
富栄養化と「リン」
「リン」は植物の肥料として知られているが、生物の細胞に不可欠な元素であるため、環境中に過剰に存在すると、微生物の大量増殖をまねいてしまう。赤潮などの公害が多発した1960年代以降、合成洗剤への使用がが禁止されるなどの対策が講じられ、その後も環境基準の項目の1つとなっている。
家畜の糞尿や、田畑にまいた肥料の中に窒素化合物やリンが含まれており、これが川や海に流出し、濃度が上昇すると、これを栄養素にして、生物の繁殖が活発になる。この現象を「富栄養化」という。
赤潮と青潮の原因
「富栄養化」は藻類等の植物プランクトンの異常増殖を招くだけでなく、さらに、これを食べる動物プランクトンも増殖させる。これが赤潮である。
この結果、水中の酸素消費量が高くなって貧酸素化すると、生物が死滅し海底に有機物が堆積する。貧酸素の水中では、嫌気性の硫酸還元菌が繁殖し、硫化水素を発生する。これが青潮の原因となる。
「富栄養化」の要因は家畜の糞尿や肥料以外に、生活排水や工業廃水など多岐に渡る。
「鉄イオン」で「リン」を除去する新手法
今回、群馬高専(前橋市)の小島昭特任教授らのグループが、水中で炭素と鉄を密着させると鉄イオンが溶け出す性質を活用して、「リン」を取り除く方法を開発した。炭素繊維と鉄の網を重ねて水中に固定すると、鉄イオンがリン酸イオンと化学結合して「リン酸鉄」となり沈殿する。小島氏によると、鉄や炭素は環境への影響がほとんどないという。
1リットルあたりの「リン」が20ミリグラムと、し尿に近い高濃度でも、約20キロ(約400円)の鉄で25メートルプール(約375立方メートル)相当の排水から「リン」をほぼ完全に除去できるという。高分子凝集剤を使う場合、コストは数百倍かかる。
高分子凝集剤による「リン」除去
近年富栄養化対策として、下水処理場では 、窒素やリンを除去する排水処理することが義務付けられている。これには、生物反応槽内に、2種類以上の嫌気・無酸素・好気的な状態をつくりだすことで、好気性菌や通性嫌気性菌等の微生物を利用して、窒素やりんの除去を行う。
生物処理によるリン除去がうまく行かなかった時に備えて、生物反応槽の最終部にポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機凝集剤を添加し、リン酸を凝集沈殿処理することになっている。
これまでの「リン」除去技術
リンの除去についてはこれまで、畜産草地研究所では、養豚所などで豚舎汚水に含まれている「リン」を回収するために、単に曝気する(かきまぜる)ことで、汚水中に溶存していた炭酸ガスを追い出しpHを上昇させて「リン」を結晶化させる装置を開発している。
また、農業環境技術研究所では、蛎殻や貝殻などの炭酸カルシウムを利用したフィルターに、高濃度のリンを含む豚舎汚水を通水させることで、「リン」濃度とpHを下げることに成功している。この処理は炭酸塩から「リン酸塩」への塩の組換えを利用したものだ。
参考HP Wikipedia「富栄養化」「赤潮」「青潮」・畜産草地研究所「養豚で発生するリンの再利用技術」・農業環境技術研究所「天然石灰質資材を利用した豚舎汚水からのリン酸除去技術」
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