液体ヘリウムと超伝導

 第13回ノーベル物理学賞はヘリウムの液化に成功し、水銀の冷却により、超伝導を発見した、オランダの物理学者、ヘイケ・カメルリング・オネスに贈られた。

 現在、超伝導はさまざまな分野で利用されている。医療ではNMRやMRIなどの超電導磁石に、次期中央新幹線で使用されるのが、超電導磁気浮上式リニアモーターカーである。超伝導リニアは2025年の先行開業を目指しており、首都圏 - 中京圏を約40分、首都圏 - 近畿圏間を約1時間で結ぶと予想されている。

 このリニアモーターカーで使われる、超電導磁石は、液化ヘリウムを用いて電磁石を冷却し、超電導状態を保つ工夫がなされている。超伝導状態になると、電気抵抗は0になり、強力な磁石になる。まさにヘイケ・カメルリング・オネスの研究がそのまま現代に活かされている。

 超伝導磁気エネルギー貯蔵装置(SMES)

 また、超伝導はエネルギーの貯蔵に利用することが期待されている。近年、風力発電、太陽光発電など再生可能エネルギーを用いた発電が注目されているが、天候などに左右され、いつも安定して発電できるわけではない。

 そこで、期待されているのが超伝導磁気エネルギー貯蔵装置(SMES)である。超伝導状態では電気抵抗が0なので、電流は半永久に貯蔵できるしくみだ。これにより安定した電力供給が可能になる。

 まさに、近未来社会の基礎となる「超伝導」を発見をした、ヘイケ・カメルリング・オネスの業績は素晴らしいものだが、いったいどうやって「超伝導」の発見はなされたのであろうか?

 永久気体「ヘリウム」
「ヘリウム」が発見されたのは、1868年8月1日にインドで観測された皆既日食において発見された。フランスの天文学者ジャンセンが観測したコロナのスペクトルをイギリスの天文学者ロッキヤーが分析したところ、スペクトルの中に強い黄色線があることを発見。彼はこれを未知の元素によるものと確信し「ヘリウム」と命名した。

 19世紀の後半は、さまざまな元素が発見された時代である。そして、さまざまな気体の液化も研究されていた。塩素や二酸化炭素などは加圧することで比較的容易に液化したが、酸素や窒素、水素などはいくら高圧を加えてもなかなか液化せず、当時はこれらは「永久気体」と呼ばれていた。

 ジュール・トムソン効果

 1861年、気体を高圧にして、自由膨張させるとき、温度が下がることがわかった。これをジュール・トムソン効果という。現在、冷蔵庫の冷却器で使われている原理だ。

 この現象を「永久気体」に応用、加圧と膨張を繰り返すことにより、永久気体と考えられていた酸素や窒素、水素も次々と液化に成功した。

 1908年、最後まで残された「ヘリウム」もヘイケ・カメルリング・オネスによって、0.9K(-272.1℃)まで温度を下げることで、ついに液化に成功した。

 超伝導の発見
1911年、液化ヘリウムを冷却材として、極低温下の金属物性の研究を続けた結果、ある温度において水銀の電気抵抗が突然ゼロとなる現象が発見された。これが「超伝導」の発見である。

 その後、超伝導状態の物質に磁場を加えると、超伝導が消失することを発見した。1913年、低温物理学への貢献により、ノーベル物理学賞が授与された。受賞理由は「低温における物性の研究、特にその成果である液体ヘリウムの生成」である。

 ヘイケ・カメルリング・オネスとは?

 1913年、ノーベル物理学賞受賞者、受賞理由:「低温における物性の研究、特にその成果である液体ヘリウムの生成」

 ヘイケ・カメルリング・オネス(Heike Kamerlingh Onnes, 1853年9月21日-1926年2月21日) はオランダの物理学者である。ヘリウムの液化に成功、超伝導の発見など、低温物理学の先駆者として知られている。

 生涯
1853年、オランダのフローニンゲンにて誕生。父は煉瓦工場を経営していた。 1870年、フローニンゲン大学に入学。その後、ドイツに留学し、ハイデルベルク大学にてローベルト・ブンゼン、グスターブ・キルヒホッフらの教えを受けた。

 その後再びフロニンゲンに戻り、1876年には博士論文『地球自転の新しい証明』のための研究を完成させ、1879年に学位が与えられるまでの間、デルフト工科大学にて助手としてつとめた。デルフト時代にファン・デル・ワールスと出会い、彼との議論を通じ、低温における物理現象に興味を抱くようになった。

 1882年、ライデン大学実験物理学教授に就任。1894年、酸素、窒素、空気の液化装置を備えた低温研究所を同大学に設立した。

 1908年、ヘリウムの液化に初めて成功。3重構造の魔法瓶を用い、外側から順に液体空気、液体水素を入れて温度を下げ、 最終段階はジュール=トムソン効果によって、ヘリウムの液化を実現した。

 1911年に純金属の水銀を冷却し、超伝導現象を初めて発見した。その後、スズ、鉛などでも超伝導現象が起こることを発見した。また、超伝導状態の物質に磁場を加えると、超伝導が消失することを発見した。低温物理学への貢献により、1912年にランフォード・メダル、1913年にはノーベル物理学賞が授与された。

 1926年に死去するまで生涯ライデン大学教授職として過ごした。死後、ライデン大学の低温研究所はカメルリング・オネス研究所と改名された。

参考HP Wikipedia「ヘイケ・カメルリング・オネス」・「ヘリウム」・「ジュール・トムソン効果」・超伝導コイルによる磁気エネルギー貯蔵(SMES) 


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