ダムとは何か?
ダムとは、治水・利水・治山・砂防・廃棄物処分などを目的として、川や谷を横断もしくは窪地を包囲するなどして作られる土木構造物の事をいう。一般にコンクリートや土砂、岩石などによって築く人工物を指す。
ダムは地上にあるものばかりでなく、地下水脈をせき止める地下ダムというものもある。森林の保水力を指す緑のダムという言葉もある。
ダムの定義は各国により異なるが、1928年に創設され現在88ヶ国が加盟する国際大ダム会議における定義では堤高が5.0メートル以上かつ貯水容量が300万立方メートル以上の堰堤を「ダム」として定めている。そのうち、高さが15メートル以上のものをハイダム、それに満たないものをローダムという。
日本の河川法でいうダムとはハイダムを指し、これ以外の堰堤(えんてい)についてはたとえ「ダム」という名称が付いたとしても堰(せき)として扱われる。
ダムの目的
ダムの目的は多岐にわたるが、主なものとしては治水(洪水調節・不特定利水)と利水(灌漑用水・上水道用水・工業用水・消流雪用水の供給・水力発電・レクリエーション等)がある。
治水を目的とするダムを治水ダムといい、利水を目的とするダムを利水ダムという。複数の利水目的を持つ利水ダムや、治水・利水両方を目的とするダムを多目的ダムという。治山を目的とする治山ダムや砂防を目的とする砂防ダム、鉱山で鉱滓貯留を目的とする鉱滓ダム、廃棄物埋設処分を目的とするダム等は河川法のダムとは別扱いとなる。
ダムの種類
1.重力ダム・中空重力ダム: 「重力ダム」は、ダム自体の重みで各種の外力に耐えるダムで、滑り出すことや倒れることに対して安全性が高いため、地震の多い日本に適し、日本のダムの約90%はこの形式です。
「中空重力ダム」は内部が空洞になっているもので、重力ダムに比べてコンクリートを使う量を減らすことはできますが、強度を保つため、複雑な構造となっています。
2.アーチダム: 水圧を両岸の岩盤で支えるように、アーチ型にダムを築いたものです。ダムの厚さが薄くて済むため、コンクリートなどの材料が少なくて済みます。しかし、アーチ作用がダムの両岸の岩盤に加わるので、両岸が狭く、岩盤が非常に丈夫な場所に適しています。
3.ロックフィルダム: 岩石を積み上げ、水漏れを防ぐためにダムの内部または上流面を、水を通さない材料を用いて築いたダムです。ダム自体が非常に大きくなりますが、材料の岩石が近くにある場所には適しています。
ダムの諸問題
現在は地球温暖化問題が深刻化し、世界各地で激しい洪水や深刻なかんばつが問題になっており、既存のダム運用に対する見直しも要求されている。一般に二酸化炭素を排出しないとして水力発電は注目されてはいるが、ダムの規模や設置している地域の気候などによっては貯水池より大量にメタンガスが発生するなど悪影響等も世界ダム委員会(WCD)の最終報告書等をはじめとして多方面より指摘されており、慎重な対応が求められている。
環境問題としては堆砂の問題と、河川の最大流量をコントロールすることで下流へ砂がフラッシュ(流下)されないという問題がある。また、ダム設置による河川の流量や水温への影響によって、河川生態系を攪乱するという指摘もある。
三門峡ダムでは黄土高原から流出する黄砂が貯水池に堆積、完成から二年で貯水池が埋没してダム機能が麻痺する事態が発生。さらにアスワン・ハイ・ダムでは下流への土砂流下減少によってナイル・デルタ縮小という問題が発生している。
またメコン川上流に現在建設されている小湾ダムでは、国際河川であるメコン川の環境保全を巡ってダムを建設する中国と下流諸国の意見が食い違うなど、国際問題への発展を内在するダムもある。
堆砂については従来の浚渫(しゅんせつ)主体から排砂バイパストンネルによる抜本的対策が試行されているほか、流砂連続性を確保するための人工洪水試験がグレンキャニオンダム(アメリカ)やスイスの発電用ダム、日本の国土交通省直轄ダムの一部などで実施されている。ただし現在は試行段階であるため、海岸侵食などを有効に防止するまでには至っていない。
さらにダムによって文化財が水没するという問題も発生、アスワン・ハイ・ダムではアブ・シンベル神殿が水没することとなり、ユネスコなどの援助・指導によって移転されている。また三峡ダムでは三国志で有名な劉備終焉の地・白帝城が半分以上水没するなどの問題が起こった。そして、水没住民に対する補償や対策の法整備がされていない途上国も多数あり、日本のODAや世界銀行などの、国際資本の進退が注目されている。
「21世紀は水戦争の時代」と呼ばれる中、水資源開発とその保全は油田開発に匹敵する重要課題であると指摘する専門家も多い。実際問題として国連は水質汚染と共に水不足を水の危機として警告を発しており、複数の国家間で紛争が発生している。日本を含め、ダムを始めとする河川開発と環境保護の整合性をいかに取るかが大きな問題であり、ダム事業は新たなる岐路に立っている。
参考HP Wikipedia「ダム」・中部電力「ダムの種類」
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