イオン・錯イオン・錯体とは何か?
イオンとは、原子あるいは分子が、電子を授受することによって電荷を持ったものをいう。水中では電解質が水に溶けたときイオンで存在する。空気中では電離層などで気体がプラズマと呼ばれる状態で存在するときにも存在する。また、イオン結晶などのイオン結合性を持つ物質内などにも存在する。
代表的なのは金属で、Fe2+、Al3+など、必ず+の電気を持った、陽イオンで存在する。一方ハロゲン元素はCl-、F-など、必ず−の電気を持った、陰イオンで存在する。
イオンの中には数種類の元素がグループになった錯イオンという変わったものがある。[Zn(NH3)4]2+、[Al(OH)4]−、[Fe(CN)6]3-などがその例である。
錯イオンのうち、錯イオンが集まってできている物質を錯体という。錯体の身近な例としては、クロロフィルやヘモグロビンなどがある。
配位子・配位結合とは何か?
錯イオンを構成するZn2+やAl3+、Fe3+などの金属イオンに結合する、NH3、CN-、OH-などを配位子という。
配位子が金属イオンに結びつくときには、配位結合という結合をする。この結合は共有結合のように、結合する原子どうしが電子を共有するところは同じである。しかし、配位結合と共有結合では共有する電子の軌道に違いがあり、共有結合の結びつきの方が一般に強い。
配位結合の例アンモニウムイオン
最も簡単な配位結合の例としては、アンモニアが水中でアンモニウムイオンになる場合がある。アンモニアの窒素は5つの価電子をもち、3つの水素原子と共有結合をして閉殻状態(8電子)になっている。
アンモニア窒素には水素との共有結合に参加していない2つの電子(非共有電子対という)が存在し、電子対を供与することが可能なルイス塩基(非共有電子対を持った原子)でもある。プロトンがルイス塩基と配位結合すると、窒素の原子が+電荷を持ったオニウムイオン(アンモニウムイオン)となる。
このような配位結合や錯体を初めて発見した人は誰だろう?
錯体の発見とその性質
それが、第13回ノーベル化学賞を受賞した、スイスの化学者アルフレート・ヴェルナーである。受賞理由は「分子内原子の結合研究」
今から100年ほど前は、錯体はどの様な構造の化合物なのかわからず、複雑なものということでcomplexと名付けられ,日本語では錯綜の錯を用いて錯体と訳されていた。この正体が配位結合によるものであることを突き止めたのが、アルフレート・ヴェルナーである。
現在、単に構造的に興味深いだけではなく、この錯体はいろいろな面で大変興味深い性質を持っていて、自然界においても重要な働きをしていることがわかってきた。この領域は無機化学と有機化学の境界にある分野といえ、最近ではこの分野はますます広がりを見せており、多くの人の注目を集めている。
2001年、野依良治氏のノーベル化学賞も錯体研究
錯体の場合,その中心に金属イオンがあることで,炭素や水素を始め金属イオンを含まない有機化合物とは異なった有用な性質がいろいろとできる。錯体の特徴の一つは色がついているものが多いこと。また、磁石にわずかに引かれる性質(常磁性)が多く見られる。これらの性質は錯体の中心にある遷移元素のd軌道が部分的に満たされていることによる。
色がついているということは可視光を吸収するということで、光のエネルギーを蓄える物質と考えることもできる。また、ある種のものは触媒としての働きを示すものもある。 2001年、野依良治先生のノーベル化学賞は、この錯体触媒を利用して不斉炭素を有する化合物を、効率的に作った業績に対し贈られたものである。
自然界における錯体
例えば我々の血液の中のヘモグロビンという物質では酸素運搬をつかさどる最も重要な部分は鉄の錯体となっている。だから鉄が不足すると貧血になる。
植物の光合成の際に中心的役割を果たすクロロフィルもマグネシウムの錯体。この光合成のおかげで我々は酸素を吸って生きている。
新生児用の粉ミルクの缶を見てみると、原料の欄にはなんと猛毒と思われいている硫酸銅が使われていることがわかる。つまり微量の銅は体にとって必要なものなのだ。我々は普段食べている食物から銅をほんのわずかだが摂取している。
これらの微量元素の働きにはまだ未解明の面も多いのだが、体内では錯体として働いていると考えられ、次第にこれらの重要性がますます指摘されるようになっている。
参考HP Wikipedia「錯体」「配位結合」「アルフレート・ヴェルナー」 ・応用錯体化学研究室「錯体とは」
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