生物濃縮を起こす物質とは?
生物濃縮とは、ある種の化学物質が生態系での食物連鎖を経て、生物体内に濃縮されてゆく現象をいう。生物濃縮を起こす物質をあげてみよう。
よく知られているのは、PCB、DDT(DDD)、ダイオキシンなどである。
最初に「生物濃縮」による環境被害が報告されたのは、レイチェル・カーソンの著書「沈黙の春」による。この著書ではDDTなどによる、「生物濃縮」の問題が紹介され、一般に知られるようになった。
DDTは農薬であるが、生物濃縮を起こすものは、なにも農薬に限らない。水俣病の有機水銀、イタイタイ病のカドミウムなど重金属でも起きるし、シガテラ毒とよばれる生物由来の神経毒でも起きる。
環境ホルモンとは何か?
PCBやダイオキシンなどは農薬ではない。にもかかわらず、これらの物質が注目されるのは、環境中に広く存在し、容易に分解せず、低濃度でも生物に悪影響を与えるからである。森林研究所、安田雅俊氏の2002年の調査によると、ヒトの中にもダイオキシンは存在し、その濃度は57pg(p:ピコは1兆分の1)である。モグラでは3400pg、カワウでは41000pgだそうだ。ダイオキシンには発癌性、催奇性が確認されている。
「たったの1兆分の1g?」そう、これらの化学物質は、ごくわずかな濃度でも、生物に悪影響を与えることから「環境ホルモン」と呼ばれている。今日はその中でPCB、DDT、ダイオキシンについて述べたい。
PCBとは何か?
ポリ塩化ビフェニル(polychlorinated biphenyl)とは、ビフェニルの水素原子が塩素原子で置換された化合物の総称で、一般式 C12HnCl(10-n) (0≦n≦9) で表される。略してPCB(ピーシービー)とも呼ばれる。
熱に対して安定で、電気絶縁性が高く、耐薬品性に優れている。加熱や冷却用熱媒体、変圧器やコンデンサといった電気機器の絶縁油、可塑剤、塗料、ノンカーボン紙の溶剤など、非常に幅広い分野に用いられた。
蒸発しやすく、廃棄されたものが全地球環境に広まった後、生体に対する毒性が高く、脂肪組織に蓄積しやすいことや、発癌性があり、皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常を引き起こすことが分かった。1968年、日本のカネミ油症事件では食用油にPCBが混入して、それを摂取した多くの人に障害が発生した。くわしい調査の結果、混入した毒はダイオキシン類の方が多いことがわかった。
DDT・DDDとは何か?
DDTとはDichloro-diphenyl-trichloroethane(ジクロロジフェニルトリクロルエタン)の略であり、DDDとはDichloro-diphenyl-dichloroethane(ジクロロジフェニルジクロルエタン)の略である。簡単にいうとDDDはDDTが土壌中で変化したもので、かつて使われていた有機塩素系の殺虫剤、農薬である。
1939年に開発されたDDTは、非常に安価に大量生産が出来る上に、殺虫剤として少量で効果があり、人間や家畜に無害であるように見えるため爆発的に広まった。
ところが、1960年代に出版されたレイチェル・カーソンの「沈黙の春」により取り上げられたことで、この物質は危険だという認識が広まった。また、アメリカの野生ワニなどで環境ホルモン作用が疑われたことたにより、いよいよ有毒な農薬とされ、一時世界中で使用禁止になった。
DDTにまつわる悲しい現実
DDTの優秀な殺虫剤としての一面は完全否定された。そのために悲劇が起きることになる。1948年から62年にかけてスリランカでは、DDTの定期散布を行ない、それまで年間250万を数えたマラリア患者の数は31人にまで激減した。後一歩で撲滅という時にDDTの使用禁止が決定。マラリア患者の数は5年のうちに、もとの250万人まで逆戻りしてしまったという。
その後、ヒトに対する発癌性は否定され、2006年9月、マラリア対策として、WHO(世界保健機関)はDDTの室内残留性噴霧を奨励する方針が出された。
ダイオキシンとは何か?
ダイオキシンとは特定の物質ではない。ダイオキシン類という、いくつかの物質の総称である。具体的には、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン (PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン (PCDF)のこと。また、コプラナーポリ塩化ビフェニル (Co-PCB) のようなダイオキシン類と同様の毒性を示す物質をダイオキシン類似化合物と呼ぶ。
ダイオキシン類の毒性は一般毒性、発癌性、催奇性、など多岐にわたる。ダイオキシン類は塩素を含む物質の不完全燃焼や、薬品類の合成の際、意図しない副合成物として生成する。
過去には、米軍がベトナム戦争(1959〜1975)で散布した枯葉剤の中に不純物として含まれていたことは有名である。日本においても、PCBや農薬の一部に不純物として含まれて、環境中に排出されたという研究結果もある。(参考Wikipedia)
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