腔腸動物とは何か?
腔腸動物は「こうちょうどうぶつ」と読む。無セキツイ動物の1つで、クラゲやサンゴ、イソギンチャクなどの動物をいう。刺胞動物とよばれる毒針を持つ動物が多い。腔腸動物の体は、基本的に放射相称型で、垂直に4つないし6つの均等な構造にわけることができる。
肛門がなく、独立した循環器系も消化器系もない。口の開口部は胃腔または胃水管系につながっている。また、筋原線維と単純な感覚器からなる神経組織網ももっている。感覚器は、刺胞(しほう)とよばれる細胞に付着している。刺胞は腔腸動物特有の武器ともいうべきものである。
触手がとらえた獲物は、刺胞から発射される毒で殺され、胃腔の内側の細胞が分泌する液で消化される。肛門がないため、消化時に生じた老廃物は口からはきだされる。腔腸動物は代謝に必要な酸素を水中から吸収する。移動するときは、筋原繊維を収縮させてうごく。
熱や光、また物理的、化学的、重力的刺激に反応する感覚器をそなえている。増え方は、ふつう有性生殖で卵生である。しかし、ヒドラという腔腸動物のなかまは出芽という方法で増える。
何かと話題の多いクラゲのなかま
クラゲ(海月)は、腔腸動物のうち、浮遊生活をする種の総称。体がゼラチン質で、普通は触手を持って捕食生活をしている。しかし、ポリプといっイソギンチャクのように岩にくっついて生活する時期もある。
クラゲの中には発光するものが多く、そのしくみの多くは謎であるが、オワンクラゲの発光するしくみ、GFPタンパク質を発見して、2008年下村脩氏がノーベル化学賞を取った。研究のため採取したクラゲの総数は17年間に85万匹!にもなるそうだ。
最近話題になったエチゼンクラゲは中国沿岸で発生し、最大で傘の直径が2メートル、重さ150キロにもなる。 主に対馬海流に乗って8月から翌年2月ごろ日本海沿岸を漂流する。出現のピークは10、11月。1回の定置網漁で3000匹以上がかかる場合もある漁師を悩ませている。この原因は中国沿岸部の発展による生活排水が海に流入するのためだといわれているが、なぜか2008年は発生数が激減している。
世界で唯一、死なない生物として話題になったのが、ベニクラゲ。ベニクラゲは成長しても体長が1センチにも満たない。このクラゲは年をとると、ポリプにもどり若返ることが知られている。
サンゴを襲う危機 白化現象
近年、沖縄県八重山諸島近海や世界遺産として知られるサンゴ礁グレートバリアリーフでは海水温の上昇が原因とみられるサンゴの白化現象が発生し、大きな問題となっている。
サンゴは海水温が30度を越すと、サンゴと共生する褐虫藻が減少し、白化現象が発生する。サンゴは、この褐虫藻の光合成に頼ってエネルギーを補給しているが、これが失われるとサンゴは白化し、長期間続くとサンゴは死滅する。
この被害が顕著であった1998年と2007年はマスコミからも大きく取り上げられ、サンゴの危機が全国に報じられた。この海水温上昇の原因は地球温暖化が関係しているとされているが、1998年と2007年は東南アジアからフィリピンの東沖の海水温が上昇するラニーニャ現象が発生しており、八重山諸島近海の海水温も平年より高い状態であり、30度を越す海域も例年以上に広かったことも原因として挙げられている。
サンゴを食害する生物はオニヒトデ、近年では熱帯産の巻貝であるヒメシロレイシガイダマシが知られている。南西諸島以外でも西日本の太平洋側にもサンゴは分布しているが、南九州や四国地方では1980年代後半頃からヒメシロレイシガイダマシの増加に伴って西日本のサンゴが大きな被害を受けている。宮崎県日向海岸や高知県沖では壊滅的な被害を受けたサンゴ礁もあり、これらのサンゴ礁を保全するために駆除活動が行われている。
イソギンチャクの共生と利用法
イソギンチャクは、さまざまな動物と共生していることが知られている。最もよく知られているのは、魚類のクマノミ類との共生であろう。サンゴ礁に生息する、ハタゴイソギンチャクなど大型のイソギンチャクに見られる。
同様な関係は一部のエビやカニ類との間にも見られる。ヤドカリ類の殻の上に着くものでは、イソギンチャクは、移動して砂地にまで進出できるし、ヤドカリは大型の捕食者から身を守れる、相利共生の関係にある。
日本でイソギンチャクの食用が一般的なのは有明海沿岸で、干潟に生息するヨロイイソギンチャク類の一種、イシワケイソギンチャクなどが食用として市場に流通している。調理法には味噌炊きなどがあり、郷土料理の飲食店でも供される。ほか、千葉県の東京湾沿岸でも、戦後埋め立てが進む前は同様に同種と考えられる干潟性のヨロイイソギンチャク類を潮干狩りで味噌汁の具として採取し、家庭内消費することは盛んであった。
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