最も質量の大きい天体
太陽の300倍ほどの観測史上最も重い星が見つかった。欧州南天天文台(ESO)が発表した。これまでは太陽の150倍ほどまでの星しか見つかっていなかったため、それより重い星は存在できないと考えられていた。英国の研究者らは「星の誕生から死までの定説が覆されるかもしれない」としている。
南米チリにあるESOの望遠鏡VLTで、天の川銀河の隣にある大マゼラン雲のタランチュラ星雲を観測していて見つかった。地球からの距離が16万5千光年の若い星団内に、太陽の数百万倍の明るさを放つ星が複数あった。
星は重いほど水素を激しく反応させて光を放つため、明るく輝く。明るさや色などから質量を見積もると、最大の星は太陽の約265倍あった。年齢は約100万歳で、生まれた時は320倍ほどあったらしい。
この星はR136a1と名付けられた。もし太陽の位置にあったとすると、紫外線が強すぎ、地球の生命は全滅してしまうという。
大きさは太陽の数十倍。オリオン座のベテルギウスのような赤色超巨星は1千倍ほどの大きさがあるものの、重さは数十倍しかなく、密度は今回の方が圧倒的に高い。
星は活動が激しいほど水素を早く使い切るため、寿命は短い。太陽は100億年ほどの寿命があり、現在は約46億歳だが、この星はすでに「中年」で、あと数百万年で最後を迎えそうだ。
重さが太陽の8倍以上ある星は、最後に超新星爆発を起こしてブラックホールなどになる。しかし、R136a1は最後の大爆発も激しすぎて、何も残らない可能性があるという。(asahi.com 2010年7月23日)
これまでの常識を変える発見
長年の定説では、恒星は一定の質量を超えると不安定になり存在できなくなると考えられていたが、この巨大恒星の発見で恒星物理学の法則が書き換えられるかもしれない。
イギリスにあるシェフィールド大学の天文学者で研究の共著者リチャード・パーカー氏は次のように話す。「本当に驚きだ。これまでの天文学界の常識では、恒星の質量の上限は太陽の150倍前後までとされていた。だが今回の発見により、星団や銀河での恒星の誕生と死についての定説が一新されるかもしれない」。
パーカー氏の研究チームは、チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTが撮影した画像の中からこの巨大恒星を発見した。天の川銀河の伴銀河の1つである大マゼラン雲で、高温の若い大質量星の密集する星団の内部にその姿が確認された。
「ガスが集まってこれだけの巨大恒星を形成する場所は宇宙でも非常に限られているので、この巨大恒星の大きさは恒星の成長の限界といえるだろう」とパーカー氏は推測する。
「今回の発見はまた、“対不安定型超新星爆発”と呼ばれる大爆発現象の新たな証拠となるかもしれない」と同氏は付け加える。
一般に、最大級の大質量星が大爆発を起こして生命を終える際には、恒星の外側の層がまき散らされ、高密度の核が中性子星やブラックホールとして残ると考えられている。
「しかし、今回発見された巨大恒星は、そのあまりの大きさから大爆発で自分自身を完全に吹き飛ばしてしまい、残骸を一切残さないかもしれない(それが対不安定型超新星爆発の証拠となる)。この星を発見できたのは幸運だ」とパーカー氏は語る。
この研究は、「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」誌2010年7月号に掲載されている。(National Geographic News July 22, 2010)
超巨星とは何か?
