンパクチンの再復活を果たす。
1980年夏には発ガン性があるとする誤判断で開発を完全に中止。
1987年、三共を追随してスタチン2号となるロバスタチンを発見した米国のメルク社は、膨大な毒性試験で発ガン性がないことを証明、発売に漕ぎ着ける。その後、三共もプラバスタチン(商品名:メバロチン)など6種のスタチンが商業化される。(出典:Wikipedia)

好きなことを続け、評価を受けること
1973年のスタチンの発見から薬効が認められるまで14年、今回の受賞までは35年。生きていてよかったという感じである。これだけ長い間続けられたのは「好きだから」に違いない。事実、博士は少年時代からカビとキノコに親しんでいたのに加え、大学では我が国が得意とする応用微生物学(例えば醸造学)を学び、留学前の数年間はカビとキノコの酵素を研究していたという。

私が大学時代学んでいたのも、応用生物科学であった。当然、応用微生物学も学んだ。今になって思うと、もう少し真剣に学んでいればよかったな...と思うが、博士のような根気は当時の私にはなかった。今は科学の広い範囲に興味を持ち、サイエンスライターとして毎日、根気強く調べることが日課となっている。

人生において大切だと思うのは、自分の好きな分野をはやく見つけること、そしてそれを、人のために使うことだと思う。博士の経歴を見ると、数々の賞を受賞されている。賞というとくだらないという人もいるが、どんな賞でも受賞すればまわりの多くの人が認めてくれ、協力者も現れる。博士はよい手本を示している。我々も何かで誰かの役に立とう。そしてどんどんコンテストにも応募し、評価を受けてみよう

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ラスカー賞:コレステロール低下薬発見の遠藤章氏ら5人に


医学分野で画期的な成果を上げた研究者に贈られる「ラスカー賞」の受賞者に、遠藤章・東京農工大特別栄誉教授(74)ら5人が選ばれた。米アルバート・アンド・メアリー・ラスカー財団が14日発表した。受賞者のうち75人がノーベル賞を受け、ノーベル賞の登竜門とされる。授賞式は26日にニューヨークで行われる。

コレステロール低下薬「スタチン」の発見で、心臓病の予防と治療に貢献したことが評価された。

遠藤氏は東北大農学部卒業後、製薬企業「三共」(現・第一三共)に入社。約6000種類のカビやキノコの中から、体内でコレステロール合成を阻害する物質を73年に発見した。製薬会社が相次いで治療薬を発売し、世界で約3000万人が服用している。

会見した遠藤氏は「人への効果の道筋をつけるまで山あり谷ありで、途中で断念しようと思った。権威ある賞をいただき、最高の栄誉だ」と語った。

遠藤氏の受賞で、ラスカー賞を受けた日本人は利根川進・米マサチューセッツ工科大教授(87年ノーベル賞受賞)ら5人となった。(毎日新聞 2008年9月14日)

参考HP Wikipedia「遠藤 章」・「ラスカー賞」・「スタチン」
サイエンスポータル”オピニオン”「スタチンから学んだこと
バイオファーム研究所長 遠藤 章 氏(掲載日:2007年10月24日)」
 →
 http://scienceportal.jp/HotTopics/opinion/32.html
 

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