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2009年新型インフルエンザの発生
 2009年2月それは突然始まった。メキシコ東部ベラクルス州にある、ラグロリア村で、インフルエンザのような呼吸器障害・高熱の症状を示す子供が現れた。その後2・3日で子供の症状はおさまり、回復したが、その次は村人に症状が相次ぎ、死亡する事例も現れた。翌3月には、村の人口の6割である約1800人が発症。

 新型インフルエンザの発生であった。タイプとしては、A型インフルエンザウイルスのH1N1亜型に属する。確認当初は豚インフルエンザと呼ばれた。豚インフルエンザは豚がふつうにかかるインフルエンザであり、豚にしかかからないが、これが人に感染するタイプに変異したものである。インフルエンザウイルスは、このタイプにかかわらず、いつでも変異する可能性がある。

 WHOついにフェーズ「6」へ
 6月12日現在、国内感染者は成田空港の検疫で見つかった10人を含め、21都道府県で計548人になった。WHOによると世界の感染者数は世界74カ国で2万7737人、死者は141人にのぼっている。症状は軽いものの、感染は拡大し続けている。

 世界の複数地域で「持続的感染」が起きており、メキシコと米国に加え、日本や英国などで感染が拡大したうえ、これから冬に向かう南半球のオーストラリアでの感染が1200人以上と急拡大していることを重視。2009年6月12日、WHO(世界保健機関)は、世界的大流行(パンデミック)を宣言しフェーズを「6」に引き上げた。

 国内での対策に大きな変更はないが、秋以降に懸念される流行の「第2波」に備え、患者の早期治療や重症化を防ぐ準備が必要だ。WHOは流行の第2波までに世界人口の3分の1が感染すると予測している。この割合を当てはめると、国内では約4000万人という計算だ。

 インフルエンザの症状
 2009年4月28日、WHO緊急委員会委員の田代真人(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長)は、ウイルスに対し免疫をヒトはほとんどもっていないが、重篤な全身症状を生じることに関連した遺伝子を欠いており、季節性インフルエンザと同様に主に呼吸器の症状にとどまる可能性があるとの見解を示した。

 主な症状は、熱(発熱が伴わないこともある)、せき、のどの痛み、鼻水、倦怠感、筋肉痛、頭痛、下痢、嘔吐など。

 重症化が懸念されているのは、心臓・じん臓・呼吸器などに病気のある人、糖尿病の人、妊娠中の女性、乳幼児、高齢者。また、20代〜50代など比較的若い年齢層に症状が重くなる傾向がある。免疫をもっていると推定されているのは、60歳以上の3分の1。

 過去のパンデミック
 今回のインフルエンザのパンデミックの発生は、世界中で約100万人が死亡した1968年の香港風邪以来41年ぶり。

 インフルエンザ・パンデミックと考えられる流行の記録は1800年代ころからあるが、科学的に証明されているのは1900年ころからで、20世紀に入って以降、1918−19年、1957−58年、1968−69年と3回のパンデミックが記録されている。

 それぞれは、スペインインフルエンザ(原因ウイルスはA/H1N1亜型)、アジアインフルエンザ(A/H2N2亜型)、香港インフルエンザ(A/H3N2亜型)とよばれている。それぞれが異なる様相を呈していた。また、1889〜1891年にもH3N8によるパンデミックが発生していたとの報告(Taubenberger J, 2006.)がある。

 スペインインフルエンザ
 スペインインフルエンザでは、世界の人口の約50%が感染し、25%が発症したと見られている。死亡率は5%と高く、死者は2,000万人以上にのぼり、疫病史上有数の大被害となった。米国では南北戦争の死亡者や第2次世界大戦の死亡者を大きく上回り、パンデミックの脅威をまざまざと見せつけた。人口の多くがその免疫を獲得するにつれて死亡率は低下したが、 1957年にアジアかぜが現れるまで流行し続けた。

 日本では、1918年(大正7年)の11月に全国的な流行となった。 1921年7月までの3年間で、人口の約半数(2,380万人)が罹患し、 38万8,727人が死亡したと報告されている。通常は小児や高齢者の死亡率が高いのだが、このときも20代から30代の青壮年者に死亡率が高かったという。

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新型インフルエンザ:「フェーズ6」宣言 冬本番、南半球に警戒感


 世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザの警戒度を最高の「フェーズ6」に引き上げたことを受け、これから本格的な冬を迎える南半球の国々ではパンデミック(世界的大流行)への警戒感が広がっている。

 2週間で患者1000人増−−オーストラリア
 感染者が急増し、警戒度引き上げの判断材料の一つとされたオーストラリア。ラッド首相は12日、「態勢はすでに整っている」と述べ、国民に冷静な対応を呼び掛けた。

 豪州では感染者が最近2週間だけで約1000人増えた。計1300人以上の感染者のうち、1000人超が集中している南東部ビクトリア州では、地元紙が「人口比でメキシコの倍以上の高率感染」と報じるなど、感染拡大に歯止めがかからない状況だ。

 州都メルボルンで開催予定だった水泳大会が中止されたほか、他の州では、ビクトリア州を訪れた生徒児童に対して7日間登校を控えるよう求めるなど、社会への影響が広がっている。メルボルンでは17日、サッカーW杯アジア最終予選の日本対豪州戦が行われるが今のところ試合に影響はない。(毎日新聞 2009年6月13日)

参考HP 毎日新聞・Wikipedia「新型インフルエンザ」「インフルエンザパンデミック」

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