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科学にはストーリー性が大切
映画「天使と悪魔」の公開を前に「反物質を使った兵器づくりなんて、現実の世界ではあり得ません」東京大の物理学者早野龍五教授は、記者会見まで開いて「反物質」の歴史と現在の研究などを解説した。
この映画は、最先端の科学に興味関心を持ってもらうためには、よい映画だと思う。私は科学の発展には、まず多くの人の興味・関心が必要だと考えており、そのためには、正しいかどうかよりも、エンターテイメント性が重要だとさえ考えている。
ノーベル賞を受賞した小林誠氏も、文科省を訪問し「教科書にはストーリー性が少ない」と意見を述べている。やはり、科学はまず面白くないといけない。このブログを書いている、私自身、科学を楽しんでいるし、少しでも記事を読んだ人に、科学に興味を持ってほしいと願っている。
だから、先端科学を題材にしたSF映画を作ることや、先端科学を研究している研究者がコメントするのはよいことだと思う。
ところで、反物質の研究は、どこまで進んでいるのだろうか?
反物質研究最前線
まず、宇宙に反物質は存在しないかといえば、実存する。しかし、その量は少ない。人類は宇宙から飛んでくる宇宙線が、地球の大気にぶつかるときにできる、二次宇宙線の中に反陽子を発見した。
さらに、「CERN」などの高速加速器を使って、人工的に様々な反粒子を作ることもできる。このとき、反物質を生成するのに必要なエネルギーは、反物質が消滅するときに得られるエネルギーよりも大きく、手間がかかる。
こうしてできた反物質は、1兆分の1秒という、短い間に消滅してしまうから、これを捕まえるのは難しい問題だ。しかも、反物質は物質と出合うと対消滅するので、普通の容器に保存するのも難しい。
しかし、最近、反物質を捕捉する物質が発見されたという。それは何だろう?
「反物質」を生け捕り?
発見したのは、映画にコメントをした、あの東京大の物理学者早野龍五教授のグループ。発見した物質はヘリウムである。
東京大の早野龍五教授が率いる実験グループ「ASACUSA」では、スイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究所(CERN)で反粒子の研究を続けている。
「ASACUSA」が研究しているのは、陽子の反粒子「反陽子」。この反陽子も物質に触れると消えてしまう。ところが早野教授は、ヘリウムガスに反陽子をぶつけると、すぐに消えず、しばらく「生き残る」ことを発見した。
「反陽子ヘリウム原子」の発見
詳しく調べると、ヘリウム原子が持っている二個の電子のうち、一つが反陽子に置き換わり、特別な原子を形作ることが分かった。ヘリウム原子が自然の容器となり反陽子を捕らえたのだ。この原子は「反陽子ヘリウム原子」と名付けられた。
電子と置き換わった反陽子は、付かず離れずほどよい位置で中心部の核の周りを回る。このため核と触れて消滅したり、どこかへ飛び去ったりしない。このとき反陽子が存在している時間は100万分の数秒だ。
人間にすれば一瞬だが「反陽子を他の物質に打ち込むと1兆分の1秒ほどで消える。それより百万倍も長生き」と早野教授。
反陽子が原子核の周りを回る勢いが衰えると、核に近づき消滅してしまう。だが反陽子ヘリウム原子は、電子の数や軌道の条件などが幸いし、反陽子の勢いが衰えにくい構造であることがわかった。
反陽子の質量と「CPT対称性」
さらに、グループは、反陽子を捕まえている間に反陽子ヘリウム原子にレーザー光を当てた。すると、反陽子がエネルギーを失って光を出す。この光の波長を測ることで反陽子の質量を割り出せた。
グループでは、反陽子の質量が電子の1836.15267倍との結果を得た。この値は既に知られる陽子の質量とすべて一致している。
反陽子と陽子の振る舞いは「CP対称性の破れ」があり、違いがあるが、質量は一致すると考えられている。これを「CPT対称性」呼ぶ。
今後は質量測定の精度を上げ「CPT対称性が破れ」ていないか検証するという。これがもし違っているとなると大発見だ。
参考記事 中日新聞 「反粒子生け捕り 世界の深淵を探る 東京大のグループ」
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