アナフィラキシー・ショックとは?
1913年のノーベル生理・医学賞は「アナフィラキシー・ショック」である。これはスズメバチの毒などで起きることが知られている。具体的には一度蜂に刺されて軽い症状で済んだものが、2度目に刺されたときに猛烈なアレルギー反応により、ショック症状を起こし、死に至るほどの反応が起きることをいう。
「アナフィラキシー」の意味は「過剰アレルギー反応」。このアレルギーを調べてみると、なんと「花粉症」と同じ「免疫反応」であることがわかった。
つまり「アナフィラキシー」の症状は、IgE抗体とアナフィラトキシン(アナフィラキシーを起こすタンパク質)が関与し、「肥満細胞」にIgE抗体が多数くっつくことで破裂、中から「ヒスタミン」や他のメディエーターの放出させる(脱顆粒)ことが原因だ。
花粉症と同じ「アレルギー反応」
「ヒスタミン」は細動脈の血管拡張や肺の細気管支の収縮、気管支痙攣(気管の収縮)を引き起こす。 結果として喘鳴、呼吸困難、胃腸症状(腹痛、嘔吐、下痢など)を示す。ヒスタミンは血管拡張(血圧低下)、血流から組織への体液の漏出(血圧低下)を引き起こす。体液が肺の肺胞に漏出すると肺水腫を引き起こすこともある。
「花粉症」のひどいのが「アナフィラキシー・ショック」であったことにショックを受ける。さらに、食品アレルギーでも「アナフィラキシー・ショック」を起こすことがある。
よく聞くのは「蕎麦アレルギー」や「小麦アレルギー」。食事に極少量の、小麦粉が入っているのを知らずに食べ、死にそうになった人が現実にいる。
人だけではない、哺乳類にはこのような複雑な「過剰アレルギー反応」を起こすしくみを共通して持っている。
このような、複雑なアレルギー反応は、いったい誰が発見したのだろうか?
アレルギー研究の父
最初に、「アナフィラキシー・ショック」の発見したのは、フランスの生理学者「シャルル・ロベール・リシェ」である。彼は“アレルギー研究の父”と呼ばれている。
調べてみるとリシェが最初に研究したのは「クラゲ」であったことが興味深い。そういえば2008年のノーベル化学賞は、下村脩氏の「オワンクラゲ」の持つ緑色タンパク質(GFP)研究であった。
一方、シャルル・ロベール・リシェの研究した「クラゲ」は、毒のある「カツオノエボシ」である。彼もまた大量のクラゲを集めて、その毒の成分を分析した。
「カツオノエボシ」の研究
1901年 20世紀初頭、モナコでは海水浴客が電気くらげ「カツオノエボシ」に刺される事故が相次ぎ、問題となった。事態を重く見たモナコの皇太子アルベール1世 が、シャルル ロベール リシェとポワチエ(動物学者)にカツオノエボシ毒素の研究を依頼した。
アルベール1世自身が指揮するヨット、プリンセス・アリス2世号で、7月にフランスのトゥーロン港をたって、8月の初めに、ヴェルデ岬諸島付近で、カツオノエボシを大量に採取した。
毒素を分離し中和抗体を作成するため、カツオノエボシの触手から毒素をグリセリンで抽出し、ハト、アヒル、モルモット、カエルに注射すると、毒素は強烈な作用を発揮し、動物は死亡した。動物の麻痺と無感覚が特徴であったので、毒素をヒプノトキシンと命名した。ヒプノスはギリシャ神話の眠りの神の名である。
「アナフィラキシー」の発見
1902年、リシェとポワチエは、フランスに帰国後、カツオノエボシは入手困難だったので、毒イソギンチャクからグリセリンで抽出した毒素の高用量をイヌに注射するとイヌは死亡した。< /p>
致死量に至らない用量では、イヌは反応を起こしたが、健康を回復した。この回復したイヌに、1ヶ月後に少量の毒素を注射すると、激烈な反応(下痢、出血、嘔吐、ショック、気管支痙攣、呼吸障害など)を起こして死亡したのだった。
無処理のイヌに同量の毒素を投与しても、くしゃみやかゆみが出るくらいの反応しか起こさなかった。
リシェの結論は毒を注射したことではなく、タンパク質を注射することがアナフィラキシー・ショックを引き起こす。毒素たんぱく質はアナフィラキシーを起こすきっかけに過ぎず、動物の血液に存在する物質がアナフラキシーの直接の原因ではないかと考えた。
第13回ノーベル生理・医学賞受賞
この現象の特徴は、 1) 一定の潜伏期が必要、2) 1回目と2回目の物質は同一であること、3) 引き起こされる症状は定型的、画一的であることが判明した。本来、ワクチン接種は毒素、病原体から体を防御するために行うのに、防御とは正反対の結果が起きた。この反応をリシェは「アナフィラキシー」(過剰アレルギー反応)と名付けた。
その後 N.M.アルテュスが、クラゲ毒以外でもアナフィラキシー・ショックが起きることを発見。
1913年に、リシェは受賞理由「アナフィラキシー・ショックに関する研究」で、ノーベル生理学・医学賞を受賞する。
アレルギーの種類とは?
1型 抗原が粘膜等から体内に入ると、この1型に非常に強く関与するIgE抗体が作られ、この抗体が肥満細胞がもっているレセプターと結合する。ここに侵入抗原が結合すると、抗体からの信号で肥満細胞がヒスタミン等の化合物を作り出して放出、これが炎症を起す。 花粉症、喘息、じん麻疹・アトピー、アナフィラキシーショックなど。
2型 自分自身の細胞に結合した抗体が、補体系を活性化させる事によって生体に障害を与えるパターン。 自己免疫性溶血性貧血、バセドウ病など。
3型 生体内で生じた、抗原・抗体複合体が、細胞に沈着して、それが補体系を活性化させて起こるパターン。 全身性エリテマトーデス、食品アレルギーの一部
4型 抗原がT細胞を活性化する事によっておこるもの。 結核・真菌・ウィルス等の感染症、脊髄炎、脳炎、慢性関節リウマチ・甲状腺炎など
一般的に「アレルギー」と私達が言っているのは1型アレルギーのこと
アレルギーには自己免疫疾患というグループに属する物もありますが、アレルギーというのは、基本的に、細胞を破壊して、炎症を起こし生体に障害を与えるものと解釈できまる。
1型のように抗体が関与するアレルギーは、「即時型」と言われ、短時間に発症します。これに対して、細胞が関与するのは「遅延型」と言われ、少し時間をおいて発症するもので、2型、3型、4型がこれにあたる。
参考HP Wikipedia「アナフィラキシー」「シャルル・ロベール・リシェ」・「痛みと鎮痛の研究」・「免疫プラザ」
アナフィラキシーショック―For Professional Anesthesiologists 克誠堂出版 このアイテムの詳細を見る |
食物アレルギーとアナフィラキシー 角田 和彦 芽ばえ社 このアイテムの詳細を見る |
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