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 180度の大転換
 「コレステロール値と中性脂肪が高い方が長生きする!」これまでの医療分野の常識を覆すような研究結果を日本脂質栄養学会がまとめた。コレステロールを低下させる医療や食事による生活習慣病予防対策の見直しが必要とする。

 コレステロールなどについては、これまでの数々の試験によって「血清コレステロール値が高いと心疾患(虚血性)が増える」「コレステロール値を下げると動脈硬化性疾患(心臓病、脳卒中)が予防できる」などの結果が示され、それらは医学界の常識として定着している。多くの研究者にとっては驚くべき主張といえる。

 東京都内で開かれたセミナーで、浜崎智仁・富山大和漢医薬学総合研究所教授は国内外の臨床研究や疫学調査を基に「悪玉と呼ばれるLDLコレステロールは低下させなくてもよい」と報告した。LDLコレステロールが高い方が死亡率は下がる、という。

  脳卒中・動脈硬化に影響なし?
 大櫛陽一・東海大医学部教授は「遺伝病である家族性高脂血症以外の人では、血中の中性脂肪の量は、食事と生体のエネルギー消費に合わせ適切に調整されている」と説明。日本人では高脂血症とされている人の方が脳卒中のリスクが低く、脳卒中になっても軽症−として「家族性高脂血症などを除き、中性脂肪を下げる必要はない」と話す。

 コレステロール低下薬は科学的根拠がある薬として受け入れられているが、数々の大規模臨床試験の主任研究員を務めた仏グルノーブル第一大医学部のミッシェル・ド・ロルジュリル心臓栄養部長は「最近の臨床試験ではその有効性が認められなかった」と説明する。コレステロール値が高いことが心臓病の主因で、下げれば心臓病の罹患率と死亡率を下げられるという理論は見直すべきだという。

 奥山治美・金城学院大脂質栄養オープンリサーチセンター長は、動物性脂肪とコレステロール摂取量を減らし高リノール酸油を増やすと血中の総コレステロール値が低下し、動脈硬化を予防できる−という説を批判。「リノール酸の取りすぎが多くの病気を増やす。動物性脂肪は安全性が高い」として、健康によい油脂の選び方の方向転換を求めている。(asahi.com 2009年10月27日)

 行き過ぎはよくない
 健康生活にはよくないとされてきた「コレステロールと中性脂肪」。あまりにもこれまでの常識と違う発表なので驚いた。だが、確かにコレステロールも中性脂肪も体に必要な物質ではある。

 私自身も中性脂肪が多いが、脂肪分の少ない食事をすると、かえって体に力が入らないこともあった。極端にコレステロールや中性脂肪を減らすのも、体には悪いようだ。やはりこれまでどおり、食べ過ぎには注意し、適度な運動を心がけたい。

 今回は、コレステロールと中性脂肪とは何か?これまでの常識とは何か?を再確認する。

 コレステロールと中性脂肪
 コレステロールと中性脂肪はどちらも健康に関係する脂質である。脂質は単純脂質・複合脂質・誘導脂質の3種類に分けられる。

 単純脂質 (Simple Lipid)は、アルコールと脂肪酸のエステルをいう。アルコール部分には直鎖アルコールの他グリセリン、ステロールなどが、脂肪酸には多様な飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が使われる。中性脂肪はこのなかまである。脂肪酸とグリセリンが結びついて中性を示す事から「中性脂肪」と呼ばれるもっとも、ポピュラーな脂質である。

 複合脂質 (Complex lipid)は、分子中にリン酸や糖を含む脂質で、一般にスフィンゴシンまたはグリセリンが骨格となる。リン脂質、スフィンゴリン脂質、グリセロリン脂質、糖脂質、スフィンゴ糖脂質、グリセロ糖脂質、リポタンパク質、スルホ脂質などがある。

 誘導脂質 (Derived lipid)とは、単純脂質や複合脂質から、加水分解によって誘導される化合物のことをいう。例えば脂肪酸がそうである。テルペノイド、ステロイド、カロテノイドなどがあり、コレステロールはこのなかまに入る。

 コレステロール(cholesterol)
 コレステロール分子自体は、動物細胞にとっては生体膜の構成物質であったり、さまざまな生命現象に関わる重要な化合物である。よって生体において、広く分布しており、主要な生体分子といえる。

 コレステロールは動物の生理過程において不可欠の物質であるが、血液中ではリポ蛋白と複合体を形成し体内を循環する。これが、過剰となることで高脂血症を引き起こし、血液がドロドロになり、血管障害を中心とする病気の因子となることが知られてきた。

 人間の体内にあるコレステロールのうち、およそ3割前後は肝臓で合成されている。コレステロールを多く含む食事の摂取が増えても、生体には恒常性を保つ調節機構があり、健康な人間であれば体内におけるコレステロール量は一定に保たれている。

 しかし、生合成の出発点となるスクアレンはアセチルCoAから合成されるため、食事からコレステロールを取らなかったとしても脂肪や炭水化物を摂取すれば体内でコレステロールに転換されるしくみがある。

 従来はリノール酸はコレステロールを下げる働きがあるとされていたが、長期的には TC(総コレステロール)値に変化がないとの結果が出ている。
 
 中性脂肪(neutral fat)
 中性脂肪は通常はエネルギーとして使われる。食品から脂肪として吸収されたもの以外に、炭水化物を摂りすぎると体内で中性脂肪に変えられる。これが体内に蓄積され過ぎると問題になる。最近はメタボリックシンドロームの指標にもなっていて、重要視されている。

 中性脂肪が多い状態が、肥満である。肥満による病気には糖尿病があるが、他にも様々な病気の原因となっている。中性脂肪は、善玉コレステロールを減らし悪玉コレステロールを増やすので、高脂血症をひきおこし、血液がドロドロになる。ドロドロ血が身体にもたらすものは、動脈硬化である。

  ドロドロの血液が血管の内壁にこびりつき、血液循環を妨げ、血栓ができやすくなっていく。これらの変化によって、血管の壁が腫れあがり、血管が細く硬くなる。すると、血液が全身に渡りにくくなり、血栓が詰まりやすくなる。その結果、血圧が高くなる。このとき、起きる致命的な病気は、脳梗塞や心筋梗塞である。


参考HP Wikipedeia「コレステロール」「中性脂肪」 

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