1912年ノーベル化学賞は2つの有機化学研究
2008年のノーベル賞授賞式が12月10日(日本時間11日未明)、スウェーデン・ストックホルムで開かれる。会場のコンサートホールで、高エネルギー加速器研究機構名誉教授の小林誠さん(64)と京都産業大教授の益川敏英さん(68)は物理学賞、米ウッズホール海洋生物学研究所・元上席研究員の下村脩さん(80)は化学賞のメダルと賞状をカール16世グスタフ国王から手渡される。今年は日本人が3人も同時受賞という、うれしい結果になった。

さて、1912年のノーベル化学賞は「有機化学」の分野で2人の受賞となった。一人はフランスの化学者ポール・サバティエと、もう一人は同じくフランスの化学者ヴィクトル・グリニャールである。サバティエの受賞理由は「微細な金属粒子を用いる有機化合物の水素化法の開発」グリニャールの受賞理由は「グリニャール試薬の発見」であった。それぞれの研究内容はどのようなものだろう?
「微細な金属粒子を用いる有機化合物の水素化法」とは?
マーガリンという食品はどうやってつくられるのだろう?オレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸を多く含む液体の植物油に、水素を付加することによって(水素添加)、飽和脂肪酸にすると、植物油は固体になる。こうしてできるのがマーガリンである。
そして、この時触媒として使われるのがニッケルである。金属であるニッケルの粒子が、細かければ細かいほど反応する表面積は大きくなるので、触媒効果が高い。
このような方法でアルケン(不飽和)を含む油を水素化して、固めたものを硬化油という。一般的に脂質は酸化により過酸化脂質となるが、飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸に比べて、酸化を受けにくいために変敗しにくく、保存性に優れるため、保存性の高い油脂として有用である。
一方、水素添加したマーガリンに含まれるトランス脂肪酸が健康被害を与える可能性が指摘されている。水素添加によって作られる通常のマーガリンはトランス脂肪酸を7%前後、ファットスプレッドは5%前後含む。このトランス脂肪酸は心臓疾患や現代病の一因である可能性が指摘されており、欧米ではすでに食品中に含まれるトランス脂肪酸の量を表示することが義務付けられたり、食品中に含まれる量の規制が行われるなどしている。
「グリニャール試薬」とは何か?
グリニャール試薬はヴィクトル・グリニャールが発見した、有機マグネシウムハロゲン化物で、一般式が R−MgXと表される有機金属試薬である(R は有機基、X はハロゲンを示す)。昨今の有機合成にはもはや欠かせない有機金属化学の黎明期を支えた試薬であり、今もなおその多彩な用途が広く利用される有機反応試剤として、近代有機化学を通して非常に重要な位置を占めている。
グリニャール試薬の調製は比較的容易である。ハロゲン化アルキルにエーテル溶媒中で金属マグネシウムを作用させると、炭素-ハロゲン結合が炭素-マグネシウム結合に置き換わりグリニャール試薬が生成する。生成する炭素-マグネシウム結合では炭素が陰性、マグネシウムが陽性に強く分極しているため、グリニャール試薬の有機基は強い求核試薬 (形式的には R−)としての性質を示す。
反応の一例を示すとホルムアルデヒド (HCHO) と反応させ酸で処理すると第一級アルコール (R−CH2OH) が生成する。
HCHO + R-MgX → R−CH2OH + MgX
ポール・サバティエ
ポール・サバティエ(1854年〜1941年)は、フランス・カルカソンヌ出身の化学者。
1877年にエコール・ポリテクニークを卒業し、1880年にはコレージュ・ド・フランスに移っている。硫黄と金属硫酸塩の熱化学の研究を行い、この業績によって博士号を得た。 トゥールーズに移ってからは硫化物、塩化物、クロム酸塩や銅化合物について研究を行った。
また、窒素酸化物やニトロソジスルホン酸の研究から、分配係数と吸収スペクトルの基礎を行った。他にもニッケル触媒によってアルケン等に水素が付加されることを見出した(これによって、魚油などを固形の硬化油にすることが可能となった)。これに代表される「微細な金属粒子を用いる有機化合物の水素化法の開発」によって1912年にヴィクトル・グリニャールと共にノーベル化学賞を受賞している。
また、二酸化炭素と水素を反応させてメタンを得るサバティエ反応を発見した。。(出典:Wikipedia)
ヴィクトル・グリニャール
フランソワ・オーギュスト・ヴィクトル・グリニャール(1871年〜1935年)はフランス・マンシュ県のシェルブール出身の化学者。
帆の製造業者の息子として生まれ、ナントで数学を学んだ後に化学に転向し、フィリップ・バルビエールに学ぶ。
1910年からナンシー大学の教授に就任。バルビエールの研究を下に開発した「グリニャール試薬発見」の功績で、1912年にポール・サバティエと共にノーベル化学賞を受賞した。この研究によって有機合成が一段と進展した。(出典:Wikipedia)
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