バイオ燃料に踊らされた2008年
2008年、先進国の新エネルギーに対する取り組みは疑問点が多かった。米国は食用になるトウモロコシをバイオ燃料に使用する法律を可決。その結果、投機資金の流入を招き、世界的な穀物の高騰や食糧不足を起こした。
EUでは、交通機関にバイオ燃料で走るディーゼル車を採用。その結果、世界各地でバイオ燃料を作る植物(ジャトロファや油ヤシ)が栽培されたが、農地を確保するため、熱帯雨林が伐採されたり、穀物を作る農地が転用され、砂漠化や食糧不足を招いた。
バイオ燃料としては、家畜の糞尿から出るメタンや、間伐材などのセルロースを燃料に使う方法も研究されているが、技術的な問題が大きく、遅れている。バイオ燃料自体、次期エネルギーの主役になるのは難しいのではないのかと思われた。
「藻」から作ったバイオ燃料でジェット機が飛ぶ?
ところが先日、米コンチネンタル航空は、「藻」から作ったバイオ燃料と通常のジェット燃料を1:1で混ぜたもので、旅客機の試験飛行に成功した。水中で育つ「藻」ならば、農地を奪い、食糧価格の高騰や環境破壊を引き起こす心配がない。「藻」が原料の代替燃料での試験飛行は世界初で、5年以内の実用化を目指すという。 (参考asahi.com 2009年1月8日)
だが、ジェット機の燃料は何だろうか?バイオ燃料なんかで飛行機が飛ぶのだろうか?
実は、ジェット機の燃料「ケロシン」は「灯油」とほぼ同じ成分である。石油ファンヒーターのように、勢いよく「ケロシン」を「ジェットエンジン」で燃焼させ、飛行機は飛ぶ。
次に、何で「藻」が燃料を作れるのだろうか?「藻」からできたものを燃やして大丈夫なのだろうか?
もともと石油は1億〜2億年前に生存していた「藻」などの植物性プランクトンの死骸が、高温高圧下で長年にわたり積もってできたもの。つまり石油は、ある種の「藻」が生成することが分かっていた。私たちは植物である菜種や大豆から採れた油を毎日使っている。石油は植物由来なのだ。
「藻」で、石油・食料・環境問題がすべて解決か?
筑波大や国立環境研究所などの共同研究チームは藻類の中でも飛び抜けて油分を豊富に持つ「ボトリオコッカス」に注目した。「ボトリオコッカス」は、光合成でCO2を取り込んで炭化水素を生成、細胞外に分泌する。生産する炭化水素は重油に似た成分の油で、そのまま船の燃料に使えるほど質が高いという。 (参考HP 国立環境研究所)
アリゾナ州のエネルギー企業米PetroSun社は、テキサス州の風光明媚な行楽地「ハーリンジェン」に近いテキサス湾沿岸に、藻類からバイオ燃料を製造する「農場」を開設した。この農場には、あわせて約4.5平方キロメートルにおよぶ海水の池があり、そのうち約0.08平方キロメートル分は、環境志向的なジェット燃料の研究開発用として使われる予定だ。(参考HP PetroSun社)
このように、海岸や湖を使った農場ならば、余計な土地を必要としない。熱帯雨林を伐採したり、環境破壊する恐れはない。藻だから酸素を作ってくれるし、生活排水に含まれる窒素、リンを養分とし水質浄化にもつながる。
トウモロコシなどのバイオ燃料に比べて、藻類は1エーカーあたり30倍以上のエネルギーを生み出すという。2008年のオイルショックのように石油の値段に振り回されることもない。食糧不足とも無縁である。筑波大や環境研の「ボトリオコッカス」以外には、慶大先端研とデンソーなどで「シュードコリシスチス」という藻が研究されている。ぜひ実用化につなげたいものだ。(参考HP 慶應大学先端生命科学研究所)
バイオ燃料で、パンが消える (PHP Paperbacks) (PHP Paperbacks) 武田 邦彦 PHP研究所 このアイテムの詳細を見る |
日本型バイオエタノール革命 山家 公雄 日本経済新聞出版社 このアイテムの詳細を見る |
��潟�<�潟��