
日本人初のISS長期滞在クルー
2009年3月16日にSTS-119(15A)ミッション・スペースシャトル「ディスカバリー号」で打ち上げられた若田宇宙飛行士は、飛行3日目となる18日、国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、日本人初となるISS長期滞在クルーとして任務を開始した。
初めての朝はラジオ体操の歌で目覚めたという、若田さん。「皆さんISSからこんにちは。国際宇宙ステーション(ISS)での仕事は順調に進んでいます。ISSでの生活は快適です。」...と自身のブログで宇宙ステーションでの活動をつづっている。
若田さんのブログはこちら
→ http://blogs.yahoo.co.jp/koichiwakata_blog
宇宙飛行士は「プロフェッショナル」
若田さんの毎日の生活は、楽しい夢と希望に満ちあふれている。自分の専門分野である、ロボットアーム操作では、マニュアルにない操作で動作不良を発見。無事、太陽電池パネル「S6トラス」の設置に成功した。宇宙飛行士が「プロフェッショナル」である、という一面を見た。
これ以外には、さまざまな実験を日本実験棟「きぼう」で行う。最初の実験は、何とカエルの実験。日本時間19日午前6時40分、「きぼう」でカエルの細胞を培養する実験を始めた。
実験内容は、生物の発生時に起きる「重力遺伝子」のはたらき。アフリカツメガエルの腎臓細胞は、地上の重力環境では盛り上がったドーム構造を作るが、宇宙の無重力状態では形成せず、働きが活性化する遺伝子、抑制される遺伝子があることがわかっている。地球上では眠っていた遺伝子が宇宙環境においてどう活性化されるのかなど、生命現象と重力との関係について調べる。
ISSでの日常「飲料水・食事」
宇宙ステーションでの日常生活も、ユニークだ。まず、飲料水であるが、なんと自分たちが排泄する尿を利用する。3月22日、故障していた尿の完全再利用する装置の部品交換が完了した。若田さんは「どんな味がするのか飲むのが楽しみ。飲んだら報告します」と話した。この装置では尿を加熱して蒸留水にする。
食事の時間に食べたのは、赤飯とサバの味噌煮にカレーライス。仲間にもふるまい、好評であったという。宇宙食のメニューも豊富になった。
ISSでの日常「体調維持装置」
宇宙で大切な健康管理。長期滞在での最大の課題は、筋肉や骨の減少だ。ISSでは毎日2時間の運動が義務だが、帰還後の筋力は約20%減少。骨からカルシウムが溶け出し、骨粗しょう症に近い状態になる。
これに対して若田さんは、カルシウムの流出を抑える、骨粗しょう症の薬を服用。健康管理チームの指示で飛行前の筋力トレーニングを強化し、筋肉を約10%増やして臨んだ。訓練された宇宙飛行士でも、閉鎖環境で暮らす長期滞在でのストレス対策は重要だ。旧ソ連時代には、ストレスが深刻ないさかいに発展する例もあったという。
筋肉を維持するために使用する、体力維持装置には、走る運動器具(トレッドミル)や、自転車をこぐ運動(エルゴメーター)、筋力トレーニングの装置があるが、故障が多いのが問題。地上では、80キロを超える巨体が上でドタバタ動き、機械には相当な負担がかかる。 運動器具の維持管理も大切だ。
宇宙線の回避
宇宙での生活はもちろん楽しいことだけではない。こうして、体調管理に努めても宇宙には危険がいっぱいだ。
宇宙飛行士は睡眠中に、光を見ることがあるという。このとき「あ今、体内に宇宙線が通過した」とわかるのだそうで、このとき、いくつかの細胞のDNAは、確実に破壊されている。
太陽フレアが発生し、大量の宇宙線の通過が予測されるときは、NASAの管制官から、緊急避難の指示が出る、このときには全員、食料や飲料水など水分の多い荷物に囲まれた部屋に移動するという。
宇宙での危険はこれだけではない。スペースデブリの問題もある。
わずか10cmのスペースデブリ
日本時間3月23日午前、NASAは国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙ごみが衝突する可能性があるとして、ステーションの高度を下げ、軌道を一時変更した。
NASAによると、宇宙ごみは中国が1999年に打ち上げたロケットの破片だという。ステーションと結合中の米スペースシャトルには、若田さんら計10人の乗員がいるが、避難はしなかった。この破片の大きさは、わずか直径10センチ。
ステーションには今月12日にも、人工衛星の部品とみられる宇宙ごみが接近。軌道変更の時間がなく乗員3人が、緊急脱出用に結合しているロシアの宇宙船ソユーズに約10分間避難した。宇宙ごみは秒速数キロの猛スピードで飛ぶことから、衝突すると損傷につながる危険性がある。
参考HP JAXA STS-119ミッションウィークリーレポート
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