超巨星は、太陽よりはるかに大きく明るい恒星のこと。明るさは青色超巨星の場合は太陽の1万倍(全エネルギー放射で太陽の10万倍)以上、赤色超巨星の場合は太陽の数千倍(同3万倍)以上ある。また、直径は青色超巨星で太陽の数十倍以上、赤色超巨星では太陽の数百倍以上はある。現在確認されている最も巨大な恒星は、おおいぬ座VY星で太陽の1,950倍(太陽系に置き換えると土星軌道を越える)である。体積にするとその3乗倍となるが、質量は、高々太陽の数十倍(ベテルギウスで約20倍)程度である。
青色巨星
青色巨星(せいしょくきょせい)とは高温で大質量の星のこと。直径はせいぜい太陽の5〜10倍程度だが、明るさは数千〜数万倍とかなり明るい。しかし、燃料を激しく燃やしている為、寿命は短く、数百万〜数千万年程度。赤色超巨星(質量によってはウォルフ・ライエ星))を経て、最期には超新星となり、中性子星やブラックホールを残すと考えられている。
おとめ座のスピカ、ケンタウルス座のハダル、みなみじゅうじ座のアクルックス、ミモザ等がある。更に明るいものは青色超巨星と呼ばれ、直径は太陽の数十倍、明るさも2万倍以上あるものが多く、中にははくちょうα型の脈動変光星のものもある(高輝度青色変光星、LBV)。
赤色巨星
赤色巨星(せきしょくきょせい)とは、肉眼で観察すると赤く見え大きいことから、「赤色」巨星と呼ばれる。赤色巨星は年齢の高い恒星で、寿命が近づいている段階であるといえる。
赤色巨星の外層は星の中心から離れているために重力による束縛が弱く、徐々にガスが星から流出していく。そのため恒星は外層を失い中心核が露出する。ここで核融合反応が終了したものが白色矮星となる。流出したガスは惑星状星雲として観測される。
くじら座のミラやおうし座のアルデバラン、はくちょう座W星、うしかい座のアルクトゥルス等が赤色巨星の代表的な例としてあげられる。また、太陽もあと約50億年もすればこの赤色巨星と化し、白色矮星へと変化していくだろうとされている。
赤色巨星のうち、特に光度や直径が大きいものを赤色超巨星と呼ぶ。普通の赤色巨星は太陽の1-8倍程度の質量しかないのに対し、赤色超巨星は太陽の10倍以上の質量を持つ。赤色超巨星の代表的な例としては、オリオン座のベテルギウスやさそり座のアンタレス、ケフェウス座のガーネット・スター等があげられる。
最も大きな恒星は?
今回発見された、大マゼラン雲のR136a1という天体は質量が300倍という最も重い恒星だった。では、これまでに発見された恒星の中で、最も大きいものはどのくらいあるのだろう?
正解は、太陽の1,800倍 - 2,100倍のおおいぬ座VY星である。おおいぬ座VY星(VY Canis Majoris)は、おおいぬ座にある赤色超巨星であり、2010年現在確認された中で最も大きい恒星の最有力候補である(離れた星の大きさを直接測ることは物理的に難しいため、最も大きな星の特定については天文学者のあいだで議論し続けられている)。この星の直径は推定25億 - 30億kmで、太陽の1,800倍 - 2,100倍、体積にして太陽の60億 - 90億倍。太陽系に最も近い赤色超巨星であるオリオン座α星(ベテルギウス)の約2 - 5倍、さそり座α星(アンタレス)の約2.5 - 3.5倍もあり、太陽系に置き換えると土星の軌道までに及ぶ。しかし大きさの割に質量自体は太陽の30 - 40倍と、イータ・カリーナやSN 2006gyに比べ約3分の1 - 5分の1程度しかない。
この恒星を光が1周するには8時間以上かかる(地球を1周するのにかかる時間は1⁄7.5秒)。この恒星を乗り物で1周するには、アポロ宇宙船(秒速10km)で約29年、ジェット旅客機(時速800km)で約1,305年、新幹線500系(時速300km)で約3,492年かかる。この恒星を徒歩(時速6km)で1周するには、全くの不眠不休で歩いたとしても、約17万4600年もかかる(地球を1周するのにかかる時間は約9ヶ月)。おおいぬ座VY星はLC型の脈動変光星であり、6.5等から9.6等の間を不規則に変光する。
この星は中心の水素が殆ど枯渇する一方、外層は元のサイズの100倍に巨大化し、収縮した重力から開放されたガスが急速に流出して質量を失いつつあり、既にその質量の約半分を流出していると見られる。21世紀初頭のハッブル宇宙望遠鏡による観測では、ガスが周囲約1光年に渡って取り巻いており、一番外側のものは約1千年前に、最も新しいものは約50年前に流出したとみられる。
その質量から、最終的には極超新星もしくは超新星を起こしてブラックホールになるものと予想されており、またその時期は西暦3200年頃より前だという説がある。(Wikipedia)
参考HP Wikipedia「恒星」「超巨星」「赤色巨星」「青色巨星」「おおいぬ座VY星」
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