「天使」と「悪魔」
今年5月15日公開予定の「天使と悪魔」はロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演の映画で、ダン・ブラウンの原作も世界的なベストセラーとなった、「ダ・ヴィンチ・コード」の続編的な映画だ。
映画では「究極の大量破壊兵器」をつくるため、欧州合同原子核研究機関(CERN)から「反物質」が盗まれるという筋書き。
ところが「反物質を使った兵器づくりなんて、現実の世界ではあり得ません!」...と異例の記者会見を開いたのは反物質研究の第一人者、東京大の物理学者、早野龍五教授である。
記者会見を開いた理由は「映画はエンターテインメント。科学性を論じるのはヤボなことだと承知している。ただ、最近、反物質研究は危険ではないかという問い合わせが相次いだので、正しく理解してほしいと考えた」( 2009年3月19日 asahi.com )
では反物質とは何だろう?
「物質」と「反物質」
「すべての物質には、それとまったく反対の性質を持つ、物質と反物質が存在する。」1930年、物理学者のポール・ディラックが、反物質の存在を計算から導き出した。1932年、物理学者のアンダーソンにより、正の電荷を持つ電子、陽電子が発見される。世界初の反粒子(反物質)の発見であった。
物質と反物質が出会うとどうなるだろうか?
物質と反物質が衝突すると対消滅を起こし、アインシュタインの E=mc2 により、質量がエネルギーとなって放出される。
粒子と粒子を衝突させる加速器では、多くの新しい粒子を発生させる。この粒子の中から多くの反物質が発見されたが、ほとんど瞬間的に物質と再衝突し、エネルギーを放出して消滅した。
「CP対称性」と「CP対称性の破れ」
それならば、なぜ、われわれの住む宇宙は、消滅せずに存在するのか?なぜ、宇宙では反物質がほとんど存在していないのか?...という問題は長い間、物理学の大きな疑問の一つであった。
従来、物質と反物質は鏡のように性質が逆なだけで、その寿命も質量も全く同じだと考えられてきた、これを「CP対称性」という。
ところが「物質と反物質の寿命がほんの少しだけ違う」というものが発見された。
最初の発見は 1964年、K中間子と反K中間子である。2003年には、B中間子と反B中間子で、寿命が違うことが確認された。反物質の寿命がわずかに短かった。物質と反物質は「CP対称性」に従わないことがあり、これを「CP対称性の破れ」という。
これにより、宇宙の成り立ちが説明できる。
1.もともと、宇宙創成直後の超高エネルギーの世界では、粒子と反粒子が対消滅、対生成を繰り返し、それらは同数あった。
2.それらの大部分は宇宙の冷却に伴って対消滅してしまったが、消滅のエネルギーが宇宙の膨張で薄まって、再度対生成ができなくなった。
3.しかし、粒子と反粒子で反応法則にわずかな違いがあり、その差の分だけ粒子だけが残った。
なぜ「CP対称性の破れ」は起きるのか?これは未だに謎が多いのだが、1973年、クォークが6種類以上あれば、破れが自然に現れることを「小林・益川理論」では説き、小林 誠氏と益川敏英氏は2008年ノーベル賞を受賞した。
参考HP Wikipedia「反物質」「CP対称性の破れ」・天使と悪魔-オフィシャルサイト
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