「アオコ」からバイオ燃料
湖や池の水面を埋めるをアオコから、簡単に安くバイオ燃料を生み出す新技術の開発に、電力中央研究所エネルギー技術研究所(神奈川県横須賀市)が成功した。従来の方法より約70倍も生産性が高く、製造時の環境影響も少ないという。東大阪市で開かれる日本化学会で3月29日発表し、水の浄化と地球温暖化対策の一石二鳥になる「緑の原油」として数年後の実用化を目指す。
同研究所の神田英輝主任研究員は、スプレーの噴射ガスに使われる無害な溶剤ジメチルエーテル(DME)を20度で5気圧に加圧して液化し、アオコと混ぜ合わせる方法を考案。溶剤の性質からアオコに自然に染み込み、乾燥・粉砕して細胞組織を壊さなくても、油分を溶かし出せることを確認した。溶剤は減圧すれば蒸発するため分離・回収も簡単で、製造過程のエネルギー使用も激減するという。
京都市内の池のアオコを使った実験では、従来の方法ではアオコの乾燥重量の0.6%相当しか油分を抽出できなかったのに対し、新技術では約70倍の40%相当が抽出できた。
神田研究員は「6000種類以上の化学物質を調べて唯一目的にかなうのがジメチルエーテルだった。今後、大規模実験を行い、実用化を急ぎたい」と話す。(毎日新聞 2010年3月22日)
アオコとは何か?
アオコ(青粉)とは、富栄養化が進んだ湖沼等において微細藻類(主に浮遊性藍藻)が大発生し水面を覆い尽くすほどになった状態、およびその藻類を指す。粒子状の藻体がただよって水面に青緑色の粉をまいたように見えることから、「青粉(あおこ)」と呼ばれるようになったと考えられる。水の華(微小な藻類が高密度に発生し水面付近が変色する現象)の一形態で、藍藻だけではなく、緑藻やミドリムシによるものもアオコと呼ぶ場合もある。
湖沼や環境、季節によって、観察される種は変化する。以下はよく見られる属名。藍藻:ミクロキスティス属 Microcystis、アナベナ属 Anabaena、アナベノプシス属 Anabaenopsis 緑藻:クロレラ属 Chlorella、イカダモ属 Scenedesmus、クラミドモナス属 Chlamydomonas
アオコは人間社会においては、湖沼自体の利用障害となる(例えば鯉をはじめとする養魚、淡水漁業、近隣の生活環境、親水、観光産業など)ほか、取水源として利用する水道水の異臭・異味の原因となったり、さらには人や家畜への健康被害も懸念される。 また、湖沼周辺の生態系など自然環境を損なうおそれも高い。
環境汚染物質「アオコ」
アオコが湖面を覆うと水草など他の水生植物は、光合成ができず死滅する。そのため魚類も酸欠により死滅することがある。
また、アオコの死骸が湖底で腐敗し海底に沈殿し、バクテリアによって分解される過程で海中の酸素が大量に消費される。その結果、溶存酸素の極端に少ない貧酸素水塊が形成される。その中では硫化水素などの還元性物質が発生する。
この硫化水素を大量に含んだ水塊が上昇すると、表層付近の酸素によって硫化水素が酸化され、硫黄などや硫黄酸化物の微粒子が生成され青く表面を染める。これが環境悪化現象の一つ青潮である。
またアオコの原因の藍藻には、非リボソームペプチドであるミクロシスチン(Microcystin)などの毒素を生産するものがあり、赤潮と同様に魚類のエラを閉塞させ窒息させるほかにも、毒素による斃死を招くことがある。
また、アメリカ、オーストラリアなど放牧が盛んな国では、飲用した家畜の斃死被害が多発しているほか、ヒトに対しても、1996年ブラジルで、肝不全による死者50名を出す事件が報告されているほか、発癌性(肝臓ガン)が指摘されている。
有用微生物「アオコ」
こうした従来、問題とされてきたアオコからエネルギーを取り出せるのは素晴らしいアイデアである。しかし、数多くの藻類の集まりから油分を取り出すのは大変である。
米石油会社エクソンモービルも、昨年7月に藻類バイオ燃料の支援に乗り出した。同社は、地球温暖化懸念をめぐり環境保護主義者から批判の矢面に立たされることも多いが、同分野に6億ドル投資している。エクソンは、クレイグ・ベンター氏が創設した米シンセティック・ジェノミクスと共同で同事業に取り組んでおり、ベンター氏のチームは、油の抽出を容易にするため藻類に遺伝子操作を施そうとしている。
日本では筑波大学が、世界最大の自動車メーカー、トヨタ自動車傘下のトヨタ中央研究所や出光興産などとともに、6月内にも「藻類産業創生コンソーシアム」を立ち上げる計画だ。
藻類は多くが光合成単細胞生物で、油を作り出す効率が大豆などの農作物と比べて30倍も高い。バイオテクノロジー産業協会(BIO)の政策ディレクター、マット・カー氏は、こうした利点に加えて藻類から抽出した油のバイオ燃料への精製には手間がかからないと指摘する。また、育てる上で農作物などを栽培する土地を手当てする必要がないことも大きなプラス要素だ。 (ブルームバーグ 2010/06/04 )
こうした企業の多くは藻類の中から、エネルギー効率のよい、優秀な品種を培養して油分を回収する計画だ。自然発生するアオコから、エネルギーを取り出す方法を実用化するには、さまざまな藻を用いた基礎実験や、「緑の原油」をDME内で濃縮する技術の開発が必要になる。
参考HP Wikipedia「バイオ燃料」「アオコ」「青潮」・産業技術開発機構プレスリリース「アオコから“緑の原油”抽出」
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