2009年7月15日ニュージーランド南島沖地震
7月15日は日本の各地で猛暑日を記録したが、朝6時22分ニュージーランド南島沖でM7.8の地震が発生した。震源地は南島南部のインバカーギルの西約160キロ。震源の深さは33キロであった。
この地震は大きなものであったので、日本でも津波の恐れがあり、気象庁からテレビなどで津波に対する注意報が出された。米太平洋津波警報センター(ハワイ)から周辺諸国の沿岸部に津波警報を発令したが、約1時間後に解除した。
気象庁によると、ニュージーランド南島西部のジャクソンベイで20センチ程度の津波を観測したに過ぎなかった。AP通信によると、南島南部の町でスーパーの棚から商品が落ちるなどしたが、死者や建物倒壊といった深刻な被害は報告されていない。(毎日新聞 2009年7月15日)
地震波P波・S波
地震による地殻の変動は、津波などのいろいろな波を引き起こす。最初に発生し最も速く伝わる波をP波という。
P波とはPrimary wave (第一波)のことで、進行方向に平行に振動する縦波(疎密波)である。固体・液体・気体を伝わり、速度は岩盤中で5〜7km/秒、地震発生時最初に到達する地震波で、初期微動を起こす。海上の船舶においては、観測される海震はこれによる。
P波の後しばらくして到達するのがS波である。S波とはSecondary wave (第二波)のことで。 進行方向と直角に振動する横波(ねじれ波)である。固体を伝わる。速度は岩盤中で3〜4km/秒、P波に続いて到達し、主要動(しゅようどう)と呼ばれる大きな揺れを起こす。
地球内部を伝わるP波
こうした地震波を観察していくと変わった現象に気づく。日本から遠く離れた場所に起きた地震でも、大きな津波が伝わって来ることがある。P波もそうで、日本から遠くで起きた地震でも日本で観測することができる。
津波は地球の海洋表面を伝わるので、日本に到達するのに数時間〜数日かかることもあるが、P波は地球内部から伝わり、短時間で日本に到達する。これはP波が固体・液体・気体を伝わるからで、地球内部の物質が個体や液体でできているからである。
ところがS波の場合、地球の裏側で起きた地震になると、日本で観測できない場合がある。これはなぜだろう?
P波・S波でわかった地球内部構造
これはS波が固体中にしか伝わらないためで、これによって地球の内部が個体でなく、液体の部分があることが発見された。それだけでなくP波も注意深く観察すると、一様に伝わらず到達時間にズレがあることがわかった。これはなぜか?
これは地球の内部が固体の部分や液体の部分、密度の違う部分でできており、そこでP波の速度や向きが変化するためである。
こうして地球内部のようすが、地震波の観察でくわしくわかってきた。地球の内部は図のようにいくつかの階層に分かれている。これらの境界面を「モホロビチッチ不連続面」「グーテンベルク不連続面」「レーマン不連続面」などという。
モホロビチッチ不連続面
モホロビチッチ不連続面とは、地震波速度の境界であり、地球の地殻とマントルとの境界のことである。地震波の速さ、密度が、地殻で小、マントルで大と、この不連続面で急激に変化する。
モホロビッチ不連続面の深さは大陸部で深く、大洋底で浅い。日本ではしばしばモホ不連続面あるいはモホ面と略されることがある。
1909年にクロアチアの地震学者である、アンドリア・モホロビチッチによって発見されたためその名がある。地震観測の途上、地球内部において地震の初期微動であるP波の速さが変わる場所を発見した。この場所を、モホロビチッチ不連続面と呼んでいる。
モホロビチッチ不連続面は、海洋底では地下約5kmの場所にあり、大陸では地下約75kmの場所にある。
コンラッド不連続面
コンラッド不連続面とは、大陸地殻中に存在する地震波速度が不連続に増大するほぼ水平な面を指す。この不連続面は大陸地域各地で15 - 20 kmの深さで観測されるが、海洋地域では観測されない。また、モホロビチッチ不連続面と比べると明瞭でないし、観察されない大陸地域も存在する。コンラッド不連続面は、大陸地殻上部と下部の地球物理学的な境界である。
20世紀中ごろまでは、大陸地殻の上部は花崗岩に代表される珪長質岩石で(SiAl、シアル)、下部は玄武岩に代表される苦鉄質岩(SiMa、シマ)で構成されると推定されていた。そのため、当時の地震学者はコンラッド不連続面は化学的に異なるSiAl、SiMa両層の明瞭な境界面と考えた。
しかし、1960年代ころから、この考えに対する強い疑いが地質学者の中におこり始めた。コンラッド不連続面の厳密な地質学的意義は、現在においても明瞭には解明されていない。大陸地殻中に点在する部分融解層という説は、一つの候補である。
グーテンベルク不連続面
コア-マントル境界、グーテンベルク不連続面とは、地球のマントルと核(外核)との境界である。深さは約2,900km。コア-マントル境界(core–mantle boundary、略してCMB)ともいう。
1926年にアメリカ合衆国の地震学者であるベノー・グーテンベルグは、地震の際に地球内部において地震波のうちP波の速度が遅くなり、またS波が伝わらなくなる部分があることを発見した。これは外核が液体状であることに因るものであり、この境界を発見者の名前に因んでグーテンベルク不連続面と呼ぶ。
レーマン不連続面
地震の観測網が整備されていくと、これまでは地震波(P波、S波)はまったく届かないと思われていた地震波の影(シャドーゾーン)にも、弱い地震がが観測されるようになった。
そこで、デンマークの地震学者レーマンは、核の内部にも不連続面があり、そこを境にして急に地震波の伝わる速さが速くなると考えた。この地表からの深さ5100kmに存在する不連続面をレーマン面ということがある。このレーマン面で地震波は、グーテンベルグ面と逆の屈折をして、地震波の影(シャドーゾーン)に出る経路をとる。
参考HP Wikipedia「地殻」「モホロビッチ不連続面」「レーマン不連続面」・東大地震研・
山賀 進のWeb site「地球の構造」![]() | 地球の内部で何が起こっているのか? (光文社新書) 平 朝彦,徐 垣,末廣 潔,木下 肇 光文社 このアイテムの詳細を見る |
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