
酸化チタンの触媒効果
酸化チタンとは何だろう?酸化チタンは、白色の絵の具や殺菌効果などを利用した化粧品や食品添加物、日焼けどめなど幅広い用途を持つ物質である。有名なのは「光触媒」とも言われるように、化学反応を促進する「触媒」の機能を持つことが知られている。例えば東京ドームの屋根などに使われていて、有機物などの汚れは、光があれば分解するはたらきがある。
ただし、化学工業で広く用いることができるほど触媒能力は高くなかった。東京工業大学応用セラミックス研究所の北野政明・特任助教、原亨和・教授らは酸化チタンを筒の内径が約5ナノ(10億分の1)メートルサイズのナノチューブ状にすることで、触媒機能を大幅に向上できることを発見した。
さらに重要な特徴は室温でも触媒として十分な機能を持つことで、燃料や樹脂,医薬品,洗剤などさまざまな化学品を合成する際に用いられるフリーデルクラフツアルキル化反応で実際に確かめたところ、従来の触媒は100℃の熱を加えなければならないのに対し、室温で働き、効率も3倍以上高まることが分かった。
酸化チタンは地球上に豊富にあり、ナノチューブ状の酸化チタンはアルカリ水溶液中で加熱するという簡単な方法で合成できる。より高性能の酸化チタン・ナノチューブ触媒を開発することで、化学品生産に要するエネルギー使用量と二酸化炭素(CO2)の排出量を3分の1以下に削減できる、と研究者たちは言っている。(サイエンスポータル 2010年5月13日)

常温触媒で省エネ効果を高める
社会を支える化学品は触媒を使って生産されている。触媒を機能させるには熱エネルギーが必要であり、より少ないエネルギーで高速で働く触媒を開発すれば,エネルギー消費とCO2排出を削減できる。
固体酸触媒は燃料や樹脂、医薬品、洗剤などの化学品の生産に必要不可欠な物質であり、さまざまな固体酸触媒を用いた化学プラントが現代社会に必須の化学品を生産している。化石資源の高騰・枯渇、地球温暖化が深刻化する近未来に向け、一層の省エネルギー、CO2排出削減が必要となる。このため、より高活性な固体酸触媒の創出が社会と産業から求められている。
原教授らはCO2を中心とする温室効果ガスの大量排出産業である化学工業で、少しでもCO2排出削減につながる技術開発に取り組んでいた。特に触媒を使った化学反応では触媒を機能させるために熱を使うので、室温で優れた機能を発揮する触媒の探索に力を入れていた。各種の候補を検討する中で、もともと光触媒として有名な酸化チタンを取り上げた。
酸化チタンだけでは化学反応の触媒としては十分な性能ではなかったが、これをナノレベルにして、しかも丸めてチューブにすれば、別の機能が生まれると考えた。試してみると、室温で実用に十分な触媒機能があることを発見した。
チタニアナノチューブとは何か?
この地球上に豊富に存在し、入手が容易で安価なチタニアをアルカリ水溶液中で加熱することにより、ナノチューブ状のチタン酸化物(チタニア)が合成できる。チタニアナノチューブはナノサイズのシート状のチタニア(酸化チタン)を筒状に丸めた形状であり、筒の内径は約5ナノメートルである。
チタニアナノチューブは簡便な方法で合成できるため低コストで大量合成が可能であり、資源量が2番目に多い遷移金属であるチタンから構成されているため、実用的観点からも極めて有望である。
この固体触媒は分離・回収・再利用にエネルギーを必要とせずに既存のどの固体酸触媒よりも高い酸触媒性能を発揮でき、さらに室温で高効率に反応を進行させることができるためCO2排出削減に貢献できまる。
今後、チタニアナノチューブが高い酸触媒性能を有するメカニズムを明らかにすることにより、さらに高性能なチタニアナノチューブの開発を目指し、環境調和型の触媒プロセスを構築する。(東京工業大学プレスリリース 2010/05/12))
酸化チタンとは何か?
酸化チタンとは主に、二酸化チタンのことで、組成式 TiO2、式量 79.9 の無機化合物。チタンの酸化物。
二酸化チタンは、フッ化水素酸,熱濃硫酸および溶融アルカリ塩に溶解するが、それ以外の酸,アルカリ,水および有機溶剤には溶解しない。
白色の塗料、絵具、釉薬、化合繊用途などの顔料として使われる。これはチタン白(チタンはく)、チタニウムホワイトと呼ばれる。また光触媒など機能材料として使われている。絵具として他の色と混ぜて使った場合、日光に長期間さらされると光触媒の作用によって脱色したり、絵具が割れてしまったりする場合がある。
人体への影響が小さいと考えられているため、食品や化粧品の着色料(食品添加物)として利用されている。微粉末は紫外線の散乱剤として日焼け止め、サンスクリーン剤にも使われる。
1972年、東京大学の本多健一と藤嶋昭は、「酸化チタンを用いた水の光分解」に関する論文をネイチャー誌に発表した。これは、粉末状の酸化チタンを水中に入れ、光を当てるとそれだけで、水素と酸素に分解され、それぞれの気泡が発生するというもの。これが世界で初めて発見された「光触媒」であった。(Wikipedia)
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