
改革が急務な農業分野
農業自給率が40%しかない我が国において、害虫の駆除は重大な問題だ。農村部の過疎化が進み、人手不足が問題になっている。その中で害虫の駆除など、個人の農家がすべてをやらなければならない仕組みだから、なおさら大変である。
最近は無農薬の有機栽培が人気で、これにも手間がかかる。規制緩和し、株式会社が自由に農地をもてるようにすれば、この問題は一挙に解決する。しかし、現状では、害虫駆除は農家が個別に工夫して、何とかするしかない。
害虫ヤガとは何か?
ヤガの仲間は、蛾のなかまで、ヤガ科は1,000種を越えるほど種類が多い。その多くは農作物に害を与える。メスは食物となる農作物の根元や土中に産卵する。幼虫は夜、葉を食べたり、中に入ったりして、その植物に害を加える。
キャベツの食害で知られるヨウトウムシは、ヨウトウガというヤガのなかまである。ヤガは夜蛾と書き、夜行性である。蛾としては中型で、前翅は細く、後翅は広い。羽根を閉じた姿は矢尻の形をしている。
ヤガはコウモリを探知する器官を胸部に持っている。ヤガのなかまはの代表的な天敵はコウモリ。コウモリはエコロケーションサウンドと呼ばれる超音波パルスを発して、蛾をはじめ、様々な夜行性昆虫を補食している。これに対して、ヤガもその超音波を感知し、急旋回や急降下等の回避行動をとることが知られていた。
超音波でヤガの侵入阻止
2009年7月7日、農業・食品産業技術総合研究機構は、果樹園で薬剤防除が困難なヤガ類の侵入を防ぐ、超音波を使った防除技術の開発に成功したと発表した。ヤガ類は、モモなどの果実の表面から果汁を吸うことで傷(吸汁痕)をつけ、果実の品質を劣化させ問題になっていた。
ヤガ類は果樹園に夜間飛来する。昼間の果樹園にはいないため、一般的な薬剤防除は困難。「防虫網」や「防蛾灯」が既存の防除手段として普及しており、防除効果も認められているが、「防虫網」は設置や台風等の強風への対策などに大きな労力がかかること、「防蛾灯」は設置コストや陰などによる防除効果の不安定さなどが欠点であると指摘されていた。
天敵を利用した防除法
近年、多くの害虫防除において、天敵生物の利用が広がっている。ヤガ類の代表的な天敵はコウモリ。コウモリはエコロケーションサウンドと呼ばれる超音波パルスを発して、蛾をはじめ、様々な夜行性昆虫を補食する。これに対して、ヤガ類もその超音波を感知する能力を持ち、これを感知すると、急旋回や急降下等の回避行動をとる。
今回、コウモリのエコロケーションサウンドに似た超音波(周波数40kHzの断続的パルス音波)を発生する防除装置を開発。徳島県立農林水産総合技術支援センターのモモ園に設置したところ、ヤガ類の飛来数は約1/20まで減少し、被害痕数は非設置区の約1/10以下、被害果率は概ね30%以下となり、実用的な防除効果が確認された。 現在、実用化に向けた装置の改良と現地試験を実施している。
2種類のウイルスでヤガ防除
ヤガ類の防除には他の方法もある。2009年6月20日、中央農研が、2種類のウイルスで防除する方法の開発を発表し、実用化を目指している。
チョウやガ類にだけ感染する核多角体病ウイルス(NPV)に、顆粒病ウイルス(GV)の一部を加えると、効果が増強することを突き止めた。2008年度の野外試験でも効果が実証され、微生物防除資材として農薬登録を目指す考えだ。
NPVとGVは自然界に存在するバキュロウイルスで、ヤガ類など特定の昆虫に寄生する病原。環境に影響が少なく安全性が高いため、化学合成農薬に代わる微生物殺虫剤として、国内ではハマキムシやハスモンヨトウ防除のウイルス製剤が市販されている。
ただ、作物や害虫の適用範囲が狭いため、さまざまな作物を加害するヨトウガやオオタバコガ、ウワバ類に使える薬剤の開発が急務だった。
参考HP 農業食品産業技術総合研究機構「超音波でモモ果実等を吸汁するヤガ類の侵入を阻止」・
日本農業新聞「ウイルスでヤガ類防除 2種類合わせ効果確実」・ Wikipedia「ヤガ」
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